嫉妬 (6)
「‥もしもし、梨桜です」
涼先生と診察中でもつながる携帯に電話を掛けるとすぐに出てくれた。
『どうした?珍しいね』
「一昨日の夜から熱が下がらないんです。今から行ってもいいですか?」
頭がうまく働かない…
熱を出すのにもいい加減飽きた。こんな自分は大嫌い。
『今学校?迎えに行ってあげるよ』
「迎えに来てくれるの?ありがとう、先生」
先生の声に安心した。涼先生にお願いすれば、明日には熱も下がるはず。
保健室で寝ていると誰かが枕元に立つ気配がした。
涼先生が来てくれたの?
「涼先生?」
目を開けないで聞いてみた。
額に手を当てている手が少し冷たくて心地良かった。
呼びかけても返事がないということは涼先生じゃないの?
この手は誰?
「嫌がらせをされていることに気が付けなくて悪かった」
藤島寛貴…
「どうしてそのことを知ってるの?」
目を閉じたまま寛貴に聞いた。悠君は何も言っていなかったよね?
「宮野が拾った紙を見た」
葵が拾った紙?
「それには何が書いてあるの?」
「“朱雀の隣を歩くな”転んで手首を捻挫したのは誰かに突き飛ばされたからじゃないのか?」
机に入れてあった紙を処分しなかった事を思い出した。葵が“お弁当を洗う”って言った時に見つけたんだ。
失敗したなぁ…
額に触れていた手がすっと頬を撫でた時にメガネを外していたことを思い出して手の甲を目に当てて顔を隠した。
「男の嫉妬も怖いね。一般の生徒なのかわからないけれど‥生徒会から抜けるように言われたの」
「危険が及ばないようにする。悪かった」
解放してくれるのが一番手っ取り早いのに‥
“もういいでしょう?生徒会を辞めさせて”そう言おうとしたら、パタパタとサンダルで歩く音がした。
「東堂さん!お迎えの人が来てくれたわよ~」
「はい」
涼先生が来てくれたんだ。
「私、これから病院に行くね」
「ああ」
気配が消えて慌ててメガネをかけた。
彼に寝顔を見られてしまった‥
「梨桜ちゃん?」
涼先生が顔を覗かせた。目を細めて笑うと愁君と似てるなって思う。
「先生、ごめんなさい」
涼先生は額と首筋に手を当てると眉を顰めた。
「熱が出たことに心当たりは?」
「転んだ時に背中がすごく痛くなった」
「了解。病院で点滴してあげるから帰るよ」
ほら、と言われて腕を差し出すと抱えられた。
「相変わらず軽いな。食べなきゃだめだって言ってるよな?」
涼先生は「葵にもっと食べさせるように言わないとな」そう呟きながら私を抱えて歩いた。