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秋桜  作者: 七地
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進路相談と大好きな人Ⅱ (3)

「大橋、今、オレを見て“げっ”って思っただろ」


「そんな事は…無いっす」


言い当てられた拓弥君は顔を横に向けて慧君の睨みをかわしていて、安達先生は慧君を見ながら苦笑していた。


「梨桜、二日酔いは治ったみたいだな」


私の隣に座ってニッコリ笑って聞かれたけど、慧君の前で安達先生の笑顔が固まっていた。


「慧君!」


先生の前で何てこと言うの!?


「朝は食べなかったんだからちゃんと食べないと駄目だぞ」


「東堂、おまえだけは染まらないってオレは信じてたんだぞ」


悲しそうな眼をして私を見る安達先生の前で「違います!」と慌てて訂正した。


「でも、二日酔いになったんだろ?先生は信じてたのに…」


「おまえの後輩が飲ませたんだぜ、後でシメテおけよ」


物騒な事を言い出した慧君に安達先生の眉がピクリと動いた。

おまえの後輩って…安達先生って?


「そういえば、おまえ昨日いなかったよな」


「『初代と初代の姪に会う』そんなバカげた会合に行くわけ無いじゃないですか!毎日顔を会わせてる自分の教え子ですよ!?しかも次の日は3者面談の予定なのに、クラブで会った次の日に何を指導しろっていうんですか」


熱く抗議する先生の剣幕に、慧君が「分かった分かった」と宥めていた。

もしかして、安達先生も紫垣のメンバーだったの?


「なんだ東堂…」


先生をジーッと見ていると安達先生が怪訝な顔をして私を見返していた。


「先生って…慧君の後輩ですよね?それって、学校だけじゃないんですか?」


グッと言葉に詰まってしまった先生を見て慧君はニヤニヤと笑っていた。

寛貴と拓弥君は笑いを堪えていて、私と麗香ちゃんだけが何もわからずに先生を見ていた。


「梨桜、いいこと教えてやろうか。安達はオレの2代後の後輩なんだよ」


寛貴に「知ってたの?」と聞いたら笑いながら教えてくれた。


「生徒会顧問をやるっていうことは、チームの幹部と渡り合うって事だ。普通の教師じゃ務まらないだろ」


まぁ、それはそうかも…

先生もヤンチャだったんだ、ちょっと意外。


「それより先輩、校長が待ってますよ」


「狸の事は放っておけ、用があればあっちから来る。人の都合も聞かないで無理矢理押し付けやがって」


まだ言ってる…これ以上ごねると安達先生が困るのに、それを分かってやっているんだから性質が悪い。こういう所は葵よりも子供っぽいかも?


「私は慧君の授業を受けてみたいな」


そう言うと、慧君が私を見た。


「本気か?」


訝しげな眼をしている慧君に大きく頷いて返事をした。


「うん。だって慧君て分りやすく教えてくれるから、授業も楽しそう」


安達先生の視線が『頼んだぞ東堂』と言っているような気がする。


「梨桜も見に来るか?それなら授業をしてもいい」


慧君、学年が違うっていう事を忘れてるでしょ…それに、公私混同はいけません!


「先輩、面談が終わったら東堂はオレの授業を受けるんですよ」


「おまえの授業なんかいつでも受けられるだろ。おい、狸に言え、特別授業なんだから参加したい生徒も参加させろってな。そうじゃなかったらやらない!」


「慧君、私は1年生だから学年が違うよ」


思い留まって!そう思ったのにニヤリと不敵に笑う慧君と、ガッカリした顔の安達先生が対照的だった。


「教科書の授業なんかやってられるか!梨桜、オレの授業受けるよな?」


笑顔で言われて仕方なく頷き、心の中で安達先生に手を合わせた。

授業をやる気にさせようと思ったら、やる気が違う方向に向かってしまいました。


先生、ごめんなさい。



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