定例会 (6)
…寝すぎた。
久しぶりに葵と一緒に眠ったら、気持ちよく眠れすぎてしまった。
熱は下がったけど、頭がぼーっとしている。
葵も寝すぎてぼけっとしていたな‥あれで総長と生徒会長が務まるのだから不思議だ。
「梨桜ちゃん、生徒会行くぞ?」
目の前で悠君が首を傾げている。
男の子のくせに相変わらず可愛いじゃないか‥
「生徒会?」
なんだっけそれ
「…?」
悠君の真似をして首を傾げて考えた。
頭がうまく働かない
「梨桜ちゃん、なんか今日変だぞ?寛貴さんに怒られるから行くぞ」
悠君に手を引かれて教室を出た
寛貴‥?ああ、思い出した。朱雀の総長だ
「梨桜ちゃん、体調はもういいの?」
「ご心配をおかけしました」
二人に頭を下げた。
「梨桜ちゃん?」
「拓弥さん、梨桜ちゃん今日変なんですよ。ぼーっとしちゃって」
悠君が私に苦笑いを向けた。
「寝すぎて頭がぼーっとしているだけです」
「かわいーね、梨桜ちゃん」
相変わらずチャラ男だ。チャラ男
拓弥君がにこにこと答えた
「これからチームの溜り場に行くから」
「‥行ってらっしゃい」
「梨桜ちゃんも倉庫に来るか?」
倉庫っていかにもヤンキーって感じ。葵のところも呼び名が違うだけで似たようなものかな?
「私は夕飯の用意があるので失礼しますね」
「梨桜ちゃんが家事するのか?」
悠君が言った
「そうだよ?」
「おうちの人は?」
「母は亡くなっているし、父は仕事の都合で外国にいるから弟と二人暮らしなの。弟はクラブ活動が忙しいから料理は私がやってるの」
総長の仕事=クラブ活動みたいなものでしょ。間違いではないよね
「それじゃ、失礼します」
帰ろうと立ち上がると
「梨桜」
寛貴が声をかけてきた
「はい?」
「土曜日にチームに来い」
私はすみません。と頭を下げた
「土曜日は病院で検査なんです」
これはウソじゃない、本当の事だ
「検査?」
寛貴は問いかけた。
「結構大きな怪我だったので、定期的に検査を受けているんです。」
「梨桜ちゃんがこの前みたいになったらオレ達はどうしてあげたらいい?」
拓弥君の顔はチャラ男ではなくなっていた
「自分でもどうすることができないので痛みをやり過ごすしかないんです。去年、事故にあった時に背中の神経を傷つけてしまったみたいで負担がある姿勢をとったりすると、背中から全身に痛みが走る時があるんです」
「事故?」
悠君が眉を顰めながら聞き返し、私は頷いた。
「前よりは頻度が少なくなってきたんですけど、たまにひどく傷む時があってその後に熱が出てしまうことがあるんです」
「それは辛かったね」
私は拓弥君に笑いかけた
「でも命が助かったのでいいんです。時間はかかりますけど、少しずつ回復してきているみたいなので‥」
あの事故で亡くなった人もいる。命がある私は恵まれている。
「弟は背中が痛いときにどうしてるんだ」
寛貴が聞いた
「背中をさすってくれます」
「優しいな」
悠君が言った
「はい。生意気だけど優しいんです」
これも本当の事だ
「送る」
寛貴が言った
「いつも悪いし」
私が言うと
「あ~‥そういう他人行儀、嫌だな。そういえば梨桜ちゃん東青の奴らに懐いてなかった?オレ、ショックだったな~。三浦の事“愁君”て呼んでたしな。オレなんか何回もお願いしてやっと名前で呼んでくれたのに」
拓弥君が恨めしそうに言った。
「おまけに小嶋を“コジ君”て‥梨桜ちゃんは紫苑の生徒でしょ。青龍の幹部と仲良くしてどうすんのさ」
悠君がとどめをさした。
だって彼らといるのが私の日常なんだもの!
おまけに“葵”はそれ以外に呼びようがない。
「梨桜ちゃん、オレの名前は?」
悠君が言った
「悠くん」
「オレの名前、可愛く呼んで?」
いつの間にかチャラ男に戻ってる
「拓弥くん?」
オレ様男が睨む
「呼べ」
「ひろき…」
「それでいい。梨桜、帰るぞ」
なんだかドツボにはまっていきそうで怖いな~
大丈夫かな私…
「梨桜ちゃん、今は体調が整わなくて無理かもしれないけどいつかはおれらのチームに顔だしてよ」
助手席から振り返って悠君が言った。
「‥」
返事に困っていると
「怖い奴らじゃないよ?」
残念ながらそういうことは心配してないんですけど。倉庫に行くことだけはまずいです
「弟が心配するようなことはしないし、させない。だから落ち着いたら顔出せ」
寛貴がそう言い切った
「はい‥」
この場はそう言うしかないだろう‥
私は青龍でトップを張っている男の姉です。あなたたちと馴れ合うとイロイロと支障がでると思うんです。
こう言ってしまいたいけど絶対に言うなって言われているし…
寛貴がチームに来いといった土曜日は葵に付き添われて病院にきた。
私の背中の中にまだガラス片が入っていると思うから、細かく調べて取り除いた方がいいのではないかという話をされた。
「検査は夏休みでいいよな」
「うん。ねぇ葵、手術のときに居てくれる?」
「当たり前だろ」
手術は怖い。
あの時の痛みと恐怖を思い出してしまうから‥
「大丈夫だよ。傍にいる」
葵が私の頭をぎゅっと胸に抱きしめてくれた
「うん」