泡沫 (5)
楽しみにしていた学校祭もあっという間に終わってしまい、普通の学校生活が始まった。
今学期は試験が終われば冬休みが待っている。
全校生徒が講堂に集まっている今、校長先生の話はな~んにも頭に入らなかったけど、考えごとをするのには丁度良かった。
ポケットに入れたままの携帯が震えて教室に置いて来なかった事を後悔した。
札幌の友達が心配してかけてきた電話『梨桜の携帯番号とアドレスが売られてる』
怖いと思ったけれど気にしていなかった。
メールも電話も、携帯のセキュリティー設定を変えればいい。
それくらいにしか思っていなかった。
「梨桜ちゃん、終わったから帰ろ?」
「うん」
麗香ちゃんに誘われて生徒会用の席を離れた。
「ねぇ、今度の放課後どこにいく?」
「うーん…そうだね」
彼女の問いに少し曖昧に答えた。
実は何も考えてなかった。いつもならお買い物に行こうとか、ケーキを食べに行こうとか予めやりたいことを上げて二人で話し合うけど、それもしていない。
していない。…頭が一杯でできなかった。
頭が一杯になった原因は数日前の出来事から。
SMSメールが届くようになり、最初は日に十件程度から今は午前中だけで数十件。
イタズラのような内容から告白してくるものまで様々。
拒否をするにも都合と限りがあって、手が付けられない状態になってしまった。
暇な人達。
着信ランプが点滅する様を見ることに辟易していた。
携帯そのものを見るのもイヤだ。
だから最近は葵や寛貴に『携帯なんだからすぐに出ろ、返信しろ』と怒られる。
また携帯が震えた。
ポケットから携帯を取り出してフリップを開くと未読のショートメールが32件。
メールを全部削除して携帯の電源を切った。
もう少し待っていれば、黙っていられない性格の彼女が何か行動を起こしてくるようなそんな気がする。
これ以上二人の手を煩わせたくなかった事と、自分で決着をつけたかったから誰にも言っていない。
「顔色が悪い」
寛貴に言い当てられて、頬を擦りながらどう答えようかと考えた。
「…そお?」
「気付いてないわけじゃないだろ」
頬に当てている手を自分の手で覆い顔を覗きこまれた。
『最近眠っているけど熟睡できないんだよね』とは言えなくて狡い答えを選んだ。
「んー…女の子の事情?」
嘘ついてごめんね。
ケリをつけるまで、もう少しだと思うから。
「…」
寛貴は何も言わないで抱きしめてくれた。
「体力が無いんだから無理だけはするな」
本当にごめんなさい
「ん、ありがと」
暖かい胸に頬をつけると、心臓の音が聞こえる。
温かい体温と規則正しい音。それが気持ちいい。
「もう少しこうしていてもいい?」
包まれている。そんな感覚が心地好くて目を閉じた。
小さな頃から一緒にいる安心感と、包まれている心地好さと安心感。
それの違いに漸く気がついた鈍い私。
円香ちゃんが呆れるのも頷ける。
微かに震えが伝わる不快感に寛貴の腕の中にいるのに眉を寄せてしまった。
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