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秋桜  作者: 七地
228/258

昨日よりも… (8)

「梨桜さん、飲み物はどうしますか?紅茶にしますか?」


「ありがと、コジ君」


ここは、青龍のチームハウス。

…ではなくて、街中のカラオケ店。内緒話をするには丁度良いスペースだよね。


私の前にはコジ君と同じクラスの男の子。

青龍に入っているらしい彼は、よっぽど間近で私を見るのが珍しいのか、食い入るように見られていて居心地が悪い。


私の隣には不機嫌そうに腕を組んでそっぽを向いている悠君。


――非常に遣り辛い。




「お願い!」


両手を合わせてもう一度「お願い」と言うと、目の前から溜め息が聞こえた。


「どうする?」


目の前のコジ君は隣にいる男の子と顔を見合わせた。


「人数分のネクタイを貸してくれるだけでいいの。コジ君に迷惑はかけないって約束する。…だから、お願いします!」


そっぽを向いている悠君を肘で突くと、嫌そうに眉を顰めたけれど、


「…頼む」


小さな声で言い、またそっぽを向いてしまった。

お願いする時にそんな態度じゃダメでしょう…


「学祭の衣装にネクタイを使うのは分かりました。でも、東青のネクタイじゃなくても…」


言い淀むコジ君に首を横に振った。


「いつまでもいがみ合うのって良くないよ。寛貴と葵がお互いのチームを行き来してるんだから…仲良くしてもいいでしょ?」


“制服風”の衣装に合わせるネクタイを探していたんだけど、葵を見ながら“東青”のネクタイをしたらどうだろう?って思った。


学校としても、チームとしても牽制し合って仲が悪いのを忘れた訳じゃない。

でも、そんな関係も終わりにしてもいいんじゃないかなって…安達先生がポツリと零した言葉を聞いて思った。

慧君も涼先生も…安達先生も“紫垣”のOBは今の状況は望んでいないと思うよ?


“東青”のネクタイをした“紫苑”の生徒がステージに立つことで理解し合えるきっかけになればいいな。って思ったんだけど…


「梨桜ちゃん、無理だよ。ネクタイは売ってる奴でいいだろ」


悠君が言えばコジ君がムッとした顔で彼を見た。


「そうですね…梨桜さん、その方が無難だと思いますよ」


面と向かって話し合いすらしようとしない彼等に苛ついた。

みんなで集まっている時は雰囲気が悪くなることは少なくなったけど、一対一になるとこうなってしまう。

…二人共、いい加減にして!


「もう!どうしていつもそうなるの!?悠君はコジ君の何を知っているの?」


「…」


「コジ君もだよ!コジ君は悠君の何を知っているの?」


「…」


「二人共、葵と寛貴の真似なんかしなくていいから!喧嘩するならお互いを良く知ってから喧嘩して!」


コジ君の友達がやっぱり私を見ている。

ポカン、と口を開けて見られるのって…それ、イヤ。


「姫って凄いっすね」


「姫じゃない!!」


いつものように返すと、スカートのポケットの中で携帯が震えた。

まだ話が終わってないのに!


コジ君達に静かにしてね。と合図をして携帯電話の通話ボタンを押した。


「もしもし?」


『まだ買い物は終わらないのか?』


急かす葵に時計を見ながら答えた。

葵に『学祭の買い物をしてから行くね』と連絡をしてから1時間が経つ。


「もうすぐ終わる。桜庭さんが迎えに来てくれるから大丈夫だよ」


『ふらふら出歩いていないで早く終わらせろ』


ホントに過保護。さっき『悠君と一緒だよ』って言ったのに…


「悠君と一緒だから危なくないよ。心配しないで!じゃあね」


無理矢理電話を切って、私を見ている彼等を見返した。


「梨桜さん、葵さんが心配するから早く行って下さい」


コジ君の言葉に頷いた。

本当はもっと話をしたいけど、心配した葵に探されると話がややこしくなる。


「ダメっていう返事でも構わないけど、良く話し合って決めて欲しい」


悠君とコジ君にもう一度「お願いね?」と念を押して部屋を出た。



.


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