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秋桜  作者: 七地
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「今年の課外学習は…」


今日のクラス委員を集めての会議の議題は、“課外研修”という名の遠足の計画について。

修学旅行が無い代わりに、秋に“課外研修”があるらしい。


「去年は一年生が美術館…」


去年の資料を見て、ちょっとがっかり。

学年毎に美術館、博物館、科学館って…悪くは無いけど、学校のクラスメイトと行くならもう少し楽しめるところを選んで欲しい。


東青と張り合うのが好きなら、修学旅行も張り合って連れて行ってくれればいいのに!!


「一年生は女子がいるから楽しいよな」


三年生がボソボソ言うと、一年生の委員が笑みを浮かべていた。


「先輩方、すみませんね」


たった10人しかいない女子を相手に何を言っているのやら…

会議の書類にくるくると落書きをしていると、拓弥君が隣から覗き込んでいた。


「梨桜ちゃん、つまらなさそうだな」


だって…もう少し遠くて楽しいところに行きたいよ!


「修学旅行がないなら、もっと楽しめるところに行きたい!」


「例えば?」


寛貴に聞かれて、楽しめそうな場所を挙げてみた。


「遊園地、水族館…とか?」


そうだ!


「アンケート!クラス単位で行きたいところを募って学年なんか関係無しに行くの!」


両脇の彼等に力説すると、拓弥君は悠君を見た。


「悠おまえはどう思う?」


「いいんじゃねー?美術館とか行ってもな」


美術館も良いと思うけど、それはプライベートでのんびり行きたい。去年一年生だった寛貴にコッソリ聞いた。


「去年はどうだった?楽しかった?」


「途中で帰ったからな…よく覚えてない」


サボったのね…やっぱり不良だわ。


「例えば、梨桜ちゃんならどこに行きたい?」


拓弥君に聞かれて幾つか頭の中に浮かんだけれど、去年までの私なら絶対にアレだよね。


「絶叫マシンのある遊園地」


でも、今は乗れないから水族館とか自然に触れ合えるようなところに行きたい。


「自然がいっぱいあるところも楽しいよね。水辺の傍でバーベキューしたり、牧場に行くのも楽しいかも」


絞り立ての牛乳でしょ、ソフトクリームでしょ…チーズも美味しそう。


「梨桜、その指を折って数えてるのは何だ?」


寛貴に聞かれて、手を彼の前に出してもう一度指を折って数えた。


「牧場に行ったら、牛乳、ソフトクリーム、チーズ…後は何が美味しいと思う?ソーセージとかジンギスカンもあるかもしれないけど、ちょっと残酷かな」


羊を見学した後にジンギスカン…食べちゃうかもしれないけど、改めて思うと、考えさせられるよね。


「おまえは…食わないクセに妄想だけは一人前以上だよな」


失礼な…妄想って何よ?

呆れ顔で言う寛貴に指を折っていた手でデコピンしてやろうとしたら、逆に小突かれた。


「妄想じゃないよ!少しずついろんな種類を食べるのが好きなの」


「残りを食う身にもなれよ…」


それは反省するけど…でも、寛貴だって“美味い”って食べてたじゃない?それに、寛貴が頼めって言ってくれたから頼んだのに。


ムッとして寛貴を見ていると「おまえらな…」と拓弥君が間に入ってきた。


「痴話喧嘩なら後でやれよ。まあ、試しに希望を募ってみようぜ、いいだろ?寛貴」


「ああ」


ハッとして周りを見ると、クラス委員達が私達を見ていて…恥ずかしい。




「絶叫マシンは駄目に決まってるだろ、何考えてんだよ」


そんなに怒らなくてもいいのに…

拓弥君と悠君が煙草を吸いに行ってしまい、生徒会室に残った私は寛貴に怒られている。


「女の子が好きそうなところを言ってみただけだよ。怒らないで…」


「怒ってない」


嘘だ、眉間に皺が寄ってた。


「梨桜」


伸ばされた左手に自分の手を置くと、右腕が私の腰に回されて…


「う…」


寛貴の膝の上に座るのってドキドキする…葵の時は何にも思わないのに。


「どうした?」


髪の中に指を入れて引き寄せられて至近距離で見つめられるとドキドキが倍になるから、ちょっと待って欲しい。


「…」


待って欲しいのに、頬を撫でられて指で唇をなぞられてぎゅっと目を瞑ってしまった。


「目を閉じるな。…オレを見てろ」


恥ずかしさを堪えて目を開けると、私が好きな笑みを浮かべて私を見ていた。


「今日はオレが確かめてやるよ」


甘い声で囁かれると唇が重なった。

後悔しても遅いけど、恥ずかしすぎる。やっぱり寛貴に教えなければ良かった…


.


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