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秋桜  作者: 七地
222/258

昨日よりも… (2)

「梨桜ちゃん、海堂君は?」


マスカラを塗ってあげながら聞いてきた麗香ちゃんに、グロスを塗ってあげながら答える。


「逃げられたよ。メイクしてないの悠君だけになっちゃった」


「昨日も『絶対ヤダ!』って叫んでたもんね…。あ、まだ動いちゃダメ」


今日最後の授業はLHRで学校祭の準備。


「明日は絶対に悠君を捕まえるから麗香ちゃんも手伝ってね」


「うん」


授業が終わった後も準備に勤しんでいるクラスメイト達。険悪だったクラスの雰囲気も大分変わり皆で和気あいあいと準備を楽しんでいた。


「目を閉じてね」


「東堂さん、すげーくすぐったいんだけど」


「ダメだよ。じっとしてて」


「出来た!可愛いよ」


麗香ちゃんと二人で男の子達をメイク中。力作が出来上がるたびに教室の中は異様に盛り上がっている。


ただのガリ勉が集まったクラスだと思っていたけれど、紫苑学院だけあって素質は十分あったらしく、弾けっぷりが凄い。

みんな、勉強してるときよりイイ顔してる。


女装中っていうのが…笑えるけどね。



「東堂さんギャルソン用のコスチューム届いたよ。笠原さんのは遅れてるみたいだな」


その言葉にグループから外れて麗香ちゃんとコスチュームを受け取った。


「着替えてみようか?」






麗香ちゃんに付き添ってもらって女子更衣室で着替えることにした。


胸にサラシ巻いて平にしてウィッグを被り、眉毛を少し足して…凛々しく見えるように少しだけメイクをして…


男装って初めてだけど、ちゃんと男の子に見えるか心配。

手鏡に自分の顔を映しながら葵の真似をして眉を顰めてみるけれど上手く行かない。


「うーん…男の子に見える?」


「イケメンガールだぁ…梨桜ちゃんカッコいい!!」


私の手を握ってブンブンと振る麗香ちゃんが可愛い。


「葵みたい?」


「あ、ちょっと似てるかも!!宮野君に弟がいたらこんな感じ?」


やっぱり私達って基本は似てるんだね。

男装して、葵にかけ離れてたら立ち直れなかったよ…


「先生と一緒に写真撮ろうよ」


麗香ちゃんがデジカメを取り出してニコニコ笑っていた。


「うん!」


二人できゃいきゃい騒ぎながら廊下を歩いていると、通りすがりの生徒が皆振り返って見ていくけれど、誰も私だとは分からないらしい。


今度学生服を着て紛れてみようかな?


「安達セーンセ!」

「センセ!」


職員室の入口で呼びかけると振り返った先生は固まっていた。


「…オレに話しかけるってことはオレの生徒だよな?」


麗香ちゃんが私の腕に自分の腕を絡めて「やったね!」と喜んでいる。


「先生!」


私が聞くと私を指差して「あぁっ!?」と驚いていた。


「おまえ、もしかして!」


唇に指をあててナイショだよ、とジェスチャーすると先生は口に手を当てて頷いていた。


「先生、一緒に写真とろう!」


「おぉ」


職員室から中庭に出て撮影会。


「どうして最近の若い子は女の子どうしでキスすんだよ?」


麗香ちゃんが私の頬に唇を寄せている。


「だってカッコイイんだもーん!先生もしてほしい?」


「おぉ、チュウしろ!」


ふざけた先生といろんなポーズで写真を撮った。

こういうのも楽しい。普通の高校生みたい!


「笠原、これで何か買って来い」


「ハーイ、先生ありがとー」


麗香ちゃんは先生からお金をもらってパタパタと走って行った。

先生は煙草を取り出して銜えると私をマジマジと見ていた。


「マジで東堂が男に見えるな」


「これなら学校祭も成功するかな」


「そうなるといいな」


目を伏せながら煙草に火を点けていた。

こういう仕草を見ると慧君の後輩って本当だったんだなぁって納得できる。


「東堂」


「はい」


「お前が転校してきたときはどうなるかと思ったけど…東堂の親父さんに感謝だな。笠原も元気に登校してくるようになったし…いがみ合いを見なくて済む」


煙が私に来ないように、横を向きながら煙を吐き出した先生の横顔が笑っているように見えた。


「私は何もしてないと思います。…でも、先生には迷惑かけてばっかりでごめんなさい」


麗香ちゃんの事は『友達になりたかったから』それが理由だったけれど、“北陵”の件では彼女を危険な目に遭わせて、最終的には先生にもたくさん迷惑をかけてしまった。


「オレはおまえのセンセイだからな。手のかかる生徒程カワイイだろ?」


「先生、本当?」


本当にそう思ってくれてる?

ジッと先生の目を見つめると、フイッと顔を横に逸らした。


「…多分」


酷い!

ちょっとだけ感動したのに!!


ムッと先生を睨むとケラケラ笑いながら煙草を吸っていた。


「先生の意地悪!」



.


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