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秋桜  作者: 七地
235/258

晴れのち、  (4) side:コジ

『コジ君、絶対に見に来てね!』


イケメンガールから何回もお願いされてしまった。

言われるまでもなく、梨桜さんのクラスのステージは見ようと思っていたけれど…


ほぼ、全校生 + 他校生がひしめているこの講堂でのステージは成功するんだろうか?

余りの人数の多さに他人事ながら心配になってきた。


「おまえが緊張してどうすんだ?」


愁さんに笑われたけど、気になる。

オレ達のネクタイをした紫苑の生徒達を皆はどういう目で見るんだ?


来賓席でつまらなそうに腕を組んで座っている葵さん、笑みを浮かべながらステージを見ている愁さん。

この二人は、どう思うんだろうか…




「次が梨桜ちゃんのクラスか」


照明が落とされた会場でステージの一ヶ所だけにライトが当たると、フード付きの衣装を着た女の子が二人照らされた。


女の子が二人。このどっちかが梨桜さんなのか?

音楽が流れ始めると、同じような衣装を着た集団が浮かび上がった。


クラスで女子は二人だけ。

なのにスカート姿のコイツらは…みんな、男?


目を凝らしてステージを見るけれど、フードで顔を隠したままの集団から見分けるのは難しかった。



激しいダンスに生徒達の歓声があがり、盛り上がっていく会場。


梨桜さん、こんなに激しいダンスをして大丈夫なんですか?

心配になりながら隣を見ると、無表情でステージを見ている葵さんがいた。


生徒会の席を見るとやっぱり梨桜さんの姿は無い。

どうなってるんだ?オレがネクタイを貸せないって言ったからじゃないよな…



「…に、…てんだ!」


大きな音量の中で隣からトーンを落とした声が聞こえた。


「やめ…」


葵さん?


隣を見ると暗い中でモソモソと何かが動いている。


「おい、り…」


り?


よく見れば、フードを被っている物体が目の前にいた。

怪しい人物は片手で葵さんの口を塞いで、もう片方の手で葵さんの胸元を弄っている。


まさか…


「梨桜さん?」


オレが声を出すと葵さんの口を塞いでいた手で、シーッと唇に指を当てた。


『ナニしてんすか?』

声に出さずに口パクで聞けば、いたずらっぽい笑みを浮かべていた。


相変わらず可愛いですね…


うわっ

眩しい!!


突然照明が当てられ、眩しさに目を閉じると「葵、借りるね?」と声が聞こえた。


眩しさに目を細めながら隣を見ると、梨桜さんがニッコリと笑って葵さんの首からネクタイを抜き取っていた。

ステージとは別に照明が当てられていて、生徒達がオレ達を見ていた。


大勢の生徒の前で、ライバル校の生徒会長からネクタイを借りる。

これって、演出なんですか?それとも…行き当たりばったりの行動?


「おまえ!」


葵さんが梨桜さんの腕を掴もうとしたけれど、上着の袖を掠めただけだった。


服の袖をつかまれた梨桜さんは身を捩るようにして逃れると、上着が肩からはだけてしまっていた。


「見てて?」


鳴り響く音楽で梨桜さんの声は聞こえなかったけれど、そう言ったと思う。

はだけた上着を直しながら、ステージに向かって歩いて行った。



梨桜さんがステージの下まで来ると、いつの間にか一曲目が終わっていた。

クラスメイトにステージの上へと引き上げられると、また照明が消えて真っ暗になった。


「あの、バカ…」


隣から不機嫌な声が聞こえた。

顔は見えないけど、怒っているのはよく分かる。



照明がついた瞬間、ざわめいた。


「紫苑、レベルたけーっ!」

「マジかよあのセンター!?」


葵さんからステージへと視線を移すと…

目深にかぶっていたフードが外されていて、誰が偽物か分からないくらい可愛い女の子の集団がいた。


「え?…ええっ!?マジ!?」


「へぇ…うまく化けたな」


楽しそうな愁さん。楽しんでる場合じゃないですよ!?


梨桜さん!!それ、ヤバイです!『レベルたけー!』って喜ばせてる集団の中で、スッゲー目立ってますよ!!


チェック柄のミニスカートとジャケット。中から白いシャツが見えていて、襟元には東青のネクタイが結ばれている。


“オレ達”のネクタイだ。



.


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