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秋桜  作者: 七地
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水底に沈む…(1)side:悠

今日はクラスが…否、学年中の野郎共が浮き足立っていた。


元男子校の紫苑学院が浮き足立ってしまう理由は…水泳

今日の女子の体育授業は水泳だ!


女子8名の水着姿が見たい野郎共は燃えている。(オレ的には梨桜ちゃんが授業を見学している時点で興味はない)


元男子校のこの学校で初の女子生徒の水泳に教師達はピリピリしている。室内プールは暗幕まで張られる厳重さだ。


……バカばっかり……生徒も教師もマジでバカ。


たった8名の授業で暗幕なんて大袈裟だ。

中学までは共学で水泳の授業だって普通にあっただろーが。


「よぉ悠、おまえも次水泳?」


更衣室の入口に拓弥さんがいた。


「拓弥さんも?」


「ったく‥野郎とプールとかキモい」


ここにもバカが一人。「キモい」はこっちのセリフだ。

女子の水泳の授業が終わるタイミングでここにいることで何を考えているのがわかる。


「…」


「拓弥、おまえもな」


心の中で寛貴さんに拍手を送った。


「「「キャアァ~!!」」」


オレと寛貴さんが拓弥さんに冷たい視線を送っていると、屋内プールから悲鳴が聞こえた。


「何だ?」


「悲鳴‥だよな?」


周囲にいた男子生徒達も悲鳴が聞こえたことに騒ぎ出した。

何があったのかと思っていると、女子生徒が数人走ってきた。


水着姿のままの女子は焦った様子でオレ達に訴えた。


「助けて下さい!先生がっ!」


「どうしたんだよ?」


「先生が!!助けて下さい!!」


彼女たちは焦るばかりで同じ言葉を繰り返し、要領を得ない。



彼女達に、訳も分からないまま急かされてプールに行くと


「東堂さん!危ないからやめて!」


「待ってられない!救急車呼んでっ」


梨桜ちゃんの切羽詰まったような声が聞こえて水に飛び込んだ音が聞こえた。


「何があった?」


寛貴さんが傍にいた女子生徒を捕まえて問いただした。


「先生が高飛びこみ用のプールに消毒薬を入れていたら、足を滑らせて転んだんです。頭を打って水に落ちて、先生が浮かんで来ないから東堂さんが助けに…」


「教師を呼んで来い」


寛貴さんが後をついてきた男子生徒達に向かって言うと、携帯で救急車の手配をした。


梨桜ちゃんは体育の授業には出席できないはずだ。それなのに助けに飛び込んだっていうのか!?


オレが水に飛び込もうとしたら拓弥さんに止められた。


「おまえまで飛び込んでどうするんだよ!」


拓弥さんの腕を振り払おうとすると、水面に梨桜ちゃんが浮かんできた


「梨桜ちゃん!」


オレの呼び掛けには答えずに、梨桜ちゃんは深く息を吸い込むと水の中に潜っていった。




「制服で飛び込むなんて無茶だ」


拓弥さんが呟いたとき水面に黒いものが浮かび上がり、梨桜ちゃんが顔を出した。

彼女は自分の腕に教師を抱えていた。


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