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秋桜  作者: 七地
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遭遇 (1)

「東堂さん、ノート見せて!」


最近、何故か海堂悠に懐かれているような気がする。

クラスメイトほぼ全員が、私をいてもいなくても同じ扱いをするのに彼はクラスメイトとして私に気軽に親しく接する。


「はい」


「サンキュー!東堂さんのノートって見易くていいんだよ」


陰で私は『がり勉メガネ』と呼ばれている。

彼等にとって外見がいただけないらしい。このクラスにだけ女子がいなかったから、せっかく女子が転入してきたのに、メガネにおさげ姿のオシャレとか可愛いとはかけ離れた容姿の私にみんな心底がっかりしているようだ。

でも偏差値の高いこの学校ではイジメに費やす時間も惜しいらしく、無関心という態度をとる。


みんな必死なんだね‥・成績を落とさないように、有名大学に入る為に‥・なりふり構わず勉強している彼らを見ていると可哀想になる。


「東堂さん、今度お礼になんか奢るよ!」


この人は例外だね、自由人だ‥・海堂悠は私の容姿に関係なく声をかける。この人もだけれど‥・なんとなくだけど、朱雀に入っている人達は自由人のような気がする。

海堂悠に「気を使わないで」と言い図書室に向かった

怪我のせいで体育の授業に出れない私は他の教科で結果を残すことを求められた

だから人よりも勉強をしなければいけない。



次の日、一度家に帰って病院へ行くために学校を午前中で早退した。



私が通っているのは愁君のお父さんが経営している総合病院。東京に来てから定期的な検査はここのお世話になっている。

ママもここに入院していた。



主治医は愁君のお兄さん。厳しいけど優しい人だと思う


「もう少し体力つけて欲しいんだけどな」


「食べているつもりなんですけど‥」


「もう少し食べてね」


「はい」


診察と会計を終わらせて中庭にあるベンチで休んだ。ママが入院していたときにここに座って話したことを思い出していた。ママとはパパや葵のコトを沢山話した


携帯が鳴り、画面を見ると葵からの着信だった。


「はい」


『何してんの?病院終わった?』


「うん、中庭で日向ぼっこしてた」


『今日の帰り少し遅くなる。1人で帰れるか?」


また子供扱いして…


「大丈夫だよ。タクシーで帰るから」


心配性の葵をなだめてベンチを立って正面ホールへ向かった

夕飯もいらないみたいだからデパ地下もいいかな?メニューを考えていると突然声をかけられた


「あの!」


呼ばれた方を振り返ると男の子だった。

髪の毛をワックスで遊ばせていたから一瞬わからなかったけど、隣のクラスの朱雀メンバー“飛澤 章吾”この前葵が助けた人だ。


正面から私を見ても“がり勉メガネ 東堂梨桜”とは気づかないようで少しほっとした。


「はい?」


呼びかけに問い返すと、飛澤章吾は近づいてきて頭を下げた。


「この前はありがとうございました!」


その勢いに驚いた。


「--助けたのは私じゃないし‥」


頭を下げたのと同じ勢いで顔を上げて顔を覗き込まれた。


「でもっ」


顔が近い‥


「あ、ハンカチのことなら返さなくていいです。あげますから」


一歩引いて彼を見ると何となく顔が赤くなっている?


「あの、青龍のトップとは‥」


『どういう関係ですか?』っていう質問ですか?


「――ごめんなさい、行かなくちゃ」


そう言いその場を離れようとすると


「飛澤、何してんのおまえ」


大橋拓弥と藤島寛貴がこちらに歩いてきている‥

なんでこんなところで会うの!?中庭で日光浴なんかしないで帰ればよかった!!


「じゃあ‥」


「あの!名前教えてください!」


言えないよね‥

モタモタしていると朱雀の二人が来てしまう


「名前は‥‥次に会えたらっていうことで。私、急ぐから!」


早くタクシーに乗るために急ぎ足で玄関に向かった


「ちょっと待て!」


その言葉に驚いて振り返ると大橋拓弥と藤島寛貴が走って追いかけてきていたから、私は走り出した。

いつもは走るなと言われているけど、今は別だ


「おい!」


待てと言われて待つバカはいないよ!こんなところで正体がバレるのは嫌だ!


正面玄関を抜けてタクシー乗り場に向かい、ドアが開いているタクシーに駆け込んだ


「早く出してください!」


バタン!とドアが閉じて車が走り出した時、藤島寛貴と目があった。


危なかった。もう少しで捕まるところだった‥

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