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秋桜  作者: 七地
221/258

昨日よりも… (1)

「愁君とデートするの久しぶりだね」


放課後に青龍のチームハウスに行く前に愁君とケーキ屋さんに寄り道。

目の前の王子様は頬杖をついてニコニコしながら私を見ている。


「藤島は何も言わないの?」


「どうして?」


いつも『愁君とケーキ食べてくるね』って言うと拓弥君が『餌付けデートな』ってからかうけど寛貴は何も言わない。


ムッとすると眉が寄せられるけど、それもなく『分かった。遅くなるな』ってそれだけしか言わない。だから、愁君とのデザートデートは麗香ちゃんとの放課後デートと同じくくりで許してくれているんだと思っている。


「余裕、って事か…ムカつくな」


一瞬黒い笑みが見えたような気がするけど、気付かなかった事にしよう。


「愁君、お願いがあるの」


ケーキを食べる手を止めて愁君の目を見るとニコリと笑みを返してくれる。


「改まってどうしたの?」


今日のお願いは『嫌だ。ダメ』って言われたら困るから慎重に切り出すことにした。


「私が変装してた時に制服を用意してくれたのは愁君だよね?」


素顔と素性がばれないようにしていたあの頃、登下校の度に違う制服に着替えて変装していた。


「そうだよ」


後になってあの時の制服は専用のお店で売られている物だと聞いて驚いたことを思い出して、今困っている問題は愁君に頼るしかない!って考えてお願いすることにした。


「学校祭の衣装を揃えたいからお店を教えて欲しいの」


お願いします。と頭を下げた。

学校祭にメイドとアイドルにコスプレをする男子生徒。

『せっかくだから本格的に変身しようよ』そんな軽い言葉で始まった学校祭の準備だったけれど、衣装が揃わなくて苦労していた。


ここで愁君の力を借りることが出来れば助かる。そう思ったけれど返って来たのは意外な言葉。


「…内容によるな」


内容は当日まで秘密。

だけど、ここで愁君の力を借りられないのはとってもイタい。


「内緒にしてくれる?」


「葵に?」


「寛貴と拓弥君にも。誰にも言わないで欲しいの」


お願い。

そう言うと、僅かに口角が上がったような気がした。


「へぇ…」


クラスの出し物の1つはメイドカフェで男子生徒が女装してメイドさんになるの。

私と麗香ちゃんはギャルソンの格好でメイドさんのサポート

もう1つは女装して、アイドルのコスプレをしてステージで踊るんだけど、なかなか思うようなのが揃わない


「梨桜ちゃんがメイドになるって言ったら協力しないつもりだったけど…面白そうだな。いいよ、これからそこに行く?」


「ほんと?ありがとう!」


「藤島にも内緒にっていうのがいいね」


うん。

聞かなかった事にしよう…






思った通りの衣装を見つけることができてホッとした。

悠君用の衣装を見本として1着だけ持ち帰り、残りの分は後日サイズを連絡することにした。


「ありがとう!イメージ通りの衣装だった」


愁君のおかげ。とお礼を言うとやっぱり王子様な笑みを向けてくれた。


「そう、良かったよ。……梨桜ちゃん、今度これを着てみてくれないかな。今日のお礼と口止め料はこれでいいよ」


愁君が取り出した衣装に絶句した…


「これ?」


「そう、これ。今どきいないから見てみたいんだよね。今度の定例会でいいよ」


お願いする人を間違えたかもしれない。


愁君の趣味って分からない…



.


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