嫉妬 (3)
紙を鞄に入れて教室を出た。左手首と背中が痛い‥
--今日は着替えて帰るのは無理だな
カバンを小脇に抱えて携帯を取り出して葵に電話しようとすると
「遅い」
寛貴と拓弥君がこっちに向かってきていた。
ムッとした私は寛貴を見返した。誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ!
ぎゅっとこぶしを握るとズキンと痛んだ
「いっ…」
痛い…
顔をしかめると
「左手がどうかしたのか」
寛貴が左腕を掴んで上に持ち上げた
「ぃっ!痛い!」
痛みで涙がぶわっと浮かんだ
「どうした?」
「つまずいて転んだの。痛い!離してっ」
保健室に連れていかれて湿布を貼り包帯で固定された。
「いたっ」
「我慢しろよ」
意外に上手いんだ。なんて思いながら手当てされた腕を眺めていると
「今日は家まで送る。行くぞ」
私の鞄を持って歩き出した。
「大丈夫!」
「何が大丈夫なんだよ梨桜ちゃん、その手でどうやって鞄持って帰るんだよ?」
いいから私を放っておいてくれないかな
さっきから携帯が震えている。
絶対、葵だ‥まずい
「出たら?」
拓弥君に言われて通話ボタンを押すと
『遅い。何してんだ』
“もしもし”と言う前に話し始めた。
「実は…転んでしまいまして」
『怪我は?』
「手首をひねった」
『学校まで迎えにいく』
想像通りの言葉に慌てて返事をした。
「あ、大丈夫。学校の先輩が送ってくれるらしいから。先にご飯食べててね?じゃあね!」
通話を切った
帰ったら怒られるだろうなぁ…
ベンツに揺られて、私はドアにもたれて目を閉じていた
熱が出てきたのがわかる‥
「次はどこに向かえばいいんだ?」
寛貴の声で目を開けると家の傍だった
「そこのコンビニで降ります」
「家を教えろ。前まで行ってやる」
ダメに決まってるでしょ…
「フルスモークのベンツで帰ってきたら家族が驚くからコンビニにしてください」
寛貴からは舌打ちが帰ってきた
「そりゃそうだな」
拓弥君が、ははっと笑い、車はコンビニの駐車場に止まった
「ありがとう」
「お大事にね、梨桜ちゃん」
「腫れがひかなかったら病院にいけよ」
2人の言葉に頷いて車から降りて信号待ちをしていると、隣に人が立った。
背の高い男だ。チラリと見ると帽子をかぶっていてメガネをかけていた
「フラついてるけど?」
「ん…あの車が通り過ぎるまで待って」
こちらからは見えないけどあちらからは見えているはずだから目の前をUターンしたベンツに軽く手をふった。
歩行者用の信号が変わったとき、鞄をとられてフラつく体を支えられた。
「熱が出てきたな」
「うん」
「湿布を貼るから腕出せ」
シャワーを浴びて軽くご飯を食べさせられると薬を飲み、湿布を交換してもらいベッドに横になった
「鞄から弁当箱出して洗うからな」
「ん…お願い」
次の日は熱が下がらずに学校を休んだ。
葵は紫苑生徒会との定期交流だから休んで丁度いい。なんて言っていた