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秋桜  作者: 七地
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嫉妬 (5) side:悠

次の日、梨桜ちゃんは午後から登校してきた。


「おはよう、悠君。ってもう午後だけど…」


「大丈夫か?」


きょとん、としながらオレに聞いてきた。


「何が?」


何がって転んで手首を捻挫したんだろ!?


「体だよ。捻挫!」


「ああ…」


フッと柔らかく笑った。


「手首は腫れもひいてきたから大丈夫だよ」


今日はいつもと印象が違う。


何が違うんだろうと考えてみたら髪型が違った。

いつも2つにわけているのに緩くサイドに纏めていて毛先がふんわりとカールしていた。

それだけで可愛らしく見えた‥


「今日は生徒会に出ないで帰らせてね」


「顔だけでも出してってよ。2人とも心配してるから」


少し迷っていたが


「迷惑かけちゃったからね…そうだね、挨拶だけして帰ろうかな」


何だか今日はいつもよりゆっくりと話すな…それが今日の雰囲気とあっていた。


「梨桜ちゃん、携帯の番号とアドレス教えてくれない?」


少し考えていたけれど頷いた。


「うん、いいよ」


赤外線で情報を交換した。


「寛貴さん達にも教えていいか?」


「…いいよ」


ぼーっとしている。



梨桜ちゃんは授業が始まってもぼーっとしていた。


「小テストの答案返すぞー」


授業が始まっても頬杖をついて窓の外を眺めていた。

ウチの学校は試験の答案を返すときに、まず先に上位5人が名前を呼ばれて、その後は出席番号順に呼ばれるという残酷な決まりがある。


「東堂」


担任が呼びクラスがざわついた。

まさか…梨桜ちゃんがトップ?


梨桜ちゃんは担任に呼ばれてもぼんやりと外を眺めていた。


「おーい、と・う・ど・う・り・お~!聞こえてるか?テストの答案返すぞ」


梨桜ちゃんはようやく反応した。


「え?」


クラスに失笑が起こった『あいつがトップなわけないよな』『ガリ勉でも成績悪かったら可哀想だな』


「だからな?答案返すぞ」


「--はい」


梨桜ちゃんは返事をしてまた窓の外を見ていた。


「あのなぁ、東堂?」


梨桜ちゃんは教卓を向いた


「はい?」


クラスに、ぎゃははと笑いがおこった。

下品な、下卑た笑いだ。相手を蔑むような笑い。

オレはその笑いに苛立った


こいつらは梨桜ちゃんの事を何も知りもしないくせに、変なあだ名をつけて陰でバカにしている。

こんな奴らに彼女をバカにされたくない。


「東堂梨桜!名前呼んだらさっさと答案を取りに来いっ!」


途端に静まり返る教室。

梨桜ちゃんが席から立ち上がって教卓に向かいそれをクラスの奴らの反応は様々だった。

呆然とする奴、悔しそうにしている奴…梨桜ちゃんに負けるのがそんなに悔しいのか?


「東堂、熱が上がって来てるんじゃないのか?」


担任が梨桜ちゃんの顔を覗き込んだ。


「…そうかも…」


担任が梨桜ちゃんのおでこに手をあてた


「熱があるじゃないか!保健室に行きなさい」


オレは立ち上がった


「先生、オレが連れて行きますよ」


「海堂、おまえにはまだテストの答案返してないぞ?」


「いいよ。梨桜ちゃんに解説してもらうから」


「まあそうだな。後で渡すから職員室に来い」


あっさり納得する教師に驚いたが、それほど梨桜ちゃんの成績が良かったということだろう。

担任は次の順位の奴に答案を返すことにしたらしい


「続き配るぞ~」


2番目に答案を受け取った奴が悔しそうに机を叩いた。


「先生!東堂さんは何点だったんですか?」


「…お前より上ってことは一つしかないんじゃないのか?配点見てみれば分かるだろ」


オレは笑った


「梨桜ちゃん!君って最高だな!」


「そお?」


反応が鈍いのが心配になって額に手を当てた。

本当に熱い

痛めていない方の腕をとり支えて歩かせた


「梨桜ちゃん、保健室まで歩けるか?」


「大丈夫だよ」


保健室につき体温を測らせると38度近く熱があった


「家に帰る?」


「う~ん…病院に行く」


そう言うと携帯を取り出し番号を押していた。


「‥梨桜です。一昨日の夜から熱が下がらないんです。今から行ってもいいですか?」


病院に電話してるのか‥オレは寛貴さんにメールを送った。

“午後から梨桜ちゃんが学校に来たけど熱があるみたいなので帰らせます”


「いいの?迎えに来てくれるの?ありがとう、先生」


迎えに来るって医者か?‥知り合いなのか?

電話を切ると梨桜ちゃんは


「いつも見てくれてる先生が用事でこの近くにいるから迎えに来てくれるって」


「良かったな、じゃあ荷物持ってきてやるよ」


「ありがとう、悠君」


「いいから、迎えがくるまで休んでろよ」


ベッドに彼女を寝かせて保健室を出ると寛貴さんから着信があった。


「はい」


『車を用意させろ』


「これから知り合いの医者が迎えに来るらしいです。今保健室に寝かせてます」


『医者?』


「はい。一昨日の夜から熱が下がらないとか言っていました」


『昨日、宮野が持ってきた紙の事は何か言っていたか?』


「今日は熱のせいかぼーっとしていてまともな話はできないと思いますよ‥」


『わかった』


寛貴さんとの電話を切り、教室に急いだ。


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