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秋桜  作者: 七地
232/258

晴れのち、  (1)


とうとう始まった学校祭


今日は初日!




「これが、オレ…?」


「すっごく可愛いよ。どこから見ても女の子にしか見えない」


麗香ちゃんと男子生徒のメイクを終えて最後に残った悠君は『絶対に別室がいい』と言い張り、仕方なく安達先生の教官室でメイクをすることにした。


「へ~」


場所を提供してくれた先生は悠君の変身過程を見て感心している。

美少女の完成です!





「東堂もちゃんと男に見えるな」

「梨桜ちゃん…宮野みてーだな」


麗香ちゃんに手伝ってもらって男の子に変装して教官室に戻ると、先生と悠君に感心したように言われた。

今日はシークレットシューズだって履いてるもんね!


「二人共上手く化けれたところで…」


先生が私達に背中を向けて、ロッカーを何やら漁っている。


「二人で宣伝して来い。っていう伝言付きで実行委員が置いて行った」


ゴソゴソと取り出したのは…宣伝用のプラカード。


「行きたくねぇ!」


こんな恰好で歩くなんてサイアクだ!と拗ねる悠君に先生はピタリと指を指した。


「海堂、絡んで来る客に笑顔で接客できるか?」


「潰す」


悠君、メイドさんはお客さんを潰しちゃダメだよ!!

即答する悠君に先生はニッと笑うと私にも聞いて来た。


「東堂もだ。絡んでくる客がいたらどうする?」


そんなの、決まってるでしょう?

どうして先生は分かりきった事聞くの?


「笑顔でせっ…「潰すに決まってんだろ」


「悠君!!どうして発想が物騒な方向に行くの!?今日の悠君はメイドさんなんだよ!ご主人様の言う事を聞くの!」


安達先生は苦笑いを浮かべながら「やっぱりそうなるか」と言い、私の手にプラカードを持たせた。




『お前達二人がいるとクラスの売上げが下がる。外に出て宣伝して来い!よろしくな!』


先生の言葉に見送られて悠君と一緒にプラカードを持ちながら学校の中を歩いていた。


「梨桜ちゃん、野郎は内股で歩かないぞ」


「そういう悠君だって!可愛い女の子なのにガニ股歩きになってるよ」


校舎の中を歩いていると生徒が振り返る。

中にはすれ違ってから追いかけてくる生徒までいて、その度に作り笑いを引き攣らせている悠君がいた。


本当に可愛いもんね。

メイドさんでこんなに可愛いんだから、アイドルになったらもっと可愛いよ?

ファンクラブが出来たりして。


「何ニヤニヤしてんだよ」


悠君が大勢のファンに追いかけられている姿を想像して笑っていたら凄まれた。

慌てて顔を引き締めたけれど、眉根を寄せる悠君も可愛いよ。






一年生が使っている校舎の宣伝が終わり、二年生の教室がある校舎へと向かうとあからさまな視線を浴びた。


「…うぜぇ」


「美少女はそんなこと言っちゃダメ」


校舎の中には他校の生徒も歩いているけれど、男の子からの視線が容赦ない。

私服の女の子達から手を振られて、振り返していると隣から大きな溜め息が聞こえた。


「…見せ物じゃねーんだよ」


…悠君、今の私達は見せ物だから。忘れちゃダメだよ?


「そこの一年生!」


声を掛けられて振り返ると、隣で息を呑んでいる気配がした。


「げっ…」


泣きそうな顔の悠君。私達を呼び止めたのは朱雀のメンバーだった。


「ウチの一年にこんな男いたか?」


「先輩、遊びに来てくださいね」


俯いている悠君をさりげなく庇い、いつも私を姫と呼ぶ彼等に向かい合った。

二ッと笑うと首を捻っている。


「なんか…この顔に見覚えあんだけど…」


しきりに首を捻っている彼等を見て、心の中でガッツポーズをした。

私だって気付かれてない!!大成功じゃない?


「そっちの女の子は姫か?」


手を伸ばしてきた彼等を遮って背中に庇った。


「手、出したら後悔しますよ?」


「やっぱ姫?」


曖昧に笑うと「相変わらず姫は怖いもの知らずだな」と笑われた。

良く意味が分からなかったけれど曖昧に笑うと「頑張れよ一年生!」と言われ、軽く頭を下げて彼等の前から立ち去った。


「アイツら、潰す」


また物騒な事を…


「ダメだよ」


「待て!」


『彼達は悠君に何もしてないでしょう?』を窘めようとすると、大きな声で呼び止められ隣を歩いている悠君の肩が大きく震えた。


「悪い…逃げる」


「え?」


そう言うなり走って行ってしまった。

私を残して行かないでよ!!


「おい!一年!!」


その声に振り返ると叫んでいたのは拓弥君…確かに、彼に見つかったらからかって遊ばれてしまいそうだ。


視線を戻すと、悠君が凄い勢いで走って行くのが見えた。


悠君、頑張って逃げてね!



.


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