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秋桜  作者: 七地
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夏の××× (2)

「レナちゃん、攻略しなきゃいけないモノってなぁに?」


橘さんと不破さんが興味津々、といった感じで聞いてくる。

彼女達はどこまで知っているの?

朱雀に所属している生徒が多いこの学校で、普通の生徒はどの程度までチームの事を知っているんだろう?


「り…レナちゃんはお家が厳しいんだよね」


「まぁ、そんな感じかな」


そうとも言えるからそういう事にしておこう、詳しく言うと余計なことまで言ってしまいそうだ。


「門限があるとか?」


うん、これもあるという事にしておこう。


「うん」


「親が厳しいんだ?それってうざいよね」


パパは細かいことは言わなくて、どちらかと言えば放任主義に近いかもしれない。

『高校生は、子供以上大人未満。自分の立場を良く考えて、責任がとれる行動を取りなさい』って良く言われていた。


「ううん、弟と叔父さんが厳しいの」


本当にあの二人はパパと真逆。

慧君と葵の私に対する思考は驚くほど似ていて、実は親子だったりして?と思ってしまう時がある。


「門限は?」


何時って言っておこうかな。

不自然にならない時間を考えていたら


「前に6時って言ってたよね」


麗香ちゃんにフォローされて頷くと「信じられない!」と声が挙がった。

私としては門限があるよりも、単独行動を許してもらえていない方が信じられないよ。


「すげ…レナちゃん箱入り」


本当の箱入り娘は、不良チームの溜り場に毎日のように出入りしたりしないでしょ…


「アハハ…口うるさいのがいるから早く帰らないとね…」


笑って誤魔化し、“今すぐにでも帰らせて!”そう思いながらテーブルを見回して気付かれないように溜め息をついた。


「紫苑にいると女子生徒はお姫様扱いされるの?」


急に変わった話に麗香ちゃんと顔を見合わせてしまった。


「「それはないよ」」


お互いを見ながら頷いた。

何と言っても私は“ダサメガネ”と言われていたんだから、お姫様扱いとは程遠いね。

真逆の扱いだよ。今は自分が珍獣を見るような目で見られている気がしてならない。


眼鏡を外して学校に行ったあの日、教室の外に出来ていた人だかりを思い出して思わず笑ってしまうと不破さんが「嘘でしょぉ?」と身を乗り出した。


「皆優しいよ、2組は違うの?」


「違うよね」


麗香ちゃんに同意を求めると首を傾げて言いにくそうにしながらポツリと言った。


「ちょっと違うと思うけど…幹部がいるから下手に声をかけられないんじゃないかな」


「そっかぁ…ウチのクラスって朱雀率低いからなぁ」


いいなぁ、と呟く橘さん。そんなにいいものじゃないよ。

さっきまで美味しいと思っていたパスタを口に入れると、急に味が変わったように思えてしまった。


「あ…」


麗香ちゃんの目が真ん丸に見開かれたかと思うと、一瞬で表情が強張ってしまった。


「うそっ?」


なに?

ブロッコリーを口に入れると、私の斜め前に座っていた不破さんが口に手を当てて頬を染めていた。


「あれ…これって、合コン?」


語尾にハートがついているかのような軽い言葉が聞こえて、頭を抱えて机の下に隠れてしまいたかった。


「見れば分かんだろ?」


出たよ…


「そうそう、オレ達楽しくごはん食べてるの」


「うそっ!どうしてこんなところに!?」


橘さんは後ろを振り返って「やだ、どうして?」と繰り返している。

どうしてって…誰かが教えたに決まってる。


結果的に嘘をついてしまった自分を棚に上げて、今日も護衛を付けられていたことに腹が立った。


「合コンかぁ…今度オレ達ともしない?」


「いいんですか!?」


急に色めき立つ女の子と、不機嫌になっていく男の子達。

温度差がハッキリと分かれていく…


「笠原さん、久しぶりだね」


「三浦さん…」


どこか逃げるところは無いかと見回したけれど、目の前に立った王子に微笑まれ、無駄だと思い直し手にしていたフォークをぎゅっと握りしめた。


「なんなんだよ!?」


私はうつ向いたまま顔を挙げることが出来なかった。


普段仲が悪いくせにこういうときだけ団結しなくてもいいと思う。

どうせ来るなら別々で来て欲しかった…


「ごめんね?恐いよね、直ぐに退かせるから」


隣に座っていた彼は、私が怖がっていると思ったのかすまなそうに謝った。


私が俯いたまま、首を横に振ると、肩に手をかけて顔を覗き込んだ。


「レナちゃん、大丈夫?」


合コン君の口を塞いでしまいたかった!

今、その名前で呼ばないで!?


「「レナ?」」


頭の上で低く響いた二つの声に、ビクッと肩が震えてしまった。


終わった…


「先輩…こんな近くで嘘みたい」

「カッコイイ…」


空気を読めない彼女達が羨ましかった。

私も『あれ、皆でどうしたの?』明るくそう言ってこの場から逃げようか?


仕様もないことを考えていると後ろから手が伸びてきて、私が握りしめていたフォークを取り上げてテーブルに置いた。


「オレに送らせておいて合コンに参加するとは、いい度胸だな?『レナちゃん』」


右側の耳元で葵に囁かれて、右半身が固まっていると左側に座っていた合コン君から「ひっ…」と怯えた声があがった。


「女だけでって聞いたのはオレの気のせいか?…こんな小細工しやがって」


左側の耳元で寛貴に囁かれて左半身も固まらせていると、メガネを取り上げられてしまった。


「どういうことか、説明してもらおうか?『レナ』」


怖くて顔があげられない

誰か助けて…



.


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