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秋桜  作者: 七地
58/258

目撃  (3)

「梨桜、やめておけ」


寛貴が止めるのを聞かないで、通りの向こうにいる彼らに気付かれないように信号を渡った。


「ねぇ、あの制服ってどこの学校?」


「隣の県の女子高」


私に気づかずに前を歩いている、背の高い綺麗な顔をした男。

その隣にいるのは髪の毛が長くてほっそりとした女の人。


「梨桜」


寛貴に腕を引かれたけれど、彼等が気になって仕方がなかった。


だって、葵が女の子と一緒にいるんだよ?これはしっかり見ておかないとダメでしょ!?

しかも女の子が着ている制服は、私が変装用に愁君から渡された制服と同じだった。


葵と女の子は近くにある公園に入ってしまった。

見失っちゃう!


そう思って走ろうとすると、私のウェストに腕が回された。


「寛貴、離して」


寛貴に引きずられるようにして今来た道を引き返した。


「宮野と女が会ってるのを見てどうするんだよ?」


「興味があるの」


「それだけか?」


「うん」


本当は、どんな女の子なのか知りたい。

葵の外見だけに惹かれて内面を見ない女の子はたくさんいる。そういう人には葵の良さは分からないから、葵の傍にいて欲しくない。


「ショックじゃないのか?」


「なんで?」


「…」


何かを言いたそうな顔をして私を見下ろす寛貴を見上げながら、少し考えた。


葵が『オレの彼女』そう言って恋人を家に連れてきたら少しショックかもしれないな、でもそれは葵も同じかな?『私の彼氏だよ』って紹介したら…


そこまで想像して止めた。

葵の場合は『ショック』とかじゃないね、自分が認めない人だったらきっと恐ろしいことになる。


「梨桜、おまえ」


寛貴の手が緩み、その隙に私は公園に向かって走った。



木の間から葵達を見ると、何やら揉めているように見えた。

葵は私に背中を向けているからどんな表情をしているかわからないけれど、彼女は私の方を向いているからどんな表情をしているのか良く見えた。


「ねぇっ、どうして黙ってるの?」


彼女の悲しそうな声が聞こえた。


「葵君、最近私に会ってくれない」


葵って彼女いたの?

もしかして私、葵の恋の邪魔してる?


葵がどんな表情をしているのか気になって、木の陰から身を乗り出そうとすると“いい加減にしろ”耳元で言われて、また寛貴につかまってしまった。


“葵って、付き合ってる人いたの?”寛貴に聞くと“んなもん、オレが知るか”と冷たい答えが返ってきた。


「葵君、好きなの!」


彼女が葵の首に腕を回して抱きついた。


うわっ!

驚いて声を上げそうになると、寛貴の手で口を塞がれて、その腕の中でもがいた。

彼女は葵に顔を近づけてキスをしようとしたけれど葵に腕を掴まれて離されていた。


修羅場だ‥

私が呆然としていると、寛貴に抱えられたまま公園から連れ出されてしまった。


いつも乗っている車が迎えに来ていて、私と寛貴を乗せると静かに走り出した。


「覗いてるのを見つかったらどうするつもりだ?」


怖い顔をして睨む寛貴に笑って誤魔化した。


「怒られる。かな?」


寛貴は腕を組み、窓から外を見ながら言った。


「宮野にしてみれば珍しい事じゃないだろ。何もしなくても女が付き纏って来る」


「寛貴もそうなの?何もしなくても付き纏われたりするの?」


「ああ」


頷いていた。やっぱり寛貴もカッコイイもんね‥。

でも、あれは付き纏っているような感じはしなかった。

彼女は泣きそうになっていたし、『最近会ってくれない』って言っていた。


「気になるか?」


「う~ん…まあ、それなりに」

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