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秋桜  作者: 七地
230/258

昨日よりも… (10)

「センセ、笑わないで」


コジ君から言われた事をそのまま先生に伝えると「ブハッ!」と吹き出して笑っていた。


「アイツ…どんだけだよ!?」


お腹を抱えてヒーヒー笑っていて、私はとっても面白くない。

私が仲間外れにされたのがそんなに面白いの?


「先生、笑うの止めないと慧君に言っちゃうから」


切り札を出すと、目尻に滲んだ涙を拭いながら「悪かった」と言い、やっと笑うのを止めた。


「先生、どうしよう?」


本題を切り出すと、天井を仰ぎ見て「そうだなぁ…」と呟いていた。


「あの学校の生徒は貸してくれないだろうな…宮野と藤島を正面から敵に回すことになる」


「先生!分からない。理解できない」


ムッと膨れながら言うと先生は片眉を上げて私を見た。


「自分の女が他の男のネクタイをしてたら嫌だろ?」


大袈裟な…

それに私は葵の姉であって女じゃないんですけど…


「衣装だよ?」


「たかが“衣装”でもそういうもんなんだよ。お子ちゃまの東堂にはわからねーかもな」


クックと肩を揺らしながら先生は笑っていた。

お子ちゃまは余計です!


「弟は2本持ってないのか?こっそりクローゼットから抜いてくればいいだろ」


「…無いと思う。愁君も貸してくれないのかな」


「無理だと思うぞ?」


私だけネクタイが無いのはイヤ、衣装が揃わなくなっちゃう。

…こうなったら、コジ君に頼んで購買で買ってもらう?


どうやってネクタイを入手しようかと悩んでいると先生が「涼に許可もらうの大変だっただろ?」と言い出した。


先生、その件については…あまりお話したくありません。


「大体、弟か三浦からネクタイを借りたら内緒にするのは無理だぞ。その前に、涼からアイツらに伝わる可能性だってある。ちゃんと涼に口止めしたのか?」


だから先生、その事は……ナイショです。

先生の問いに笑みだけで返したら、どう解釈したのか先生は眉を顰めて私を見ていた。


「涼先生から葵にバレる事は無いから大丈夫です。今は涼先生よりネクタイ!」


「東堂?」


「ねぇ、先生?もう一本ネクタイを買うのが一番確実で早いかな」


眉を顰めたまま私を見ている先生。それは、教師の目じゃないです。

…そういう目で見ないで下さい。


「東堂、学祭のステージの事を涼に話して許可はもらってるよな?」


「先生、また来るね」


ニッコリと先生に笑って席を立った。

逃げてしまえ!と思ったけれど、先生に捕まってしまい至近距離で「東堂」と凄まれてニッコリと笑顔で返した。


「おまえ、まさか…」


そう。

そのまさか、です。

安易に言ったら麗香ちゃんに水泳を教えた時と同じになっちゃうでしょ?葵と寛貴に『駄目だ!!』って怒られて参加できなくなっちゃう。


「ステージでダンスだぞ?自分の身体、分かってんのか?」


「分かってます。振り付けも軽くしてもらったし、無茶な事もしないようにしてます。先生、私も参加したい!」


手で目を覆って天井を向いてしまった先生。


「自分でも無謀だと思わないのか?」


思った。…けど、


「だって、私は体育祭には参加できない。だから、学校祭には参加したい!」


覆った手の指の隙間から私を見て溜め息をついた。

先生に迷惑をかけないようにするから、ダメって言わないで欲しい。今回は見逃してください!


「先生、見ているだけは嫌なの!」


腕を組んで私を見ながら先生は真面目な顔をして言った。


「…少しでも体調がおかしいと思ったらすぐに休む事。当日、オレが無理だと思ったら休ませるからな。いいな?」


「先生!ありがとう!!」



.


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