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秋桜  作者: 七地
201/258

足りないものは…(11) side:コジ

梨桜さんはやっぱり帰ってこないんだろうか…


『『捜せ』』


二人の総長命令から数時間…梨桜さんが見つかったという報告は上がってこない。

熱を出して苦しんでいるんじゃないか、そう思うと居ても立っても居られなかった。


クラブで見た梨桜さんの泣き顔が忘れられない。


…あれ、そういえばどうして梨桜さんは葵さんのとこに来れたんだ?

葵さんは梨桜さんをクラブに連れて行ったことは無い筈だ。


「愁さん」


チームの奴等に指示を出すのに忙しい愁さんはオレが呼びかけてもチラリと視線を投げて寄越すだけで、すぐに他の電話に出てしまった。


愁さんが葵さんの居場所を教えたのか?

…でも、クラブで梨桜さんを見た時の愁さんは驚いていて、アレが演技だとは思えない。


「小嶋、何か思い当たることでもあるのか」


藤島に聞かれて、気になることを言った。


「葵さんは今までクラブに梨桜さんを連れて行ったことが無いのに、どうしてあの場所が分かったんだろう…愁さんが教えたんですか?」


生徒会室にいた全員の視線が愁さんに集まり、愁さんは電話をしながら「違う」と首を横に振っていた。


「愁さんじゃないんですか…どうして梨桜さんは」


葵さんは携帯でどこかに電話をしていた。


「桜庭、梨桜をオレの所に連れて来たのはおまえか?……どういう事だよ、どうしてお前がそれを知ってるんだ?」


険しい表情の葵さんは電話の向こうの桜庭に問い詰めると「…いや、悪かった。そうしてくれて助かった」桜庭に礼を言って電話を切っていた。


「梨桜の居場所が分かった。連れ戻して来る」


葵さんが立ちあがると藤島も立ち上がった。


「梨桜と喧嘩中なんだろ?おまえの顔を見た梨桜が逃げたらどうするんだ」


「逃がさねぇよ。…オレが迎えに行く」


「梨桜ちゃんと行き違いになったらどうするんだ?おまえは家に居た方が…」


愁さんが言うと、葵さんは藤島に向かって何かを投げつけた。

片手でキャッチした藤島は手にしたモノを見ると、葵さんを見た。


「オレが居ない間に梨桜が帰ってきても絶対に逃がすなよ?」


睨みつけながら言う葵さんに藤島はフッと笑いながら「逃がすかよ」と答えていた。


藤島の手に握られていたのは、梨桜さんが葵さんに投げつけたマンションの鍵。


愁さんは二人のやり取りを見るとオレに向かって、視線で「葵について行け」と指示を出した。




「梨桜さんは何処にいるんですか?」


車の中で葵さんに聞くと、腕を組んで目を閉じたまま口を開いた。


「桜庭の姉が勤めているビジネスホテル。桜庭は次の日に家へ帰ると約束をさせてホテルの予約を取ったらしい」


でも、家に帰らなかった梨桜さん。

帰りたくなかったのか、帰れなかったのか…後者であって欲しいと思いながら梨桜さんの無事を願った。




「葵さん、あそこにあるホテルです」


目の前にホテルがあるのに、渋滞で車が進まない。

イライラしながら梨桜さんが居るだろう、ホテルを見ていると。歩道を走って行く男が目に入った。


「あれって…」

「桜庭」


ほぼ同時にオレと葵さんが呟くと、葵さんは車のドアを開けて外へ飛び出した。


「葵さん!」



車から降りて葵さんの後を追いかけると、梨桜さんを抱きかかえている葵さんが居た。

そこには桜庭も居て心配そうに梨桜さんを見ていた。


「葵さん、梨桜さんは?」


葵さんの腕の中でぐったりとして目を閉じている梨桜さんは苦しそうに呼吸をしていた。


「このまま病院に連れて行く」


「分りました。姉貴に話をして梨桜さんの部屋から荷物を取ってきます」


良かった。


葵さんはオレを見て


「梨桜の荷物を頼む」


そう言うと、梨桜さんを抱えたまま車に乗り込んだ。


「ハイ」


車が走り出すと、桜庭がホッとしたように息を吐いていた。


良かった、やっと梨桜さんが葵さんの所に戻って来た。



.


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