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秋桜  作者: 七地
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強引な招待 (2)

車に乗せられて倉庫につくと、想像通りのヤンキーの溜まり場っていう雰囲気の場所で驚いた。


「うわぁ‥」


男の達がバイクをいじっていたり集まって話していたり。

葵のハウスとは正反対。葵はごちゃごちゃしているの嫌いだからな


「梨桜ちゃん?」


「やんちゃだねぇ」


つい、本音を言うと悠君は苦笑いを返してきた。


「‥そう?」


「うん」


倉庫の中に入り、歩いていると、男の子たちは私と悠君を見ていた。


うわ、男の子がいじってるバイクって改造バイクだよ!寛貴と拓弥君も改造バイクに乗ったりするの?



「梨桜」「梨桜ちゃん」


名前を呼ばれた方を見ると寛貴と拓弥君が階段を降りてきた。


「梨桜ちゃん、いらっしゃい」


ヤンキーっていつも特攻服着ているんだと思ってたけど違うんだ。

二人とも普通の私服だった。


そう言えば葵達も普通か‥



「おじゃまします」


「梨桜ちゃん、紅茶でいい?」


幹部室に通されると、そこからは1階の様子が見える造りになっていて、下で遊んでいる男の子達が見えた。


「うん、みんないろんな色の髪の毛だねぇ」


私が下を見ていると、下でも気になるのかチームの男の子達がチラチラと上を見上げていた。


「梨桜、怖くないか?」


寛貴が聞いた


「怖くはない。でもちょっとびっくりしてる」


また本音を言ってしまった。

ここは、『怖ーい』って言うべきだった?…でも、今更か‥


お茶を買ってきた子にありがとうと言うと“いえ”と言って部屋を出て行ってしまった

男の子だらけのところに急にきて悪かったかな。


葵のところとは勝手が違うんだなぁと思いながら持ってきてくれたお茶を飲んだ。


「梨桜ちゃん、メガネ外してもいいよ」


幹部室で拓弥君に言われてメガネを外して髪も解いた。


「一人でこの近くまで来たのか?」


寛貴に聞かれて曖昧に頷いた。


「うん。ママのお墓参りに来たの」


そう答えると拓弥君が「なんか食べるか?」って聞いてきた。


「ううん、気を使わないで」


すぐ帰るし。そう思って言うと


「遠慮しなくていいよ。ちょっと待ってて」


そう言うと、悠君を連れて部屋を出て行ってしまい、部屋に寛貴と2人で残された。


壁には真っ黒な服がかけられていた。さっきから気になっていて近くに寄って見てみた。


「ねえ寛貴、これが特攻服?」


聞くと、寛貴は私の隣に立ち壁から特攻服を外して見せてくれた。


「ああ‥今は走らないけどな。初めて見たか?」


頷いて、服の背中を見ると刺繍が綺麗だった。


「寛貴も走ったことあるの?」


「ないな。走らなくなってからしばらくたつ」


葵のところも走らないって言ってた。


「梨桜、お袋さんの墓参りには頻繁に来るのか?」


「うん」


できれば月命日には行きたいと思ってる。

私の中でママがいないということが消化できるまで‥せめて、1年が経つまでは‥


「1人で来るのは危ないだろ?背中が痛くなったらどうする」


「うん。でも、少しずつ良くなってきてるんだよ?」


答えに困ってしまって、曖昧に笑った。


葵と一緒に行く約束だったけど、葵は本当はあんまりお墓参りに来たくないんじゃないかなって思う。

葵にとって、去年の秋は辛い事ばかりがあったから‥


「どんな事故だったか、聞いてもいいか?」


頷いて、ソファに座ると寛貴が隣に座った。


「学校帰りに夕飯の材料を買うために寄ったお店で買い物をしているときに、スピードを出し過ぎてカーブを曲がりきれなかった車がお店に突っ込んできたの」


あの時は、一瞬何が起こったのかわからなかった。


「ガラスを突き破っても車は止まらなくて、お店の中にあったショーケースに幾つもぶつかってやっと止まったの」


寛貴は眉を顰めて話を聞いていた。


「巻き込まれたのか」


「うん。車が衝突したショーケースが私の方に飛んできたの。私はショーケースと壁の間に挟まれて肋骨を3本折って‥背中にガラスが突き刺さったの」


寛貴に向かって、骨折した場所を1か所ずつ指差した。


「ここと、ここ。それから‥ここ、だったかな?出血した量が多くて危険な状態だったんだって」


「辛かったな‥」


私は首を横に振った。


本当に辛かったのは葵なんだよ。

事故に遭って意識が戻らない私を心配して北海道に来ている時に、ママの容態が急変したことを知らされたそうだ。


私の事を心配させたまま、葵一人にママを看取らせてしまった。本当なら、私も一緒にママを看取りたかった。葵にだけ辛い思いをさせてしまった。


「私は‥命が助かったからいいの。それだけでも感謝しなきゃ」


そう言うと、寛貴が「ごめん」と言って私が指を指していた手を握った。


「寛貴が謝ることじゃないよ?あの事故では二人の人が亡くなって‥」


その時、ドアがノックされて大きな声が響いた。


「寛貴さん!章吾です。入ります!」


章吾?

飛澤章吾!?どうしよう!

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