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秋桜  作者: 七地
199/258

足りないものは…(9) side:コジ

「梨桜さんは?」


愁さんが首を横に振った。

梨桜さん、何処に行っちゃったんですか!?


クラブのVIP席で梨桜さんは葵さんにマンションの鍵を投げつけて店を出て行ってしまった。


あれから2日、葵さんは家に戻ったけれど、今度は梨桜さんが帰って来ないらしい。


「何処に行っちゃったんですかね」


梨桜さんがいつ帰ってきてもいいように家から出ない葵さん。口には出さないけど、凄く心配していると思う。

今日は臨時の定例会で梨桜さんがウチの学校に来るはず。それに合わせて学校へ来た。


「知らねえ…男のところにでもいるのかもな」


軽く言いながら思いっきり眉間に皺が寄っている。葵さん、口調と表情が正反対ですよ。


「梨桜ちゃんはそんなことはしないと思うけどな。藤島に聞いてみろよ」


「嫌だ。どっちにしてももうすぐ来るだろ。捕まえて連れて帰ればいいだけの話だ」


梨桜さんが帰って来なくて心配しているのに…素直じゃない人だ。

この二人には喧嘩して欲しくないのに…オレ、仲がいい二人を見るのが好きなんだよな。


溜め息をつくと生徒会室の扉が開いた。

やっと梨桜さんに会える!!


入って来たのはいつもの三人。一番会いたかった人がいない。


「梨桜さんは?」


オレが聞くと海堂が「は?」と目をぱちくりさせている。そんなに変な事聞いたか?


「梨桜さんはって聞いたんだよ」


もう一度言うと、海堂はムッとしながら答えた。


「風邪だろ?昨日から休みだよ」


風邪?

梨桜さん、大丈夫なのか?


「宮野、梨桜ちゃんの具合どうなんだよ?お前らの風邪がうつったんだろ?」


大橋の言葉に愁さんが顔を強張らせた。

葵さんが言うとおりに、もしも梨桜さんが藤島のところにいたら大橋からこの発言は無いよな…

まさか……


「なんだよ、梨桜ちゃんの具合そんなに悪いのか?」


「葵さん!」


葵さんを見ると藤島と睨み合っていた。今はそれどころじゃないですよね!?

睨み合いなんか後にして下さい!!


「藤島…梨桜ちゃんはお前の所にいるよな」


愁さんが言うと藤島が怪訝な顔をした。

そうだよな、変な質問だよな。


「……梨桜に何があった?」


険しい顔をして愁さんを睨む藤島を見て、梨桜さんは藤島の所にいないのを確信した。

ヤバい…梨桜さんはどこに行った!?


「おい!答えろよ。梨桜に何があった!?」


愁さんは携帯を操作しながら藤島を見た。


「葵と喧嘩をして…梨桜ちゃんが二日前から家に帰ってない。連絡も取れない」


「え?…寛貴おまえ」


大橋が藤島に聞くと、藤島は携帯を取り出して画面を確認していた。


「梨桜ちゃんから学校休むってメール来たんだろ?」


「ああ。でも1回だけだ。その後は来てない」


藤島が携帯を耳に当てていたけれど、舌打ちをして携帯を胸ポケットにしまっていた。

そうなんだよな…愁さんが何回電話しても電源が入っていないアナウンスに切り替わるんだ。


オレが溜息をついている脇で海堂が携帯で誰かと話し始めた。


「オレ…海堂だけど、なぁ、梨桜ちゃんてお前のトコにいる?」


電話の相手は笠原さんだろうか?

そうだ、彼女の所にいるかもしれない!期待して海堂を見ていると、奴の眉が顰められた。


「……そっか、分かった。笠原、梨桜ちゃんから連絡があったらすぐに教えてくれないかな。……ああ、どこにいるかも聞いて欲しい。………悪い、頼んでいいか?よろしく」


笠原さんの所にも居ないんだ…


「兄貴?もしかして、梨桜ちゃんそっちに行かなかった?」


愁さんが5代目と話しているのを期待を込めて見た。


「え?来た!?」


梨桜さん5代目のトコにいるのか!?

電話をしている愁さんにしがみつくようにして会話を聞いた。


『…梨桜ちゃんの具合はどうだ?昨日の様子だと熱が出ると思うんだよな』


昨日?熱!?

愁さんに押しのけられながらも必死にしがみついた。


「熱って?そんなに酷いのか?」


『なんだよ、葵から聞いてないのか?体がだるくて仕方がないって言って来たぞ。熱が下がらなかったら連れて来いって葵に言っておけ』


この口ぶりからすると…5代目は梨桜さんが家に居て葵さんが看てると思ってるんだ。

…って誰でもそう思うよな。


「酷くなりそうな感じだった?」


『体力が無いからな…』


愁さんが眉を顰めると、それを見ていた葵さんが立ちあがった。


「葵さん!?」


愁さんが葵さんの腕を掴んで部屋から出て行こうとするのを止めていた。

電話を終えた愁さんは葵さんを無理やり椅子に座らせた。


「葵、梨桜ちゃんが行きそうなところはどこだ?」


「…」


少し考えていたけれど、首を横に振った。

…葵さん、何て顔してるんですか。オレの方が泣きたくなります。


「答えろよ」


藤島が言うと葵さんは眉根を寄せて目を閉じた。


「葵、梨桜ちゃんは熱が出て動けないのかもしれない。行きそうなところを片っ端から捜すしかないだろ」


愁さんが答えを促すと、葵さんは首を横に振った。


「無い。東京に親戚はいないし、梨桜が親しくしている友達はいない」


梨桜さん、無事なんですか!?

――どこにいるんですか…


.


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