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――一緒に買い物に行けて嬉しかった。
二人で歩けて、楽しかったの―――
幸せな気持ちで寝ているのに……くすぐったい。
「…ん…」
誰かが頬を撫でてる。
くすぐったいから嫌、眠いから寝かせて欲しい。
「や…だ…」
頬に触れている手を握ってまた眠ろうとすると、クッと笑われた。
もう…悪戯するのは誰?
「…」
吃驚した…
目を開けたら、この顔があるのって…今の私には刺激が強すぎて心臓に悪いよ。
だって…やっと分かったの。
私は寛貴が好きなの。
「おい、寝るな」
この状況を落ち着いて考えようと思って目を閉じたら、頬をムニムニと摘ままれた。
こんな状態で眠れる程図太くないから…
身体を起こそうとして、気がついた。
あれ?ソファに座ってたと思うんだけど、ベッドの上にいる。
「寛貴がベッドに運んでくれたの?」
「ああ」
そう答えると、ジロリと私を見た。
間近で睨まれて、思わず怯みそうになった。私、何かした?
「前に言ったよな?その寝顔をやたらに晒すなって」
「…」
言われた。
私の寝顔は人様に見せられないって…
「梨桜?」
どうしよう、涙が出そう。
私だって女の子だよ、好きな人から寝顔を人に見せられないって言われると悲しい。
「おい、梨桜?」
もう一度呼ばれて、涙をこらえて寛貴を見た。
「見るに堪えないんでしょ?」
「……」
フォローする言葉も出ないの?…そんなに酷いんだ。
さっきまで、一緒に買い物に行けて凄く嬉しかったのにどん底に落ちた気分。
「…勘違いしてるだろ。…ったく、おまえの思考回路を見てみたいな」
ひっどーい!!
寛貴を睨むと、可笑しそうに笑っていた。
「そういう意味じゃない」
「だったら、どういう意味よ?」
「さぁな、自分で考えろ」
悔しい…バカにされてる感じがする!
むぅっと寛貴を見ていると、フッと笑った。
ここで、そんな風に笑うのは反則。一瞬、息が止まったよ…
…この表情が好きなの。
目を合わせたまま、指で頬に触れた。
寛貴が、好きなの…
「梨桜?」
指で唇に触れてみた。
口数は多くないけど『梨桜』って呼ぶ唇。
触れても触れられても嫌じゃない、心地良いの
「何してる?」
「…確かめてるの」
「何を」
好き。
でも、恥ずかしくてまだ言えない。
「‥‥ナイショ」
「生意気だ」
寛貴の唇が私の唇に触れた
‥‥うん、やっぱりイヤじゃない。触れる唇は優しくて心地良い
「おまえはオレのモノだ」
嬉しい。そう思うけれど、素直に頷けない自分
「‥‥そうなの?」
聞き返すとまた唇が重なった。
「マジで生意気な女だな」
寛貴に抱き寄せられたまま胸の中に頬を寄せた。
「さっき何を確かめていた?」
「だからナイショ」
『オレのモノ』発言の前に何かを忘れている。
寛貴は私を好きって言ってくれないの?
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