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秋桜  作者: 七地
209/258

触れる唇 (2) side:悠

「今年の学校祭は共学になって初めてだ。男達が暴走しないように抑えないといけないな」


珍しく拓弥さんがまともな発言をしている傍らで梨桜ちゃんは編み物に夢中。

ここ数日『進まな~い!』と半泣きでひたすら編み続けている。遅れている原因は女子生徒に聞かれて教えているから。


家庭科の課題は『浴衣か編み物』どちらかを選択するって聞いていたけど殆どの女子生徒が編み物を選んだらしい。


今日の昼休みも女子生徒達が生徒会室に押しかけてきて寛貴さんがキレそうになっていた。

梨桜ちゃんの昼寝を邪魔されたくなかったんだろうけど、彼女の事になるとマジで大人気なくなる。


「悠のクラスは何やるんだ?」


拓弥さんに聞かれたから「女装カフェとステージでダンス」無難に答えておいた。

オレが学校を休んだ時に勝手に決定されていた学祭での出し物。

正確には『女装カフェと、アイドルにコスプレしてダンスをコピーする』ことになっている。


『オレは絶対に女装なんかしねー!!』そう叫んだのに、あっさりと梨桜ちゃんから『悠君はセンターだよ!』と宣告され、おまけに『メイクは私がやってあげるね』とご機嫌で言われてしまった。


絶対にこの人達にはギリギリまで知られたくない!

朱雀NO,3のオレが何が悲しくてアイドルの格好で歌って踊らなきゃならねーんだよ!!


「女装カフェ?」


拓弥さんが眉を顰めながら、各クラスから報告されているリストを捲っていた。


「女装って、どんなんだよ?」


「メイドカフェだよ」


上の空なはずの梨桜ちゃんがちゃっかり答えていて、拓弥さんは吹き出して笑っていた。

だから絶対に教えたくなかったんだよ!!


「まさか、梨桜ちゃんもメイドの恰好するの?」


梨桜ちゃんのメイド…スッゲー見たいけど、それをしたら沈められるのは分かってるからクラス中で回避した。


「しないよ、私と麗香ちゃんは裏方」


表向きはね…

でも、梨桜ちゃんと笠原は一緒にアイドルのコスプレをしてステージに立つんだよな。

『海堂さん東堂さんのダブルセンター!』

実行委員はバカな事を言っていたけど、内容によっては寛貴さんにメッチャクチャ怒られると思う。


「ステージ内容が未定ってなってるけど?」


「検討中。決まったら報告するって言ってた」


本当は決定しているけど、大ウソをついておく。

『完全コピーを目指す!』とか言っていたけれど、オレ的には計画倒れで終わって欲しい。


「目の奥が痛い…」


梨桜ちゃんが両手で顔を覆った。


根の詰め過ぎだと思う。課題は提出し終わったんだから、少しペースを緩めてもいいと思うのに『冬が来る前に仕上げたい』って言って初代のセーターを編んでいた。


「少し休め」


寛貴さんがソファの肘掛けに凭れるように座っていた梨桜ちゃんの肩を引くとそのままソファに寝かせた。


寛貴さんが膝枕!?


オレの隣で拓弥さんも絶句している。

自分の彼女だし、梨桜ちゃんはここまでしないと編み物の手を休めないのは分かるけど、オレ的には今更いいんだけど…


寛貴さんは自分の手で梨桜ちゃんの目を覆っていた。

その行為は彼女の目を休ませる為。それは分かるけど…朱雀の総長がこれでいいのか!?


「おまえ…甘すぎ…」


拓弥さんが小さな声で呟くと溜息をついていた。


同感。

…チームの奴らには見せられない。




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