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秋桜  作者: 七地
195/258

足りないものは…(5) 


「うわぁ…凄い!」


お腹が空いている寛貴に食事を作ろうと思ってキッチンに入ると感激した。

とっても広くて立派!!

ダイニングも広くて明るい。こんなところで毎日ごはんを作って食事ができたら幸せ!


広くて立派なダイニングキッチンにうっとりと見惚れていると、テーブルに食事が用意されているのを見つけた。


「ねぇ、ご飯あるよ?これ寛貴の為に用意されたんじゃないの?」


手招きをすると、リビングからダイニングに移動してきた寛貴がテーブルに置かれた食事を見て一言


「…これを病み上がりに食えって?」


良く見るとお皿には唐揚げがたっぷり乗せられていた。

うん、熱を出した後にこれは重いかもしれないね。


「何が食べたい?」


「何でもいい。そっちの棚に食料品が入ってる筈だ。冷蔵庫も勝手にしていいから」


寛貴に言われた食料品が入っているらしい扉を開けたら…


「すごい…」


こういう食糧庫欲しい!

冷蔵庫にもたっぷり食材が入っている。このお家で家事をするのは楽しそう、気合を入れて作りたくなっちゃう!

…でも、今日は消化が良くてすぐにできるもの。


しょうとねぎがたっぷり入った雑炊にしよう。





病み上がりだけど、気持ち良いくらいの食べっぷり。本当にお腹空いてたんだね。


「うまい」


「ありがと。家政婦さんのご飯も美味しいよ」


代わりに食べてくれ、と言われた家政婦さんが作ったご飯を食べていると、私の皿からお肉を摘まんで口に入れていた。


「夕飯も作って」


「いいけど、家政婦さんのご飯は?」


「親は殆ど家に居ないしオレも拓弥達と食べる事が多いから夜は作らない」


拓弥君が『殆ど一人暮らしみたいなものだ』って言ってたよね。

黙々と食べている寛貴が何を考えているか分からないけど、こんなに広いお家で一人でご飯を食べるのって寂しくない?




少し遅めのお昼ご飯を食べ終えて寛貴の部屋に連れてきてもらった。

葵以外の男の人の部屋って初めてで緊張しながら入ったんだけど…広い部屋に驚いてキョロキョロしてしまった。


「…広い部屋」


物があまり置かれていなくてスッキリとした雰囲気の部屋の中に扉があった。

もう一部屋あるの?


「ねぇ、部屋の中にも扉があるよ」


「あれはシャワールーム」


その答えに驚いて寛貴の顔を見ると「下まで行くの面倒だろ」素っ気なく言い冷蔵庫から水を取り出して飲んでいた。


自分の部屋の中にシャワールームがあるなんて凄い。


「寛貴ってお坊ちゃんだったんだね」


つい、言ってしまうと、嫌そうに「それはやめろ」と言っていた。その顔が本当に嫌そうで笑ってしまったけれど『お坊ちゃん』だよ、愁君と同じ。



「横になってなくていいの?油断すると熱がぶり返しちゃうよ」


額と首の付け根を触れても熱は無いように思えるけど、今日はゆっくり休んだ方がいい。


「梨桜、昼寝は?今日はしないのか」


お昼寝…今日はまだ眠くない。この豪邸に吃驚して眠気もどこかに飛んで行ったのかもしれない。


「今日は眠くないかも。寛貴は寝なきゃダメだよ?」


今のうちにもう少しだけ編み物をしようかな。そう思って寛貴に背中を向けて荷物から編み棒と毛糸を取り出した。


「…寝るぞ」


「寛貴だけどうぞ。…え?」


寛貴は私が手にしていた毛糸と編み棒を取り上げると近くにあったテーブルの上に置いてしまった。


「もう…返して?…やっ!」


毛糸を取ろうと思って立ち上がろうとしたら、そのまま抱え上げられて荷物のように運ばれて広いベッドの上に下ろされた。


「私は眠くないよ」


自分もベッドに腰を下ろすとお腹に手を掛けて引き寄せ「眠くないなら抱き枕になってろ」そう言って私を抱き込んで横になってしまった。


「寛貴!」


ベッドから降りようとモゾモゾと動いていたら、ギュッと抱き締められて寛貴の胸に押し付けられた。


「梨桜、うるさい。じっとしてろ」


私は眠くないし、こんなのって、こんなのって!!


「だって!」


「見舞いに来たんだろ?」


「そうだけど…」


同じ布団の中にいるんだよ!寛貴は平気なの?

私は恥ずかしいよ。

身を捩ろうとしたら背中に回されていた腕に力が籠った。


「大人しくここにいろ」


甘く囁かれて…動けなくなってしまった。

そんな声…狡い。


「梨桜?」


寛貴の胸に顔を埋めて頷くと髪の毛を撫でられた。



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