お兄さんの言いつけ(1)
地味子に徹して1週間
徹底した変装の効果か最初に葵や愁君が心配していたような事も起こらずにいた。
今日は学校が午前中で終わる土曜日、迎えの車を待っていたけれど連絡が来ない…
何時も図書室で葵か愁君からの連絡を待っているけれど今日はなかなか連絡がこない
お腹すいた‥・先にウチに帰ってもいいよね
図書室を出て葵の携帯に“お腹すいたから先にかえるね”とメールを送った
靴入れがある校舎を目指して歩いていると、向かいから上級生らしい生徒が数人こちらに向かって歩いてきた。私は思わず上級生も驚いて振り返るくらいの地味子だから下を向いて通り過ぎた。かえって目立っているような気がするのは気のせいだろうか?
手に持っていた携帯が震えた。電話の着信だったけど上級生とすれ違ってから通話ボタンを押した
「もしも『梨桜!!勝手に帰るな!』
耳がキーンと痛くなった。
『梨桜!聞いてるのか?梨桜!』
思わず後ろを振り返るとすれ違った上級生が振り返ってこちらを見ていた。聞こえたんだ…
「聞いてる…まだ学校にいるよ?1人で帰ってもいいでしょ」
歩くスピードを速めた
『今愁が迎えに行ったからいつもの場所で待ってろ!』
「わかった。じゃあね」
電話を切るとすぐに愁君から電話がかかってきた
「もしもし…梨桜です」
『梨桜ちゃん?ごめんね』
申し訳なさそうに言った。愁君が気を使う事じゃないのに‥かえってこちらが申し訳ないよ?
「ううん、こちらこそごめんなさい。だよ?ごめんねバカ弟で、愁君、仲良くしてくれてありがとう」
くっくっと電話の向こうで笑っていた
『梨桜ちゃん、学校の前につくから早くおいで』
「うん」
校舎を出て髪を解いて歩くと校門から少し離れたところに車が停まっていた。
前のようなBMWではなく普通の乗用車だった
「梨桜ちゃん」
窓が少し開き愁君の顔が見えて車に乗るとすぐに走り出した
「葵が委員会の仕事が急に入ってさ‥連絡が遅くなったんだ。ごめんね」
私はメガネを外して首を横にふった
「迎えに来てくれてありがとう、愁君」
「おばさんのお墓参りに行きたかったんだよね。これから行こうか」
私と視線を合わせてにっこりとほほ笑む
「うん、ありがとう」
本当は葵と一緒にお墓参りをしたかったが仕方ない。また一緒に来ればいい
お寺の近くに来ると愁君は私にロングパーカーを渡した
「ここのエリアは朱雀の縄張りだからね‥その制服を着てオレと一緒にいるところを見られると面倒な事になるから」
「朱雀?」
それも不良のチームなの?
「梨桜ちゃんの高校に朱雀のトップと幹部がいるんだよ、ウチに青龍のトップと幹部がいるようにね。だから用心に用心を重ねてるんだよ?」
そういうことは先に教えて欲しいよ愁君‥じーっと愁君を見ると、私の言いたいことが分かったのか苦笑いを返してきた。
「この話をしたら梨桜ちゃんが怖がると思って」
「仲悪いの?」
愁君が渡したパーカーに袖を通しながら聞いた。
「ライバルだからね‥ごめんね、怖い思いをさせて。梨桜ちゃん、花を買いたいんだけど向かいのコンビニに朱雀がいるんだ」
申し訳なさそうに言う愁君に笑いかけた。
「大丈夫、1人で買って来るから」
そう言って車のドアを開けると愁君は申し訳なさそうに笑った。
「ごめんね‥梨桜ちゃん」
葵も愁君も心配しすぎだよ。札幌では普通に過ごしていたんだから
花屋に入ってお墓参り用に花束を作ってもらい店の外に出た。
花屋の向かいには愁君の言うとおりにコンビニの駐車場に何台かバイクが止まっていて思わず凝視してしまった。髪の毛がカラフルだ‥ヤンキーっていうかんじ
オレンジとかピンクとかすごいなぁ~
札幌にいた時は女子高だったから見たことなかった。葵のチームにもあまり派手な頭はいなかったような気がする
「梨桜ちゃん!早く」
車の窓が開いて愁君から呼ばれた
「ごめんね愁君」
「ダメだよ。あんな風にじっとみちゃ、危ないよ?」
愁君に諭された。愁君は本当にお兄さんみたい…
「うん‥」