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秋桜  作者: 七地
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泡沫  (7) side:悠

今日、梨桜ちゃんは笠原と放課後デートをする予定だった。


いつもなら連絡が入る時間になっても彼女から連絡が来なくて、心配した寛貴さんが連絡をしても携帯は繋がらないまま。


苛立ちを募らせた寛貴さんは携帯をソファーへ放り投げた。


「捜せ」



彼女を捜させてから既に一時間は経っても、見つかったという連絡は入らなかった。


「悠、教室で梨桜はいつも通りだったのか」


鋭い視線を向けられるけれど、これと言って変わった様子は…

ここ数日の彼女を思い出そうとしていると拓弥さんの携帯が鳴った。


「…見つかったのか?ああ、分かった。……寛貴、駅裏の公園で傘もささないでベンチに座って動こうとしないらしい。どうする?無理矢理連れ帰るか?」


「オレが行くまで逃がすな」


寛貴さんは部屋を飛び出していき、その姿を見ながら拓弥さんが指示を出していた。


このどしゃ降りの中で傘もささないで…何考えてんだよ!?

もうすぐ冬なんだぞ!!



早く帰ってきて欲しい。彼女の顔を見て安心したい。

焦れる気持ちを宥めながら待っていると、ドアが荒々しく開けられて寛貴さんが入ってきた。


「部屋を暖めておけ」


寛貴さんの腕には大きなタオルに包まれて、真っ青な顔をして目を閉じている彼女が抱かれていた。


「梨桜ちゃん!」


オレが呼び掛けると、うっすらと目を開けてオレを見たけれどすぐに目を伏せて下を向いてしまった。


…この違和感は何だ?

こんな梨桜ちゃんは見たことがない。


寛貴さんはオレ達から彼女を隠すように背を向けるとシャワールームに連れて行った。



戻って来た寛貴さんの手には梨桜ちゃんの携帯が握られていて、それをテーブルに置くと疲れたように天井を仰ぎ見て煙草に火をつけた。


梨桜ちゃんがいるときはこの部屋で煙草を吸おうとはしなかったのに…


「悠、笠原に電話をしろ」


言われて慌てて電話をかけると、能天気な返事が返ってきた。


『梨桜ちゃん?普通だったよ』


「最近、気がついたことないか?なんでもいいんだ」


『んー…メールを拒否する方法を調べて溜め息をついてたかな。悪戯が増えた。とか言ってたような気がする』


それ以上埒のあかない笠原との会話を切り上げて、寛貴さんにその事を伝えると眉を顰めていた。


「悪戯メール?おまえ聞いてないのか?」


拓弥さんに聞かれて舌打ちをしていた。


「なぁ、梨桜ちゃん遅くないか?いつまでシャワー浴びてんだよ」


寛貴さんがシャワールームに入って行くとすぐに戻ってきてタオルを何枚も持ってまた戻って行った。


梨桜ちゃんを抱き抱えて戻って来た寛貴さんは頭から濡れていた。


「隣の部屋にいる」


抱き抱えたまま部屋を出て行った。。



「ただごとじゃねぇな、アレは…」


拓弥さんが呟き、ずぶ濡れになった彼女の荷物を広げて乾かしてやっていた。


「バックの中までびしょ濡れだな。どれだけ雨に打たれてたんだよ」


本当に何があったんだ?

拓弥さんの携帯が鳴り面倒そうに耳にあてていた。


「んだよ…―――あぁ、お姫様ならウチにいるぜ?っていっても、こっちもやっと見つけたんだけどな。――――ずぶ濡れになったまま公園のベンチに座ってたらしい」


この口調は三浦か?

拓弥さんを見ていると、口の端を上げて笑みを浮かべていた。


「―――へぇ、さすが双子。ナニが変なのかわからねぇけど…様子がおかしいな。尋常じゃねーぞ」


言い切る拓弥さん。

寛貴さんと梨桜ちゃんがいる部屋と面している壁を見ていた。



.


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