定例会 (4)
「どうだ?」
しばらく、一人でぼんやりしていると葵の声がした。
「大丈夫」
葵が一人で部屋に入ってきたから体を起こそうとすると、葵が支えて起こしてくれた。
「葵、ありがと」
カシャンとメガネが床に落ちると葵がメガネをかけてくれた。
髪がもつれていたので結わえていた髪を解いた。
「愁、病院に連絡してくれないか?コジ、車まわせ」
葵の声が少し冷たくなったので、顔をあげると、朱雀の3人が部屋に入ってきていた。
「梨桜ちゃん、オレの家病院だから診察受けた方がいいよ?今連絡するから」
愁君の言葉に頷いた。
「ありがとう愁君、葵もありがとう」
「‥別に。愁、病院に付き添ってやれよ。この女どんくさそうだ」
ムッ
愁君が付き添う口実をつくるのはわかるけど、どんくさいって何よ?
「‥1人で行けます!」
「梨桜、一緒に行ってもらえ」
その言葉は葵ではなく寛貴だった。その言葉が意外で、寛貴を見上げてしまった。
「三浦、梨桜ちゃんは朱雀の人間だけど頼んだぞ」
拓弥君の言葉に耳を疑った。どこをどうしたらそういう考えにいきつくのだろうか
「何を言ってるの!?私がいつ!」
拓弥君がにこにこと笑った
「やだな、梨桜ちゃん。寛貴が気に入って生徒会に入れたんだ。君も幹部っていうことだよ」
笑いながら葵と愁君を見ていたけれど、拓弥君の眼は笑っていなかった。
「勝手に決めないで!」
「不服か」
低い声で寛貴が聞いた。
そんな声で聞いたって怖くなんかないんだから!
「何が不服だ」
チラリと葵を見ると、史上最悪に不機嫌そう‥
「チームに入るなんて、‥弟が泣く」
葵に殺される。とは本人を目の前にして言えない。
「梨桜ちゃん弟がいるんだ」
悠君が言った
「そんなもんほうっておけ。男だろ?それに梨桜ちゃんに何かをしろって言っているわけじゃない。寛貴の隣にいればいいんだ」
拓弥君が言った。
それが一番ダメじゃない!?
「ダメ!」
冗談じゃない!
「なんでだよ‥弟は姉ちゃんべったりなのか?」
悠君が聞くけれど、本当の事は言えない!‥けど阻止しなきゃ
「なぁ、梨桜ちゃん教えて?紫苑に来て朱雀を拒否るってどうしてだ?朱雀の上層部を構成しているメンバーはほとんどが紫苑の生徒だ。朱雀に入りたくて紫苑に進学してくる生徒だって多いんだ」
そんなこと知っていたら入らなかった。
「紫苑に編入したのは時期的に受け入れてくれるのがそこだけだったのと、私の父が何も知らないで選んだから!それに‥弟がべったりなんじゃなくて‥私が‥」
葵の姉だから。とは言えない。でも阻止しなければ、キレた葵が何を言い出すかわからない。
私が危険云々より、今以上の窮屈な生活になることは間違いない。
「え、と‥ぶ、ブラコンだから?」
これしか思いつかなかった。
「ブラコン!?‥ハハハ!」
愁君が吹き出した。
「ブラコン!?梨桜ちゃんブラコンなのか!?」
拓弥君が聞き返した。
葵はうつむいて肩を揺らして笑っている。
「そう!私ブラコンだからっ!ウチに帰って弟の世話しなきゃいけないの!」
呆れて何も言えない朱雀メンバーに私はもう消えてしまいたかった。
恥ずかしい…
「梨桜ちゃん、車が来たから行こうか」
愁君が言ってくれて少しほっとした
「うん‥」
「コジ、梨桜ちゃんの荷物持ってきて」
ソファから立ち上がろうとすると葵が私を抱き上げた
「歩けるよ?下ろして!」
「うるさい。黙れ」
怖い‥葵はそのまま私を運び、廊下に出ると小さな声で言った。
“先に家に帰れ”
その言葉に小さく頷いた。
背中を痛めた後は熱が出ることが多い。
もう熱は出したくないと思うけれど、出てしまう。
こんな時、どうして私は助かったのだろうかと思ってしまう時がある。
「梨桜、おかゆ作ったから食べろ」
何も食べたくない。体中がだるい。
また高熱を出した私は葵に看病されていた。
「後で…」
熱を出さない体に戻りたい。
そう思っても仕方のないことだけれど、こうも頻繁に熱を出すとつい愚痴を言いたくなってしまう。
「ダメだ。食べないと薬も飲めないだろ」
体を起こされてレンゲが口元に運ばれる。
「ほら、口開けろ」
口を開けるとレンゲを口に入れられて食べさせられた
「午後から学校に顔出してくるから寝てろよ」
「ごめんね葵」