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秋桜  作者: 七地
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目撃  (2)

眠い。


昨日、一昨日とあまり寝ていなかったから今日は凄く眠い。


今日、最後の時間は会議。

生徒会と各委員会の委員長の会議に同席していたけれど、眠くて欠伸を噛み殺してばかりいる。

午後から授業に出てきた悠君は私の隣で腕を組み、難しい顔をしながら目を閉じている。

いつも見ているから分かるようになった。これは寝ている顔。


私も真似しちゃおうかな。

そう思ってチラリと周りを見ると、寛貴と目が合ってしまった。

居眠りをしようと思ったのを見透かされたような気がして、笑って誤魔化すと、私の隣に視線を向けた寛貴が一瞬眉を顰めた。


肘で悠君を突いたけれど反応は返ってこない。

ちょっと、悠君。起きて?


寛貴の隣に座っていた拓弥君もこちらを見ている。

二人とも容赦なく鋭い視線を悠君に浴びせているけれど彼は一向に動かない。


もしかして、熟睡してる?


「解散」


会議の終わりを告げる寛貴の声がいつもよりも冷たいのは気のせい?

隣は相変わらず動かない。


各委員会の委員長達が生徒会室から出て行き、拓弥君は手に持っていたプリントを丸めた。


あ、悠君が怒られる…


「梨桜、こっちに来てろ」


寛貴に呼ばれて席を移ると、“スパーン!”とイイ音がした。


「いって~!」


「悠、いい度胸じゃねぇか」


会議中、ずっと居眠りをしていた悠君は拓弥君に怒られていた。ヤンキーの説教は怖い。

おかげで私の眠気はすっかり覚めた。



議事録を作る手を止めて、小さく息を吐いた。

紅茶‥飲みたい。ペットボトルじゃなくて、ティーポットで淹れた美味しいお茶。


殺風景なこの生徒会室にティーカップやティーポットがあるわけがない。

あるのは冷蔵庫だけ。


「梨桜ちゃん?難しい顔してどうした?」


拓弥君に言われて、パソコン画面から目を離した。


「お茶、飲みたいなって思ったの」


「お茶?」


寛貴の問いに、うんうん。と頷いた。


「パパから紅茶が送られてきたの。学校でも飲みたいな…」


拓弥君はあまり興味が無さそうに「ふうん」と言い、読んでいた雑誌に目を戻した。


「オレも梨桜ちゃんが淹れてくれた紅茶が飲みたい!」


悠君がニコニコと笑いながら言った。

あんなに拓弥君から怒られたのにまったく堪えていない。彼はなかなかの強者だ。


「紅茶ね~。女の子ってそういうの好きだよね」


「生徒会室にティーセットを持ってきてもいい?」


私が聞くと、拓弥君が頷いた。


「ああ。いいよな?寛貴」


「買いに行くぞ」


寛貴が急に言い出した。

これから買いに行くの?


「これから?」


「ああ。飲みたいんだろ?紅茶」


紅茶は飲みたい。でも、行動が早すぎない?


「オレも行く!」


悠君が言い、拓弥君にまた丸めたプリントで叩かれた。


「おまえは留守番してろ」


「オレも行きたい!」


「うん。一緒に行こう?」


私がそう言うと、寛貴が悠君に今日の会議資料を渡した。

それはさっきまで私がまとめていた議事録だった。


「悠、続きはおまえがやれ。会議中ずっと居眠りしていた罰だ」


「ええ!?」


「ごちゃごちゃ言わないでやれ」


寛貴に言われて、悠君は渋々資料を受け取った。

悠君、頑張ってね。


「行くぞ、梨桜」


行動が早い人だ。

感心していると、荷物を持って生徒会室を出るように急かされた。


「そんなに急がなくても」


「門限、あるんだろ?」


そうでした。門限6時でした。

荷物を持って生徒会室を出ようとすると、拓弥君は「いってらっしゃい」と言い、手をヒラヒラと振った。




どんなカップを買ってもらおうか考えながら校門をくぐり駅に向かおうとした。


「梨桜、どこに行くつもりだ?」


どこ。って決まってるでしょ


「駅」


寛貴に呼び止められて答えると、眉を潜めて私を見た。


「車で行くぞ」


また車?葵といい、寛貴といい、少しは自分の足で歩けばいいのに。


「ねぇ、寛貴」


いい機会だから、言っておこう。

背の高い寛貴を見上げた。


「なんだ」


「前から言おうと思ってたの」


そう言うと私の前に立ち見下ろされた。


「なんだ?」


「高校生らしく歩こうよ。私、歩きたい」


そう言うと、寛貴は意外だ。というような顔をしていた。


「女は送り迎えされたいんだろ?」


「そう?」


それは時と場合によるんじゃない?


「変な女だな」


そう言うと口角を上げて笑った。


「普通だよ」


私と寛貴の横に車が横付けされたけれど、寛貴は私のわがままを聞いてくれて運転手に帰りに迎えに来るように言った。


「ありがと」


「帰りは車だぞ」



電車の中で寛貴は注目されていて、隣に立っている私には鋭い視線が突きさった。

遠巻きに、キャアキャア言いながら寛貴を見ている。


確かにカッコイイから女の子が騒ぐのは分かる。おまけに隣にいるのが地味な私だから彼女達が面白くなく思う気持ちもなんとなくわかる。


「寛貴、ごめんね?居心地悪いよね‥」


隣に立つ寛貴に謝ると、彼は


「次からはおとなしく車に乗れよ?」


その言葉に素直に頷いた。

葵にも『歩きたい』ってわがまま言うの止めよう。






これ、欲しい。

寛貴が連れてきてくれた紅茶の専門店で私が見つけたのは、ガラス製のティーセット。

カップが広口になっていて、“コロン”としたデザインが可愛い。


「これがいいのか?」


熱心に見ている私の隣で寛貴が聞いた。


「うん。可愛い」


「そちらの商品は人気があるんですよ?」


にっこりと笑いかける店員は寛貴を見て頬を染めていた。


「梨桜が気に入ったのを買えばいい」


寛貴が言い、私は彼に見とれている店員に声をかけた。


「これにします」


「ありがとうございます」


私ではなく、寛貴を見て挨拶をした店員。解りやすい人だ。



ティーセットを包装してもらい店を出ると、通りの向こうに見慣れた後ろ姿がいた。

隣には制服を着ている女の子が立っている。


「あ‥」


「どうした?」


立ち止まって通りの向こうを見ている私を寛貴が不思議そうに見て、私の視線の先を辿っていた。


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