夏の××× (3)
どうやって収拾つけよう…
テーブルの上に置かれたメガネを見ながら考えていると、脇から甘い声が割って入ってきた。
「藤島先輩と大橋先輩、どうしてここにいらっしゃるんですかぁ?」
「宮野さんと三浦さんですよね!?」不破さんも歓喜の声をあげている。
この二人が怒っているのにピンク色のままでいられるのが凄いよ、感心する。
空気読めないって最強かも。
「うるせぇ…」
葵の一言に凍りついてしまった橘さんと不破さんに心の中で謝った。
ごめんね、言葉を選ばない弟で…
「藤島と宮野ってまさか」
合コン君達がゴクリと息を呑んで私の両脇に立っている二人を見ている。
そのまさか、だよ?
改めて、これからどうしようかと考えていると、寛貴が財布から一万円札を何枚か出してテーブルに置いた。
「梨桜と笠原の分だ、足らなければ朱雀に取りに来い」
そんなに食べてない!と言おうとすると、
葵が私の腕を掴んで席から立たせ、引きずられるようにして席を移った。
「梨桜、説明しろ」
イライラしている葵の声が私に刺さった。
「梨桜ちゃんは悪くないんです!嘘はついていません」
麗香ちゃん、庇ってくれてありがと。頑張って収拾つけるからね!
「説明しろ」
左側から低い声が響いて、寛貴に睨まれたであろう麗香ちゃんはビクッと震えた。
不機嫌極まりない総長オーラを出しているにも関わらず、周りにいるお客さんはイケメン達を見ている。
益々イライラしている二人の圧迫感に耐えかねて、大きく息を吸って最初に考えていた言い訳を口にした。
「『女の子でごはん食べよ!』と誘われて来てみたら合コンでした。私も麗香ちゃんも、ここに来るまで知りませんでした。…以上です」
「だったら何ですぐに連絡を寄越さない」
右から不満が零れる。
「顔を見て、すぐに帰るのは失礼かな…と思って」
「約束と違うなら帰っても失礼じゃねぇだろ」
左からも不満が零れている。
約束と違うって分かってるけど、合コンをセッティングしようとしている女の子の立場を考えたら、すぐに帰るのって酷いでしょ!?と声を大にして言いたかったけれど、言ったところでオレ様な二人に通じる訳がない。
愁君に助けを求めようと向かいの席を見ると、麗香ちゃんを真ん中に拓弥君と愁君がメニューを広げて、パスタのソースをトマトにするかクリームにするかで揉めていて、麗香ちゃんが困った顔をしていた。
私が左右からの不機嫌オーラを一身に浴びてるのに!トマトかクリームかなんて後でやってよ!?
「おい…まさか、合コンがしたかったとかじゃないだろうな?」
チャラ男と腹黒王子に投げつけてやろうと、目の前にあるおしぼりを握りしめた。
おしぼりが一つ足りない。
「梨桜、返事しろ」
葵の問い掛けを無視していると、寛貴から答えを催促された。
「合コンは苦手。どうしても好きになれないんだよね」
手短に答え、右側に手を伸ばして葵の前に置かれていたおしぼりを掴んで自分の手元に置いた。
よし、ぶつけてやる。最初はチャラ男から!
「おまえ、今何て言った?」
邪魔しないでよ!
「合コンは好きになれない」
二の腕を掴む寛貴の手を払い、おしぼりを掴んで標的を見ると、向かいで揉めていた二人が私を見ていた。
私の正面に座っている麗香ちゃんが、言葉には出さずに唇を動かして「ダメ!」と言いながら、小さく首を横に振っていた。
目の前にいる王子は、ぎゅっと目を閉じ眉間を指で押さえながら項垂れていて、チャラ男は『あ~あ、やっちゃった』と口パクで言いながらニヤニヤ笑っている。
なんで、ダメ?
「お前、いつの間に合コンに行ったんだ?」
葵の言葉に、自分がやらかした失言に気付いた。
バレたら怒られるから内緒にしてたのに!!
自分から合コンに行ったことがある発言しちゃった!!
「葵がずっと一緒に居るのに…行ける訳ない。でしょ…?」
動揺して、言葉がおかしくなってしまった。
麗香ちゃんは心配そうな顔で私を見ていて、両側からはさっきとは比べもにならない負のオーラが突き刺さってくる…
居心地が悪すぎる。
頑張れ、私
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