表と裏 (3)
「あの、小嶋さん‥‥その人は」
放置されていた2人が恐る恐る聞くとコジ君は舌打ちして彼らを振り返った。
「葵さんの名前を呼び捨てにできるのって‥‥」
「お前等は一般の人に手を出そうとしたんだ。わかってんだろうな?葵さんが一番嫌ってることをやったんだ。系列から外されても文句は言えないよな」
3人は青ざめていた
葵達の世界で、系列から外されるということがどういう意味を持つのかわからないけれど、きっと彼等にとってはとても大変なこと何だろうと思った。
「すみません、この事は愁さんと葵さんに報告して処分を決めてもらいます」
手を膝につけて頭を下げようとするコジ君の手を慌ててつかんで止めさせた
「こんなことしてほしくない。ここに来るように言ったのは葵だし、葵に言わせたのは私だよ?」
彼が謝る必要はない。
「でも、オレは葵さんからここに来るように言われたのに、梨桜さんに怖い思いをさせました‥‥」
引き下がろうとしない彼の顔を見上げた。
「じゃあ、コジ君は愁君に報告して?私が愁君にちゃんと話すから。謝るようなことはしていないのに謝らないで?」
私が言うと、彼は困ったように眉尻を下げて私を見た。
「オレが何?」
愁君だった
「ふ、副総長っ」
急に焦りだした、系列らしい3人組を無視して、愁君は私をじっと見て口を開いた。
「‥‥もしかして、泣いた?」
鋭い愁君になんて答えたらいいか迷っていると
「梨桜」
名前を呼ばれたと思ったら葵の腕の中にいた。
「葵ぃ‥」
胸元に顔を埋めると安心した。
「どうした?何があった?」
背中を撫でながら優しく聞いてくる
今は理由言いたくなくて、ぎゅうっと顔を埋めると、察してくれたのか、ぽんぽんと頭を撫でた。
「メガネ外すなって言っただろ?」
「ん」
葵は小さく息を吐いた。
「制服のままだし」
「ん‥」
「――愁、後の事頼んだ」
「了解。お姫様についていてあげて」
「コジ、サンキューな」
「いえ」
車に乗ると私は葵にもたれて座った。
「桜庭、マンションに行って」
「はい」
車は静かに走り出して、葵は背中を撫でながら聞いた。
「何に動揺したんだ?」
「私、捜されていて、調べられているんでしょう?」
葵が小さく息を吐いた
「誰がそんなこと言った?」
「クラスの人‥宮野葵の女は宮野の弱みだから調べているって言っていた」
葵が舌打ちした
「愁君と葵から言われてわかっているつもりだったけど、学校で言われて怖くなった‥‥私がいると葵のお荷物になってる」
「それは違うだろ?」
背中を撫でながらきっぱりと言った
「おまえはオレの事を考えるのは重荷?」
「そんなことない。当たり前の事だよ」
「同じだよ。梨桜の事を考えるのも梨桜の為に行動するのも当たり前の事。違うか?」
顔を上げて葵の顔を見た
「私は葵の負担になってない?葵がロンドンに行けって言えば行くよ」
「梨桜は行きたいの?」
心の中でパパに謝った
「ここがいい」
「同じだよ。オレも梨桜がここにいるのがいい」
いつも一緒だった。私たちは、互いの欠片
「堂々としてろ、動揺することなんかない」
マンションについて私が落ち着いた頃、葵は静かに聞いた
「梨桜を怖がらせるようなこと言ったクラスメイトって誰?」
「海堂悠‥‥」
そう言ったら言葉にはしないで頷いていた
もう一つの事を話したら葵は怒るだろうか?
「梨桜、メガネ外すなよ?」
「うん」
葵は心配性
「一人で歩き回るな」
「うん、反省してる」
葵は過保護
「やっぱ朱雀の幹部と同じクラスなんて‥腹が立つ」
「ん‥‥」
やっぱり葵は独占欲が強い
「他の2人にも会った?」
「偶然‥会った」
小さく舌打ちしたよ‥怒ってる‥
「なんか言われた?」
「面白いねって言われた」
「なんで?」
「朱雀の幹部を怖がらなかったからだと思う」
また舌打ちした‥
「他には?」
「‥‥生徒会に誘われた」
「誰に」
「藤島寛貴」
大きくため息をついた
「却下だ」
「昨日の放課後に生徒会室に連れて行かれそうだったから逃げた」
「‥‥それでカフェにいたのか?」
「ん」
眉をしかめたまま、ソファに背を預けて天井を仰いでいる。
怒るのも無理はないよね‥
「今日は?」
「つかまって生徒会室に無理矢理連れて行かれたの。その途中で海堂悠から聞かされて‥」
「‥‥」
天井を仰いだまま、何も言わない。‥それが一番怖いよ
「葵?」
「生徒会に入ったとしても絶対に朱雀には入るな、近づくな。いいな?」
「‥‥うん」
やっと私の方を見たと思ったら、葵の目はいつもの優しい目じゃなくて冷たく光る目だった‥