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秋桜  作者: 七地
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空席の子 (1)

‥男ばかりの教室はむさ苦しい。

雨が降っている今日はいつも以上にそう感じてしまう。


私は空席の机を眺めた。


「梨桜ちゃん、何見てるの」


私の前の席に座った悠君が後ろを振り返りながら私の視線の先を探しているようだった


「悠君、あの席の子ってどういう子?」


「‥記憶にない」


そういえば、入学してすぐに学校に来ていないって言ってたね。

私はあることを決めて立ち上がった。


「梨桜ちゃん?どこ行くんだ」


「職員室」




「先生」


担任の先生は私を見て笑った


「どうした?東堂」


私の身体の事情を知っている先生は、私のためにいろいろと骨を折ってくれていた。


「クラスのもう1人の女子生徒ってどんな子ですか?」


私が聞くと先生は驚いていた。


「私、会ってみたいんです」


「どうしてだ?」


「クラスが男だらけだから、女の子と話したいと思って‥」


「仕方ないだろ、元男子校なんだから」


「でも、梅雨時に男だらけってむさ苦しいし…」


「…」


先生が絶句しちゃった。

私、そんなに変な事言った?


「東堂、オレはあいつと双子なのか半信半疑だったが」


そう言って私を観察している。

担任の先生だけは私と葵の関係を知っている。緊急連絡とか父兄連絡の為に‥

葵と姉弟だと知った時の先生は、物凄く驚いていた。


「やっぱり姉弟だよな‥今実感した」


生徒会顧問もしている先生は葵とも面識があるらしい。


「今の会話のどこで実感したんですか」


「いや、こっちの話しだから気にするな。それより、今日の午後に笠原の家に行くけど一緒に行ってみるか?」


「はい、連れて行って下さい」




不登校の生徒は、笠原 麗香という名前だった。


先生に連れられて来た笠原邸は豪邸だった。お嬢様なんだ


「先生、いつも申し訳ありません」


「いいえ、今日は麗香さんのクラスに編入してきた子を連れてきました。麗香さんに会いたいそうです」


突然のクラスメイト登場でお母さんが私を見て驚いていた。


「こんにちは東堂梨桜です」




とても立派な応接室に通されて、私はクラスメイトと初めて会った。


「はじめまして、東堂梨桜です」


「笠原麗香です‥」


彼女は普通の女子生徒という感じだ。


「笠原さん、東堂は北海道から編入してきたんだ」


先生が私の事を話すと、先生から目を逸らすわけでもなく話を聞いていた。


「そうですか‥」


家で引きこもりかと思ったらそういうわけじゃないらしい。

担任が家に行けば顔を見せる、私の前にも顔を出す。


何が嫌で学校に来ないんだろうか?


「東堂さんは札幌では共学だったの?」


笠原さんのお母さんが聞いた。わざわざ元男子校に編入したのが不思議なのだろうか


「いえ、札幌では女子高に通っていました。紫苑学院に決めたのは‥制服が父の趣味だったから。ですかね」


「東堂、先生は初めて聞いたぞ。その理由」


先生は本当に驚いているというか少し呆れているようだった。

まぁ、娘と息子も呆れてるんだけど‥


「そうでしたっけ?でも、父は海外赴任でロンドンにいるんですよ。私がこの制服を着ていても意味ないと思うんですよね」


私が言うとお母さんは笑った。彼女も少し笑った。

笑えるんじゃない‥


「編入して驚いたのが男だらけ‥むさ苦しいんです」


「仕方ないだろ?男子校なんだから。先生だって嫌だ」


先生はムキになっていう。案外子供っぽいところのある先生だ。



帰りの車で先生に聞いてみた。


「彼女は何が嫌で学校に来ないんですか?」


先生は難しい顔をしながら答えた。


「わからん。親が聞いても答えない」


自分で志望して受けた高校に来ないなんて何だか変だ。

イジメかと思ったけれどそれも違うような気がする。


「明日からプリント持って行きます」


「やってくれるか?」


先生は私を見て言った


「先生、前見て運転してください!生徒会役員でも私は朱雀のメンバーじゃないから放課後の活動に意味はないし、有意義でしょ?」


そう言うと、先生は恐る恐るといった感じで聞いてきた。


「青龍のメンバーなのか‥?」


「先生までそんなこと言うのやめてください。葵が迎えに来るので帰りに青龍のチームに行くこともありますけどメンバーじゃありません」


「そうか。先生は、生徒会に青龍のメンバーがいるのかと思って焦ったぞ」


先生は心底ホッとしたように笑った。


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