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秋桜  作者: 七地
203/258

お手上げです… side:悠

どうして、こうなった?


誰か、収拾つけてくれ!!



梨桜ちゃんの叔父さんが姉の一周忌の為に東京に戻って来た。

それに合わせて紫垣の代々の幹部が挨拶に来ているのはいいんだけど…


溺愛している姪に会わせて欲しいと頼み込んで、初代は渋々許可をした。


オレ達は初代から『梨桜には絶対に酒を飲ませるな!!』きつく、きつーく言われていたんだけど…


「いつも思ってたんだけど、悠君て可愛いよね!」


朱雀のメンバーが溜り場のようにしているクラブで、ニコニコ笑いながらオレに抱きついている梨桜ちゃん。


嬉しいんだけど、超困る!!!


「梨桜ちゃん!水飲んで落ち着こうか」


青くなった拓弥さんが必死に宥めているけれど、ご機嫌な梨桜ちゃんはオレの首に手を回してぎゅーっと抱きついた。


「ヤダ!悠君を一人占めするんだもん」


「梨桜ちゃん、苦しい…」


華奢な腕がオレの首に巻き付いていて、きゅっと抱きつかれて…すげーオイシイ状況なんだけど、この態勢って結構苦しいんだな…


「悠、てめぇ…」


代々の幹部に睨まれているけれど、オレは負けじと睨み返した。

ふざけんなよ!


「梨桜ちゃんに酒飲ませたの誰だよ!!」


初代と宮野と寛貴さんは少し遅れてこの会場に来る事になっていた。

それまでに梨桜ちゃんの酔いを醒まさないとまずいんだよ!!!


「初代は絶対に飲ませるなって言ったんだぞ!」


代々の幹部達はオレから視線を避けるように目を反らした。

きったねーぞ!初代に言い訳しろよ!!


「あーあ…梨桜ちゃん、駄目だろ」


頭の上から声が聞こえて、首を逸らして見上げると5代目が笑いながらオレ達を見下ろしてた。


「お前達が飲ませたのか?」


「そんな訳ないじゃないですか!気がついたらこうなってたんですよ。何とかして下さい!!」


拓弥さんが珍しく焦った声で言い、5代目はソファに座っているオレ達の目線にあわせて屈んだ。


「梨桜ちゃんは酒が入ると、割増しで可愛いんだけど…今日は慧さんがいるから残念だな」


何でもいいから早く!

オレの理性が持たない!!


「おい、りんごジュース用意しろ」


カウンターに向かって言うと、5代目は梨桜ちゃんに向かって両手を差し出した。


「梨桜ちゃん、おいで」


名前を呼ばれて振り返った梨桜ちゃんは5代目を見るとニッコリと笑った。


「涼先生!」


梨桜ちゃんがオレから手を離して5代目に向かって手を伸ばすと、脇から誰かが彼女の腕をとった。


「役得だったのに…残念」


5代目は抱き抱えられた梨桜ちゃんを見てクスクスと笑っていた。


「慧君!」


初代は自分の首に抱きついている梨桜ちゃんを片手で抱えている。


「梨桜、何を飲んでたんだ?」


優しい声で聞いているその姿は表面上は“優しい叔父”

でも、目が笑ってないんだよ…


「アレ」


テーブルを指差す梨桜ちゃん、周りにいる幹部は青ざめている。

あーあ、オレはどうなっても知らねー!


「涼」


初代が言うと、5代目は梨桜ちゃんが飲んでいたグラスを初代に渡し、一口飲んで眉を顰めた。


「ビッグアップルか?梨桜、誰にこのグラスをもらった?」


あくまでも梨桜ちゃんに優しく問いかける初代が怖い!!

オレと拓弥さんが息を呑んで初代と代々の幹部を見た。


青ざめるくらいなら飲ませなきゃいいのに


「あ、寛貴だ!」


初代の腕の中から身を乗り出して手を伸ばした梨桜ちゃんは、そのまま寛貴さんに抱きついた。


「梨桜、危ないだろ」


初代は梨桜ちゃんの身体を支えながら苦笑していた。

梨桜ちゃんて酔っぱらうと抱きつき魔になるのか?


「梨桜、誰にもらった?」


寛貴さんに抱きついている梨桜ちゃんは、顔をこちらに向けてグラスを渡した元幹部を見つけるとニッコリと笑った。


「あの人だよ、黒いシャツを着てる人」


初代は分かったと、頷くと梨桜ちゃんを寛貴さんに預けて真っ青になっている元幹部のところに行ってしまった。


「藤島、梨桜の酔い醒ましておけよ」


梨桜ちゃんは寛貴さんに抱きかかえられてご機嫌だな。


「梨桜、酒飲んだのか?」


「飲んでないよー」


いや、飲んだから。誰が見ても酔ってるからね。


「酔ってるだろ」


「酔ってなーい」


酔っぱらいは皆そう言うんだよ。


「…」


寛貴さんは突然、梨桜ちゃんの唇に軽く振れるとペロリと舐めた。

うわっ!寛貴さん、何するんですか!!


「…これが酒じゃなかったらなんなんだよ」


眉根を寄せる寛貴さんに梨桜ちゃんはフフッと笑っている。


「リンゴジュースだったよ?」


いや、アレはカクテルだったんだよ…オレと拓弥さんが目を離した隙に飲まされちゃったんだよ。


「てめぇ!なにやってんだよ!」


寛貴さんが梨桜ちゃんをソファに座らせようとしていると、怒鳴り声が店に響いた。

あぁ、うるさいのが来た!話が拗れる!!

遅れて店に入ってきた宮野は眉を吊り上げて怒っていて寛貴さんはニヤリと笑って応酬していた。


「うるせぇな、見て分かんだろ?」


そうだな、これはどう見ても梨桜ちゃんが抱きついてるぞ!


「梨桜!」


宮野が言うと、梨桜ちゃんは「葵!」と今度は宮野の首に抱きついていた。


梨桜ちゃん、キミは“抱きつき魔”決定。

二度と外では酒を飲まない方がいいよ。




総長二人が翻弄されて、疲れた表情を見せている…これって凄い光景だよな。

梨桜ちゃんは宮野に凭れながら幸せそうな顔をして眠っていた。


初代と5代目が酒を飲んでいて、このVIP席は凄く穏やかな空気が流れていた。


「あお、い…」


「ん?」


目を閉じたまま宮野を呼んだ梨桜ちゃんは、奴が返事をしても目を開かなかった。


「葵……ごめん、ね」


目尻から涙が一筋流れた。

涙を拭う宮野の顔は辛そうに眉根が寄せられていて、それを初代がジッと見ていた。


「ごめんね…」


何の夢を見ているのか…梨桜ちゃんは宮野に謝りながら涙を流していた。



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