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秋桜  作者: 七地
217/258

触れる唇 (10)

シーツが擦れる音で目が覚めた。


「…」


寛貴を起こさないようにベッドを出て、冷蔵庫からミネラルウォーターを出した。


快適な空調と凄く静かな空間。

窓から見えるこの景色…夜になったら綺麗だろうな。

デイリーユースとはいえ、高校生なのにこんな部屋を手配するなんてやっぱりお坊ちゃまだね。


起こさないように注意をしながらベッドに腰掛け、寛貴の顔を眺めた。

寝顔も整っているなんて狡いぞ。


突然泣き出して、困らせてごめんね…

閉じた瞼にキスをしようとしたら、触れる寸前で寛貴の目が開いた。


「ごめんね、起こしちゃった」


体を起こした寛貴にペットボトルを渡すと一気に飲み干した。


「寛貴もお昼寝したね」


少しだるそうに髪をかき上げて小さく欠伸をしていた。


「梨桜の寝顔につられた…」


「“お昼寝総長”可愛かったよ?」


睨まれたけど、寝起きで睨まれても怖くないもん。寛貴の頬にチュッとキスをすると少し驚いたように私を見ていた。


「可愛かったからだよ」


クスクス笑いながら言うと小さく舌打ちをして私の首の後ろに手を掛け、自分に引き寄せてキスをした。


下唇を甘く噛むと促すように舐められた。

薄く唇を開くと中に入り込んできた寛貴に舌に強く吸われて、体の奥が疼いた。


「ん…」


キスから生まれる音がやけに耳に響く。


「…ぁ…」


吐息が漏れる毎にキスは深くなり、体が熱を帯びてくるのが分かる。


もっと…このままでいたい。


寛貴の首に腕を絡めると、手がワンピースの裾から中に入ってきた。捲れ上がった裾が恥ずかしくて手を退けようとすると片腕できつく抱きしめられて身動きがとれなかった。


熱い手が素肌を撫で上げ、心地好さにぼうっとしていると背中の傷痕に指が触れた。


「そこは、ダメ」


ダメだって言っているのに優しく撫でる寛貴。

イヤだ、と首を横に振って寛貴の胸に手を当てて突っぱねると、片手で腕を掴まれた。


「どうしてダメなんだ」


そう聞きながらもまだ背中を撫でられる感触にゾクゾクと震えが走る。体を捩って逃れようとすると腕を掴んでいた手を解き、捩れないように強く抱きしめた。


「そ、こは…傷痕だから…醜い…」


顔を背けると首筋に顔を埋めた。


「醜いかどうか…オレが決める」


首に唇が触れて、舌が首筋を舐めた。


「んっ…やぁっ」


「梨桜」



「梨桜が見たい」耳元で囁かれてゾクリと体が震えたけれど、同時に不安になった。

背中の傷痕を醜いと思われたらどうしよう…


「…」


大きな傷は手術で消したけれたけど、残っている傷痕…


「……ん…ダメ、イヤ」


ダメって言ったのに、寛貴は私の服を脱がせてしまった。

いつの間にか外されていたブラの肩紐が肩から浮いていて、キャミソールの肩紐に引っ掛かって留まっていた。


「……」


目の前にある寛貴の唇が動いて何か言っていたけれど、パニックを起こしそうな私の耳では聞き取ることができなかった。


「怖くない」


肩紐をずらされて、熱い手が素肌の肩と鎖骨を撫でた。


「梨桜、隠すな」


胸元を押さえていた手を取ると、スルリとキャミソールが下に落ち、それに続いてブラも下に落ちた。


恥ずかしい…

下を向くと顔を上に向けられ私を見つめる寛貴と視線を合わせた。


抱き締めて欲しい…


腕を伸ばすといつものように抱き締めてくれた。

背中に回された手は私の背中を撫でていて、少しだけ皮膚が盛り上がっているソコの上で止まった。

掌から心地好い熱が伝わってくる…


「梨桜、後ろを向け」


体の向きを変えて寛貴に背中を向けた。


「…」


何も言わない事に緊張した。

『小さい傷だから目立たないし気にならない』葵はそう言っていたけど、この傷が好きな人の目にはどう映るのか…


ふいに温かくて柔らかいものが触れた。


「…寛貴?」


彼は答えずにチクリとした痛みを傷痕に残して背中から私を抱き締めた。


「…醜くなんかない。綺麗な体だ」


…嫌われなかった。

ホッとしたら、また涙が零れていた。


「泣くな」


唇で涙を拭い、目元にキスを落とした。




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