昨日よりも… (11) side:コジ
華奢な指が葵さんの胸元で動いている。
指、綺麗だな。
オレこういう形の爪、好き。
「……」
「さっきから何だよ」
「何となく」
チラリと向けられた視線に罪悪感を感じる。
「欲しいものがあるなら言えよ」
一瞬、手を止めた梨桜さんは少し考えていたけれどフルフルと頭を振ってまた手を動かしている。
--結んでは解いて…また結んで--
葵さんの足元に座った梨桜さんはネクタイを結んで、解く。という動作を繰り返している…
これって、オレが葵さんから借りて下さい!って言ったから?
「…ねぇ葵?」
「ん?」
「学祭来てくれるよね?」
ネクタイを握り締めて葵さんを見上げている。
「梨桜のクラス見たら帰る」
「えーっ!?ちゃんと見て!」
そう言いながら葵さんの胸にゴン!と頭突きをしている。
梨桜さん…頭突きって…
「学祭は父兄参観じゃないんだぞ。顔出せばいいだろ」
「ヤダ!来てくれなきゃ寝込み襲うよ?」
寝込みを襲われる葵さん。絶対に想像できない。
いつも想うけどこの双子のプライベートってどうなってるんだ…すげー興味あんだけど。
「…」
無言で眉を吊り上げる葵さんにひるむことなく梨桜さんは握りしめていたネクタイを、クイクイと引っ張っている。
「嘘じゃないから。来るって約束してくれなきゃ寝込みにチョコ食べさせるからね」
葵さんがピン!と梨桜さんのおでこを指ではじいた。「痛い!」と顔を顰めている。
「オレの寝込みを襲ったら…ホラー映画見せて一晩放置するぞ」
梨桜さんにとっては最強のお仕置きかもしれない。
愁さんは笑って二人を見ているけど…オレ的には何となく不安。
梨桜さんが曖昧な説明をしているから気付くのが遅くなったけど、梨桜さんもネクタイを欲しがるって事は、梨桜さんもステージに立つって事ですよね?
アイドルの衣装はミニスカートが定番。
この前、改造したセーラー服を着て怒られた理由、分かってますよね?
同じことを繰り返すなんて……無謀な事、しないですよね!?
内容によっては、ホラー映画よりも怖いお仕置きが待ってますよ!
目の前には無邪気に笑っている梨桜さん。
やっぱり、不安だ…
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