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秋桜  作者: 七地
148/258

オトナの社会見学 (2)

軽いトークと甘い雰囲気。


着飾った夜の蝶と元総長の色男二人、この空間に馴染んでます。


「憧れの人に会えて嬉しい!」


“お仕事だから”ではなくて本気で喜んでいるらしい、お姉様達

私は保護者二人の間に座らされて、ノンアルコールカクテルをちびちびと舐めていた。


「涼さん、慧さんを連れてきてくれてありがとう!沙理、嬉しい!!」


遅れてきた涼先生が『沙理ちゃんはこのお店のNO,2だよ』とこっそり教えてくれた。

少し切れ長気味の目をした沙理さんは綺麗な人だった。


「涼さんも全然来てくれないから私達、寂しかったんですよぉ?」


グラスを手渡しながら可愛らしく小首を傾げるお姉様。“眺めているだけで面白い”なんて言ったら、叱られるかな…


「その割には連絡がないんじゃないか?」


手にしていたグラスを落としそうになった。

涼先生の視線が…声が甘い!


「え~、ホントにしていいんですかぁ?」


涼先生も慧君も、キャラが違い過ぎ!

ある意味勉強になるかもしれません。


「ところで…そちらの女の子は?」


沙理さんが私をチラリと見た。

不思議だよね、イイ男二人の間にお子様が座っていてフルーツの盛り合わせをパクついているんだもん。


沙理さんが営業用の笑みを浮かべた。


「梨桜です。慧く…「オレの大切な子」 


私の言葉を遮って放った言葉に沙理さんの表情が強張った。


「慧君!」


そんな事を言うと私は女の子に睨まれるんだよ。

ホラ、ヘルプについているキャバ嬢にも睨まれてる!


「梨桜、本当の事だろ?」


私の肩を抱き寄せて、こめかみにチュッとキスをした。


一気にキャバ嬢達の笑顔が凍りついた。

面白がって、わざと誤解されるような言動をとる慧君。こういうところは葵よりも子供だと思う。


涼先生が笑っているからお姉様達もかろうじて笑みを浮かべているけれど、その笑顔の下で『何なのこの子?』って思っているはず。

だって、凄く笑顔が引き攣っている。


慧君だってそういうの、分からない訳じゃないと思うんだけどなぁ…


「慧君、皆が吃驚してるでしょ?」


笑みを浮かべる慧君と、クッと喉の奥で笑った涼先生。

どうやって収拾つけるの?私にはお姉様達の相手は無理だからね?


「梨桜ちゃん、ホントに困った大人だよ。家で躾けてくれないと困るよ?」


真顔で茶化す涼先生に真顔で返した。


「ごめんなさい、涼先生。慧君のご飯だけおかずを少なくしておくね?」


「いつからそんな子になったんだ、おまえは!」


脇から慧君に羽交い絞めにされて、ぎゅうぎゅうに抱き込められてしまい、涼先生に「助けて!」と訴えるとグラスを傾けながら笑うだけで助けてはくれなかった。

自分から始めたのに見捨てるなんて酷いよ涼先生!!


「梨桜、似てきたな。将来は鬼ババァになるぞ?」


私の顔を覗き込みながら真顔で言う慧君の頬を抓ってやろうと手を伸ばしたら簡単に抑え込まれてしまった。


「ママは美人だったからいいんだよ。慧君だって、不良中年になるんだから」


憎まれ口を叩く私を抱き込める力が籠り、ギブ!と腕を叩くと涼先生が手を伸ばしてくれた。


「慧さん、それくらいにしてあげて。まだ無理な態勢があるんだ」


涼先生の言葉に慧君の腕が解かれて、私は涼先生に手を引かれて体制を立て直した。


「苦しかった…」


私の背中をさすりながら呆れたように呟く涼先生。


「マジで叔父バカ。梨桜ちゃんも大変だな?」


「そう思うなら、もっと前に助けて下さい」


「叔父?」


涼先生の言葉に沙理さんが反応した。


「慧さん、どういう事?沙理に教えて?」


可愛らしく小首を傾げる沙理さんをチラリと横目で見ると、ボーイに「リンゴとナイフ持って来い」と言い、グラスを煽った。


「涼が言ったろ?梨桜はオレの姪。オレの姉貴の娘だよ」


急に態度が変わった沙理さんと、ヘルプについている女の子達。


「そぉなんだぁ…慧さんの姪っ子ちゃんなら美少女なのも納得!」


さっきまでの私を胡散臭げに見ていた彼女達は「早く教えてくれればいいのにぃ」と甘い声を出していた。


居心地悪い…

どうして慧君は私をココに連れて来たの?




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