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秋桜  作者: 七地
196/258

足りないものは…(6) 

…つい、人肌が気持ち良くて眠ってしまった。


「……」


目が覚めたら目の前に好きな人の胸があって、抱えられたまま腕枕をされていて…


お見舞いに来たんであって、添い寝をしに来たんじゃないの!こんなつもりじゃなかったのに!!


少し頭を冷やして落ち着きたい。


「…」


あれ?


「っ…」


寝返りが打てない…体を動かそうと思っても首しか動かないよ。

顔を上げると寛貴の寝顔。の筈なんだけど、一瞬口角が上がった。


「起きてるの?」


そう聞くとフッと笑う声が聞こえて、じっと見ていると笑いを堪えているのが分かった。


「もう!苦しいから離して」


「嫌だと言ったら?」


目を細めて意地悪な笑みを浮かべる寛貴に対抗して胸に手を当てて突っぱねた。


「同じ態勢が苦しいの。お願い」


そう言うと腕を緩めてくれて、やっと寝返りを打てた。

寛貴に背中を向けて、小さく息を吐くと緩められていた腕が私の胸の前に回された。


「背中が痛いのか?」


「痛くは無いけど、時々苦しくなるの」


今何時だろうと思って部屋の時計を見ると夕方だった。


「結構寝てたんだね」


さっき言われた夕飯を作ろうと思って、ベッドに手をついて身体を起こしたら寛貴も半身を起こした。


「寝過ぎて体が痛くなりそうだ」


背中越しに私を抱き寄せながらブツブツ言う寛貴に笑ってしまった。

眠れるっていうことは、体が休息を求めていたんだよ。


「今日は朱雀に行っちゃだめだからね」


胸の下に回されていた寛貴の手を取って手を重ね合わせると指を交互に絡ませて手を繋いだ。


「何でだよ」


不満そうに言う寛貴の手を空いている方の手でポンポンと叩いて宥めるとその手も大きな手で包まれた。


「病み上がりだから今日は大人しくお家にいて」


「そんなにひ弱じゃない。梨桜は心配性だな、宮野にもそうなのか?」


突然出てきた名前に、首を捻って寛貴の顔を見ると私の顔を見ながら笑っていた。


「葵?…あんまり風邪とか引かないけど」


心配性なのは葵の方で熱を出して心配させるのは私。


「オレが熱を出したらあいつも熱が出てるかもしれないぞ」


「どうして?一緒だったの?」


珍しい事もあるものだと思って聞いてみると本当に一緒だったらしく頷いていた。


「昨日の夜、4代目の時代に幹部をしていた人に呼び出されたら、その中に風邪を引いた奴がいた」


4代目?涼先生の前の代だ。

風邪を貰ってきちゃったんだね


「呼び出される事って、良くあるの?」


「最近は無かったな。でも、一年に1回はあるな。代々の総長と副総長が集まる」


涼先生とか、他の代の元総長が集まったら圧巻だろうな。

中に入るのは怖いけど、外から少しだけ覗いてみたいかも。


「そこに葵もいたの?」


「ああ」


今朝の葵を思い出してみたけれど、特に変わった様子はなかった。葵が風邪を引くと喉が痛くなってその後に熱が出るんだよね。いつもそうだった。


もしも葵も風邪をもらったとしたら…そろそろ?



.


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