やんちゃ集団 (2)
私は、自分がどこへ向かっているか、葵と愁君が何を話しているか知らずに眠り込んでいた。
――車中――
「莉桜ちゃん眠った?」
「ああ‥ハウスに行って」
「梨桜ちゃん綺麗になったな」
「‥‥」
「弟も大変だな」
「愁、弟って言うな。梨桜がほんの数分先に生まれただけだ」
――――
―――――
目が覚めると、ベッドに寝かされていた。
「葵?」
葵を呼ぶと、ベッドの脇にあるソファから声がした。
「梨桜、起きた?」
「うん、ごめんね。熟睡しちゃったみたいだね」
ここはどこだろう?自分の部屋じゃない。
広いベッドで壁紙も部屋の内装も初めて見た。
「葵、ここどこ?」
「青龍の総長室」
「え?」
「青龍っていうのはオレが入っているチームの名前。ここはそのトップである総長しか入れない部屋」
ガバッと起きあがるとツキンと背中に痛みが走った。
「いたっ」
蹲ることもできず、痛みが走ったその姿勢のまま動けずに呼吸を止めて痛みをやり過ごした。
「梨桜!」
葵が駆け寄り支えてくれた。
「梨桜、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
葵は背中をさすってくれた。
無理な姿勢になると背中が痛くなる。それは背中から全身に広がり息をすることもできなくなってしまうような痛みで、入院していたころよりは痛みが走る回数は減ったけれど不意に姿勢を変えたりすると背中が痛くなる。
「葵、ここは青龍の溜り場なの?」
「ああ‥チームハウスだよ」
葵は私の背中をさすりながら答えた。
「葵は暴走族の幹部なの?」
「暴走族とはちょっと違う‥」
葵‥双子の弟がチームに入った事は聞かされていた。
パパの仕事の都合で住んでいた札幌からたまに葵のところに遊びに来るとバイクに乗せてくれた。走ることが好きなだけだと思ってた。
「梨桜ちゃん、葵は青龍のトップ。総長だよ」
「え?」
トップ?総長?
「宮野葵は青龍の総長、ちなみにオレは副総長」
「葵‥葵が通っているのは東青学院だよね?有名進学校だよね」
涼しい顔をして葵は言う
「そうだよ」
いいの?そんなことしていていいの!?勉強についていけるの?
葵もあの特攻服とか着ちゃうの?‥私、あれ好きになれないんだけど‥
「梨桜ちゃんが編入する学校も有名進学校だよね」
突然愁君が話を変えてきて少し不思議だったけど、私は頷いた。
私が編入試験を受けた学校は有名な進学校だと聞いていた。
「だってパパが制服が可愛いねって‥」
本当はそれだけが理由じゃないけれど、制服に惹かれたのも事実。
可愛いセーラー服だったんだもん‥
「バカオヤジ‥そんな理由かよ」
チッと舌打ちする葵は黒いオーラを纏っていた。これが総長のブラックオーラか?
「梨桜、もう平気か?」
私を気遣う葵はいつもの優しい葵で中身は変わっていないことに少し安心した。
「うん、大丈夫。ありがと」
「話しがあるからここにきた」
葵と愁君がにっこり笑った。その笑みが黒い‥?
…愁君と葵が怖い。何か企んでいる!