遭遇 (3)
だからさ‥見たくないのよ。
会いたくいのよ、生徒会の皆さん‥いや、朱雀のみなさん。
何故私は生徒会室に呼ばれたのか‥
お昼休みに私の手を掴んで、強引に生徒会室へ引っ張り込んだ海堂悠…
「梨桜ちゃん、元気ないね」
勝手に名前で呼びにっこりと笑う大橋拓弥
「いえ‥緊張しているんです。大橋先輩」
朝の屋上でのやり取りがまずかったの?やっぱり女の子らしく怖がった方が良かったかのかな
「『拓弥くん』て呼んで?」
パチリとウィンクした。
「‥‥」
チャラいよ副会長。いや‥副総長?
同じ副総長でも愁君とはずいぶん違うんだね、黒いところは似てると思ったんだけどなぁ
「拓弥さん!悪ふざけも大概にしろ!東堂さんが固まってんだろ」
私は小さく深呼吸して彼らを見た。
「私は何故ここに呼ばれたのでしょうか?」
改めてじっくりと見るとやっぱり3人ともイケメンだ。
愁君もそうだけど、東京ってカッコいい男の子が多いのかな
「梨桜、お前生徒会に入れ」
「…」
いきなり呼び捨てですか?藤島寛貴総長
「藤島先輩?冗談は「冗談じゃない、本気だ。それに寛貴でいい」
人の話を遮ったよ。総長‥しかも名前で呼べって?
この人横暴だ。
「梨桜ちゃんは書記ね」
勝手に大橋拓弥が私の役職を決めた。
別に不良とかチームに入っていることが恐いわけではないけれど、私が葵と姉弟ということがばれて、いらぬ争いを招くのは嫌だ。
巻き込まれるのだって嫌だし葵に危険が及ぶのはもっと嫌だ
「嫌です、無理です!」
即答した。
「梨桜ちゃん、事情を話すとね‥ウチの高校は今年から共学になって生徒会にも女の子を入れなきゃいけないんだけどさ‥みんなに断られて‥」
断る子いるの?こんなにイイ男に囲まれるなんて普通なら美味しい話だよね?
私はやりたいとはこれっぽっちも思えませんけど
私が大橋拓弥に疑いの目を向けると海堂悠が小さくため息をついた。
「正直に言いなよ拓弥さん、寛貴さんが女達を気に入らなかったって‥」
そういう理由ならあり得そう。この人ってオレ様だ、きっと女の好みもうるさいのだろう
「私に務まるとは思えません、無理です。できません」
きっぱりと断ってみた。曖昧に断ると後々つけ込まれたら困る。
「大変な仕事はやらせない。ただ毎日雑用を手伝ってくれればいいよ?」
相手も食い下がる
「拓弥先輩」
私がそういうとにっこりと笑った
「あ、なんかそれもいいね~!でも拓弥くんて言ってみて?梨桜ちゃんのかわいい声で“拓弥くん”て呼ばれてみたい」
ぐいっと顔を近づけて首を傾げる
「ほら、言って?」
きっとこれだけで女の子は落ちるだろう。
だけどあいにく私は綺麗な男とかっこいい男を見慣れていて免疫ができている。仕方なく私は名前を呼んだ
「拓弥くん‥」
彼は不満そうに私を見た
「いつものカワイイ声でもう一回!」
「拓弥、黙れ」
ボスが低い声で言った
「怖いよ寛貴、梨桜ちゃんが怯えちゃうだろ」
別に怯えませんけど、もう帰らせてください
「とにかくお断りします」
「梨桜、今日から生徒会だ。いいな?悠、毎日連れてこいよ」
人の話は聞く気がないらしい。
何を言ってもムダな気がしてきた‥
教室に戻ると海堂悠は私を見て言った。
「オレも梨桜ちゃんて呼んでいい?オレのことは悠君て呼んでよ」
もう、どうとでも呼べばいいじゃない
「好きに呼んで‥」
疲れた。オレ様とチャラ男の相手は疲れる
「梨桜ちゃん、寛貴さんに気に入られたな!良かったな」
それ、すごーく困るんですよ。
「‥何で私なの?自分で言うのもなんだけど、私って地味じゃない?気に入るとか意味がわからない」
私の顔を見てにこっと笑った。かわいいね‥絶対私より彼の方が可愛いと思う。
「梨桜ちゃんの声が可愛いから、とか?とにかく今日から早速生徒会だから」
気に入った理由が『声が可愛いから』だって?私ってどれだけ外見が残念な女子高生なんだ…
「無理」
もうキャパオーバー。
逃げてやる!!