勝手な主張 (2)
すごまれても怖くなんかない。むしろ逆効果だよ。
余計に腹が立つ。
私は圭吾ににっこりと笑いかけた。
顔は笑って見せたけど、腹が立ちすぎて手が震える。
「表で話そうぜ」
圭吾の隣にいた男が言い、私は頷いた。
「東堂さん、やめて‥私は大丈夫だから」
ごめんね笠原さん、私は大丈夫じゃないんだ。この男、許せない。
拓弥君が「あーあっ」て言いながら苦笑いを浮かべ、寛貴は何も言わずに圭吾達を見ていた。
店の外に出ると圭吾が
「なんなんだよお前」
「笠原さんは裏切り者じゃない。謝って」
「お前に何がわかんだよ」
自分の事ばかりを並べ立てる男。
こんな男、彼女にはもったいない。
「あんたの気持ちなんかわかんないわよ!」
「なっ‥」
「あんたと一緒の学校に行こうと思って頑張った自分の彼女に何てこと言うのよ!あんたこそ、笠原さんの何がわかってるのよ!?そんなにこだわるなら諦めなければ良かったでしょう?自分で勝手に妥協して笠原さんを引きずり落とそうとしないで!」
一気に話したら酸欠になりそうだった。
「この女‥」
私を睨みつける圭吾を真っ直ぐに見た。
「笠原さんは裏切り者じゃない。自分がくじけただけでしょう?八つ当たりするのもいい加減にして!」
呼吸を整えるために深呼吸をして周りを見ると
あれ?
北陵高校の人数増えてる?
「あんた名前は?」
圭吾の隣にいた男が聞いた。
私を見て口角を上げて笑っている。何が楽しいの?私は楽しくなんかないよ
「東堂」
「へぇ‥あんたか、例の」
例の?
「この生意気な女、殴っていいか?」
圭吾が言い、また私は腹が立った
「どこまで根性腐ってんのよ!?」
「その生意気な口塞いでやるよ」
絶対、黙らないんだから!
「塞げるものなら塞いでみなさいよ!早く取り消しなさいよ!」
“謝れ!”そう言おうとしたら、私の口が後ろから伸びた手に覆われた。
「梨桜、もういいだろ」
私の口を塞いでいるのは寛貴だった。
「おい女、朱雀のメンバーだからって、でかい口叩いてんじゃねぇぞ?総長と副総長だけでこの人数がどうにかなると思ってんのか?」
何で邪魔するのよ!
私が寛貴から逃げようともがくと、彼は後ろから私を抱き寄せる腕に力を込めた。
「こいつは朱雀のメンバーじゃねぇよ」
拓弥君が楽しそうに言った
「オレ‥自分のモノに手ぇ出されるの嫌いなんだよな。何かされたらキレるかもしれない」
寛貴が信じられない言葉を発した。
自分のモノって、なに?何かを言い間違ったの?
「え~、寛貴キレんの?やっかいだからやめて。悠いないから一人でお前止めるの面倒」
寛貴と私を見ながら笑う拓弥君は本当に楽しそうだ。
「藤島、その手を離せ」
不機嫌そうな声が響いてそちらを見ると葵と愁君がいた。
「青龍」
「どうしてここに‥」
圭吾達は動揺しているように見えた。ライバルチームのトップがここに現れるのが不思議なのだろう。
どうして?その答えはかんたんだよ。
過保護な葵が“必要ない”って言ったのに私に見張りをつけていたから。それ以外に葵がここにいる理由なんかない。
葵は圭吾達には見向きもせずにこちらを睨んでいる。
「オレのに手ぇ出すな」
ちょっと、オレのモノ発言止めてよね。
私がむっとしながら葵を見ると
「梨桜ちゃん、怒りたい気持ちはわかるけど、ほどほどにね?女の子なんだから」
愁君は笑いながら私を窘めた。
笑っている愁君と対照的に葵は怒っている。
「いつまで触ってんだよ、梨桜から手を離せ」
苛立ちのこもった声で言い、私に手を伸ばした。
「嫌だ。って言ったら?」
まるで、葵を挑発するかのように寛貴は笑いを含みながら言い、私を自分に引き寄せた。