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秋桜  作者: 七地
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勝手な主張 (3)

寛貴が私の背中から腕を回して抱き寄せている。正面には寛貴から引き離そうと腕を掴んでいる葵。


私の頭の上で睨み合う二人の大男。



いい加減にして!怒ってるのは私なの!

私は空いている方の手を使って口を覆っている大きな手を外した。


「ねぇ、なに勝手な事を言いあってるの?邪魔しないでよ。私はあの男と話してるの!」


「バカだな、ああいう男が話してわかると思うのか?」


葵はそう言うと、後ろを振り返って圭吾達を見た。


「まだ言い足りないことがあるのか?」


寛貴が私の顔を覗き込みながら聞いてきて、頷くと


「もう十分言いたいこと言ったろ?」


葵が呆れたように言う。


「まだ謝らせてない」


「あのバカが相手じゃ無理だろ」


寛貴が言い、私は首を横に振った。


「やだ。ちゃんと謝って」


「おまえは駄々っ子か?いつまでも下らない奴らの相手してられるかよ」


葵はそう言うと、笠原さんを見た。


「あんたさぁ」


急に葵に呼びかけられた笠原さんは、驚いて返事をしていた。


「はい」


ちょっと、笠原さんを怯えさせてどうするのよ?


「葵!」


「お前は黙ってろ。あんた、あの男と付き合ってたって本当か?」


笠原さんが頷き、葵は口元に笑みを浮かべた。

その笑みはとても冷たい。今の葵は青龍の宮野葵。


いつもの意地悪だけど優しい葵とは別人だ。

冷たい笑みを圭吾に向けると


「もっと男を見る目を養った方がいいんじゃねぇか?もっとマシな男選べよ」


「はいっ」


笠原さんは怯えてしまっているように見える。

ごめんね笠原さん、口が悪い弟で‥悪気はないんだよ。


「笠原、今日は楽しかったか?」


顔だけを笠原さんに向けて寛貴が聞いた。


「‥楽しかったです」


拓弥君は隣で笑いながら笠原さんの頭をポンポン、と撫でていた。


「そうか‥なら学校に来い。お前のクラスにはもう1人仲間がいる。きっと楽しいぞ」


寛貴の言葉に、麗香ちゃんが涙をこぼした


「笠原、返事は?」


「ぅっ‥はい‥」


良かったぁ、学校に来てくれるんだ。


「良かったな、梨桜」


寛貴が言い、葵は笑いながら私の頭を撫でた。


「おまえら、いい加減にしろよ?奴ら放置されて苛立ってるぞ」


愁君が言うと


「梨桜ちゃんも気が済んだよね?」


愁君がニッコリと黒い笑みを浮かべたから頷いた。

本当は謝らせたいけど、愁君を怒らせたくない。今、ここにいる人たちの中で一番怖いのは怒った愁君だから。


「藤島、そっちは?」


葵が寛貴に聞いていた。


「拓弥が行くしかねぇだろ」


私には何の話か分からないけれど、葵は頷いていた。仲が悪いくせに通じているらしい。


「ウチは愁に行かせる。応援は?」


「なめてんのか?この程度でいらねーだろ。お前が必要なら呼べば」


「いらねーよ」


大男達に挟まれている私の手を愁君が引いた。


「愁君!」


「梨桜ちゃん、送って行くよ」


寛貴の腕が解かれて歩き出すと


「梨桜、気を付けて帰れよ」


寛貴が言い、私は頷いた。

葵は何も言わなかったけれど、目が『愁と帰れ』そう言っていた。


「麗香ちゃん、また明日ね!」


「梨桜ちゃん、ありがとう」


麗香ちゃんに手を振ると、拓弥君も手を振ってきたから笑いながら振り返した。

あのバカ男には腹が立つけど、彼女が学校に来る気持ちになったのなら、今日の再会は無駄じゃなかったのかもしれない。





「愁君、怒らないの?」


車の中で愁君は笑った


「怒らないよ。梨桜ちゃんが腹を立てる気持ちはわかったし、やっぱり葵と双子なんだなって思ったよ。素の葵と怒り方が同じだね」


「そうかな?」


今まで意識したことがなかったからわからない。首を捻っていると愁君は私の顔を見ながらクスリと笑った。


「藤島には驚いたよ‥あそこで宣言するとはね」


「相手を牽制したかっただけで深い意味はないんだよ。それか、何かを言い間違ったとか…」


そういうことにしておこう?これ以上ややこしくなるようなことは避けたい。

愁君はチラリと私を見てすぐに視線を窓に向けた


「‥だったらいいけどね。葵も挑発に乗るし」


窓を向いていた顔をこちらに戻し、ピタリと私に視線を合わせて笑った。


「梨桜ちゃん、覚悟してね?青龍と朱雀のトップが宣言したからね。それがどういう意味か分かる?」


『宣言』そんな大層なものじゃないんじゃない?


「葵は負けず嫌いだから、売り言葉に買い言葉でしょう?」


「まぁね、半分は当たってる。でも、ああ言えばウチの人間を梨桜ちゃんの護衛につけていてもおかしく思われない。オレとしても堂々とできるから楽だけどね」


愁君、これ以上チームに迷惑をかけるのは嫌だよ。

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