触れる唇 (11)
自分にこんな感覚と感情があるなんて思わなかった。
「ん…」
額にキスを落とし、耳元で「怖くない」と囁いて頬にキスを落とす寛貴。
「…ふ…ぁ」
「逃げるな」
さっきから絶え間なく与えられている強すぎる快感にどうしたらいいか分からなくて、待って、と身動ぎをしようとすると抑え込まれてそれ以上の刺激を与えられる。
「やっ…」
恥ずかしい水音が部屋に響いて、寛貴の指が私の中で動くたびに自分の声だと信じられないような嬌声が私の口から洩れいく…
怖い…抱き締めて…
寛貴の首に手をかけると片腕で私をキツく抱き寄せもう片方の手で開かせている足を撫でた。
「梨桜」
吐息交じりの声で呼ばれてギュッと閉じていた眼を開くと、熱がこもった目で見つめている寛貴がいた。
「力…抜け。…いいな」
辛そうな声で言われて頷くと、私を抱き締めていた腕を解いて身体を起こした。
「イヤ…いかないで」
手を伸ばすと、片手で私の両手首を掴みそのまま頭の上へ押し上げベッドへと押さえつけた。
「寛貴?」
違うの、抱き締めていて欲しいの。
首を横に振ると
「いっ…た…やぁっ!」
躰を押し開かれ、引き裂かれるような激痛が走った。
「キツイか?」
背中から抱きしめられてお風呂に入っている私…
一人で入れるって頑張ったんだけど、ベットから降りたら、脚に力が入らなくて床に座り込みそうになり、寛貴に抱えられてお風呂に入った。
どうしよう…寛貴とエッチしちゃった…
首を捻って後ろを見たら二の腕と肩に引っ掻いたような傷がついていた。
「私がやったんだよね?ごめんね」
赤く腫れている傷が痛々しかった。
「大した事ない。それより大丈夫か?」
寛貴にお腹を撫でられて頷いた。
下腹部に違和感があるけれど、それは甘くて幸せな痛みだから平気。
でも、まさかこんなことになるなんて思わなかった。
「煽ったのは梨桜、おまえだからな」
私が考えていたことが読めたのか、そう言って私の頬をぷにぷにと摘まんでいた。
寛貴を煽るなんてそんなこと出来ないよ。
「分からないならいい。…後悔してるか?」
「してないよ。大好き」
寛貴の首に抱きつくと、大きく溜め息をつかれてしまった。
「おまえな…」
「なに?」
「…いや、いい」
言いかけてやめるなんて、変なの。
「のぼせるから出るぞ」
寛貴の手に自分の手を重ねると、ぎゅっと握ってくれた。
・・――――
――――・・
『ふーん…とうとうやったか、あの男…』
計ったようなタイミングできた円香ちゃんからの電話。
タカちゃんが私と尚人君との事を聞いて円香ちゃんに伝えたらしい。
尚人君の事は頭から抜けていて、寛貴の事で電話が来たと思ってしまった私は、彼女に動揺が伝わってしまい、吐けと脅され全部白状させられた。
『その分だと尚人の事は頭からすっぽり抜けてる感じだね』
「う…ん。でも、いきなりでびっくりしたよ」
あんなに悔しくて涙が出たのに、今は寛貴とのことで頭が一杯でどうでもよくなりつつあった。
『あんたに考える時間を与えたら悩むだろうから、結果的には良かったんじゃない?』
流石、親友はなんでもお見通しだね。
「そうかも」
尚人君と付き合っていた時にはこんなことをするなんてどうしても考えられなかった。
寛貴と尚人君を比べた事はないけれど…こうなることを予感させるような素振をされていたら、戸惑ったと思う。
『痛かったでしょ』
思い出すと顔が赤くなる。
あんなに痛いと思わなかった。でも、一つになるって、肌を重ねるって幸せな気持ちになるんだって知った。
『藤島君で良かったよ、私も嬉しい。仲良くしなさいね』
「うん」
ありがと、円香ちゃん。
私は今、凄く幸せな気持ちです。
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