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秋桜  作者: 七地
223/258

昨日よりも… (3) side:コジ

定例会で来た紫苑学院はいつもの放課後なら人もまばらなのに今日は多くの生徒が残っていた。


「さすがに学祭の準備期間中は浮足立ってる感じだな」


愁さんが辺りを見回しながら言うと葵さんは興味無さそうにしていた。


「梨桜さんも準備で忙しそうですよね」


そう言うとチッと舌打ちする葵さん。


「藤島から生徒会役員は参加しなくてもいいって聞いたのに…」


梨桜さんが学祭に参加するのが面白くないらしい。

この前はドラッグストアからクラスの野郎達用のメイク道具を買い込んでいた。梨桜さんがメイクするって聞いて葵さんの顔が引き攣っていたのが忘れられない。


生徒会室に入ると誰もいなかった。


「いないのか?…あぁ、あそこか…」


生徒会室の窓から見える隣の校舎の屋上に藤島と大橋がいるのが見えた。

フェンスに寄りかかりながら煙草を吸っているように見える。

そこに海堂の姿は無い。奴も梨桜さんと一緒に学際の準備か?


「愁、オレ達も行くか?」


「今はいい」


椅子に座り足を組んで寛いでいる葵さんと愁さん。二人の荷物をテーブルの隅に置きながら生徒会室を見回した。

梨桜さんもいないんだな…つまんねぇ。


ふと、隣の部屋に目がいった。

いつもは開け放たれている隣の部屋の扉が閉まっている。ドアを見ていたら、“カタン”と小さな物音がしたような気がした。


誰かいるのか?


扉の前まで行くと…


『逃げちゃダメ』


扉の向こうから楽しそうな声が聞こえる。


『…っ!こん、なの…やだ…』


途切れ途切れで良く聞こえないが、嫌がっているのは男の声。


『だから、逃げちゃだーめ』


これは梨桜さんの声に似ていると思う。

いや、この学校でココの部屋に入れる女子生徒って梨桜さんしかいないと思う。


『フフッ…ねぇ、くすぐったい?』


楽しそうだな。何やってんだ?


『や…めろ』


『恥ずかしがらないで、見せて?』


嫌がっている相手に何やら強要しているらしい梨桜さん。


『私以外に誰も見ていないから。ね?見せて…」


その声色がとても楽しそうで、何故か艶っぽく聞こえる。


『…っ!』


楽しそうにしながら、一体何を強要してるんですか?

その声を聞くと赤面する!…すっげー気になる!!


「何してんだお前」


「!!」


突然隣に大橋の顔があって吃驚した。

さっきまで屋上にいた筈なのにオレの隣に立っていた……やめろよ、心臓に悪い!


後ろを振り返ればそこにいるのは二人の総長。否、今は生徒会長か…


『可愛い…』


『やめ…』


「なに赤くなったり青くなったりしてんだよ、気持ち悪い奴だな」


梨桜さん、この密室で彼氏じゃない男と何をしてるんですか!?

オレが青ざめていると、大橋は楽しそうに笑っている。


『どうして隠すの?こんなに可愛いのに』


大橋は中から聞こえてくる梨桜さんの声をニヤニヤ笑いながら聞いていた。


「おい、コジ?」


こ、これは見つかったらヤバイんじゃないだろうか…

葵さんの問にまともに答えられなかった。


「いや、あの…」


笑い事じゃねーぞ!?梨桜さん!早く出てきて!

大橋が手招きすると、面倒そうにこちらへ来た藤島。


面倒なら来るな!それが、おまえの為かもしれない!


口を開こうとする藤島に自分の人差し指を唇に当てて『静かにしろ』とジェスチャーしていた。


「?」


大橋が唇に指をあてたまま、親指を扉に向けると訝しげにしながら藤島が扉に耳を当てた。


『もう、やめ…』


『ダーメ!最後までするの』


梨桜さん、ナニを最後までスルんですか!?

いくら梨桜さんといえども、藤島は許さないと思う!!……現に思いっきり眉間に皺が寄ってるぞ!?


『…こんなの』


『約束でしょ?今日、するって。もう逃がさないんだから』


「アイツ…」


低い声にビクッと肩を竦めると、葵さんと愁さんまで扉に貼り付いていた。

藤島は…恐くて見れない。


『これが最後だよ』


最後?


『もう…』


『動かないで。…ね?』


『…ヤダ』


『ダメ。私の事見てて?…いい?』


『オレ、怖い』


『最初は違和感があるけど慣れれば大丈夫だよ。いい?入れるよ?』


バーン!!


葵さんが凄い勢いで扉を開けた。


「梨桜!!」


うわっ葵さん!!

アラレもないカッコの梨桜さんがいたらどうすんですか!?



.

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