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秋桜  作者: 七地
251/258

還る場所  (6)

重い…体が窮屈。

でも、温かくて気持ちいい。


「葵?」


一緒に居てくれたの?

目を開けずに聞くと機嫌が悪そうな声が返ってきた。


「誰が葵だ?」


その声に、目を開けると私の顔の横に腕があった。

腕枕?葵はしないね…


「シカトか?」


恐る恐る振り向くと、ムスッとしている自分の彼の顔があった。

寛貴と葵を間違えた。…ごめんね


「ごめんなさい。間違えました」


チッと舌打ちすると腰に回された腕に力がこめられてギュッと抱き締められた。


「眠れたな?」


眠れたけど…あの、頭が朦朧とする感覚は私に何か飲ませたでしょう?

ジーッと見ると顔に手で目を覆われてしまった。


手で覆っている彼の手をずらして、自分が何処にいるのか確かめると、朱雀の総長室だった。

そのまま寛貴の手首を捻って時計で時間を確かめると朝の7時だった。


10時間以上眠っていたんだ…

薬の力って凄い。


「シャワーを浴びるか?」


「ううん、帰ってからにする」




家に入ると、葵は居なかった。

昨日、寛貴が札幌に行ったって言っていたけど、本当にいないんだ…


「食べられる分だけでいいから食べろ」


ボーっとリビングを眺めていると、寛貴がここに来る途中にカフェで買って来たスープとパンをテーブルに置いた。


「寛貴も食べるでしょ?コーヒーでいい?」



「これだけでも食べろ」


野菜スープとサラダだけでお腹が一杯になったけれど、手渡されたパンを頑張って食べていたら、私を見ながら笑っていた。


「なぁに?」


「別に…」


何が可笑しいのか分からないけど、笑っている。


「これから学校に行くの?」


「今日は休む。梨桜も休め」


うん、と返事をして残りのパンを口に入れた。

葵が札幌で何をしているのか気になって授業どころじゃないかもしれない。


「オレは一度に家に帰る。すぐに戻ってくるからおとなしくしてろよ?」


有無を言わせない強い口調で言われて頷いた。

今日の寛貴には逆らえないような気がする。



寛貴を見送った後、お風呂に入り、リビングのソファに座って部屋を眺めていた。

強引なやり方だったけど今までの細切れとは違う、まとまった時間の眠りは気持ちを落ち着かせてくれた。


窓を開けて空気を入れ換えて…

気持ちを固める為に声に出して呟いた。


「病院、行こう…」


やっぱり、このままじゃいけない。


携帯電話が鳴り、画面を見ると慧君からだった。

私からは連絡していないから、葵が慧君に新しい番号を伝えてくれたんだね。


「慧君?」


『おはよう、サボり娘』


安達先生から連絡が行ったんだろうか…

それとも葵?


「…ごめんなさい。明日は学校に行きます」


素直に謝ると、電話の向こうでクスクスと笑っていた。


『怒ってないよ。今、一人なんだろ?』


葵から連絡が入ったから心配してくれてるんだ。

『梨桜?』


凄く優しい声で呼ばれた。


『家族で隠し事は無しだ。葵に言えなければオレか義兄さんがいるだろう?』


「うん…」


あの夢の、アノ事を慧君に聞いてみたくなった。


「あのね、慧君」


『どうした?』


「ママって、お花が好きだったよね?」


『そうだな』


「コスモスって…好きだった?」


『好きだったよ。…梨桜と葵は覚えていないかも知れないけど、散歩に連れていった広場があるんだ。そこに咲いているコスモスが姉貴のお気に入りの場所だったよ』


「…そこに行きたい。どこにあるの?」



.


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