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秋桜  作者: 七地
211/258

触れる唇 (4)

三浦家にお泊りして2日目、今日はおばさんと一緒に夕飯を作っていた。

今夜のメニューはおじさんの好きな和食。私の担当はぶり大根とほうれん草の胡麻和え…


胡麻をすり鉢で擦っていると、ダイニングの扉が閉まる音がした。お鍋の味を見ていたおばさんが顔を上げて意外そうな顔をしていた。


「ヤダ、来たの?」


「自分の家だろ…」


「普段は寄り付かないクセに可愛い女子高生がいる時ばっかり来るのね」


プゥッと頬を膨らますおばさんに涼先生は苦笑いを浮かべていた。


「お袋、いい年して…」


「何よ、薄情息子」


元総長と現役副総長。この二人が敵わないのがこのお母さん。

とっても可愛いけど逆らえない何かがありそう…見てみたいような怖いような…


「梨桜ちゃん久しぶり!」


「彩菜先生!お久しぶりです」


涼先生の後ろから顔を出したのは婚約者の彩菜先生。

白衣を着たままで、まだお仕事中なのが分かった。


「梨桜ちゃん、彩になんか作ってやってくれないか?今日夜勤なんだ」


「あら、彩ちゃん夜勤なの?一緒に食べて行きなさい」


「ありがとうございます!」




楽しい時間。

家族でご飯を食べるってやっぱりいいね。


葵はパパに会ってるかな…

ゆっくり二人で話す時間が無かったから親子水入らずを楽しんでくるといいな。


冬休みになったら、葵と二人でパパの所に押しかけて三人で過ごそうね。


「梨桜ちゃん?どうした」


涼先生が私の顔をジッと見ていた。


「え?どうもしないですよ」


「ボーっとしてるよ。葵が居ないと寂しい?」


その言葉に素直に頷いた。


「寂しいけど、葵とパパが二人で過ごす時間が出来たのはいいことだと思うから大丈夫です」


涼先生が「偉いな」と褒めてくれて、少し恥ずかしかったけど嬉しかった。私の隣で「うふふ」という笑い声が聞こえて、おばさんを見ると、凄く楽しそうに私を見て笑っていた。


「お袋、気持ち悪い」


「ふふっ、葵君がいなくて寂しいけど、梨桜ちゃんには素敵な彼氏がいるじゃない?明日は…」


おばさんの口から出てくる次の言葉を遮った。

突然何を言い出すんですか!!お茶目も大概にしてくれないと心臓に悪いですっ!


「明日?」


眉を顰める涼先生の隣で、彩菜先生が何かを感付いたのかニッコリ笑って私を見ていた。


「明日なんかあるのか」


「課外研修で水族館に行くだけです!」


本当は、課外研修の後に寛貴と出かけるの…恥ずかしいから先生には内緒。


「お夕飯は彼と食べて来るんでしょう?」


何で言っちゃうんですか!?


「内緒って言ったのにおばさん酷い!」


訴えると涼先生は私を見て口角を上げて笑んだ。


「へぇ、藤島とデートか…門限決めちゃおうかな」


次の瞬間“バシッ”と痛そうな音がした。


「ってーな!彩っ!!」


彩菜先生が涼先生の二の腕を思いっきり叩いていた。


「無粋な事するんじゃないわよ、馬に蹴られて死ぬわよ」


元総長相手に彩菜先生、強い…

おばさんは見慣れているようで、二人を見て微笑んでいるだけだった。


「ったくおまえは…加減しろよ」


「梨桜ちゃん、この男に意地悪されたら私に言いなさいね?」


ニッコリ笑う彩菜先生と拗ねてそっぽを向いている涼先生。意外な顔を見ちゃった…明日寛貴に教えてあげよう。



.


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