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秋桜  作者: 七地
193/258

足りないものは…(3) 

生徒会室に入ってから何となく感じた違和感。


皆で何か企んでるでしょう?


そう思っていたら、突然葵が課外研修の行き先を変えさせたいような発言…普段だったらそんな事言わないのにあからさまに怪しい。


思い当たることがあったから皆の優しさに感謝をしたけれど、『水族館』は譲らないからね!

ペンギンとウミガメを見るって決めてるんだから!



相変わらずの定例会の話を聞き流しながら手を動かした。

去年編み物はできなかったから、編み棒を操るのは2年ぶり。

いつもの感覚を取り戻そうと思って指を動かしていると、少しだけお腹が空いた。


「ねぇ、葵」


「なんだ」


「…今日の夕飯は葵が作ったハヤシライスが食べたいな」


「は?」


いきなり夕飯のリクエスト。

言ったもの勝ちだからね。


「カレーじゃないからね、ハヤシライスが食べたいな」


「なんでだよ」


「食べたいからに決まってるでしょ」


“食べたい”の他にもう一つの理由“忙しいの!”


家庭科の課題に私が選んだのは“手編みのセーター”課題作品はパパ用に編むことにした。

パパのを編んだら、慧君が着るって言ったら慧君のを編んで、次に葵。冬が来る前に編み終えようと思うと忙しい。


チラリと横を見て、寛貴は…着てもいいって思ってくれるかな?

家族以外に編んだことが無いからちょっと心配。


「オレ、これがいい」


トントン、と指差す葵の手元を見ると、手編みのカタログのページを指していた。

葵が“いい”って言っているのは、ニットブルゾン。


「うわ…大物だね」


「ハヤシライス作ってやるからこれにしろ」


ハヤシライスとこの大物じゃ比較対象に差があり過ぎると思うんだけど…でも、去年は編めなかったんだよね。


「いいよ、作ってあげる。毛糸買わなきゃね」


「葵まで梨桜ちゃんの手編み?」


愁君が言うと葵は意外だというような顔をしていた。


「…何言ってんだ?オレ、ニットは買ったことないぞ」


「はぁ?冗談だろ」


「冗談じゃねぇよ、梨桜が作ってんだよ。下手くそな頃からオレが練習台だ」


編み棒で葵の脇腹をプスッと刺すと「痛ぇだろ!」と怒っていた。

一言多い!!


「本当の事だろ、最初は下手くそだったろ」


腹立つなぁ…


「いいよ、葵には作らない。誰かに作ってもらえばいいよ」


「ふざけんなよ、知らない奴の手編みなんて念が籠もってそうで気持ち悪いだろ」


酷い男…好きって言う気持ちを籠めて編むのに。


「私も念を籠めて編んであげようか」


「いや、梨桜ちゃん、考えてみろよ。見ず知らずの奴から渡されたマフラーとか使えるか?」


拓弥君が真剣な顔で私に聞いている。彼ならたくさん手作りの物をもらいそう。

マフラーね…そういえば…


「そういえば私も手編みのマフラーもらって困ったなぁ」


今年の冬にもらった、真っ白い手編みのマフラー

病院から外出を許可されて、少しだけ学校に顔を出した時に渡されたチョコと一緒に入っていた。


「「……」」


「梨桜、それどうしたんだよ」


そういえば…どうしたんだっけ?


「何かお返しをしようと思ったんだけど、名前も分からなかったからできなかった。彼女は先輩だと思うんだけど、あれって私があの日学校に行くって分かってて用意してくれたんだよね。悪い事しちゃった」


「おまえさ…女にも?」


あれ?みんな固まっちゃった。

どうしたの?


.


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