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秋桜  作者: 七地
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ライバル (1) side:円香

梨桜の隣に座り、私目の前にいる整った顔をした男。

親友との再会に水を差してくれたオレ様な奴は写メで見るよりもずっとイイ男だった。



私達は学校からファミレスへと場所を移してこの男の観察をさせてもらうことにした。


「聞いていた予定と全然違うんだもん、吃驚したよ」


誰がなんと言っても梨桜は可愛い。今も敬彦を相手ににっこりと笑っている。


「円香と相談して驚かせようと思ったんだよ」


本人は無頓着だけどいつも男の熱い視線を浴びていて、誰にでも優しく接するけど、実は人見知りなところもあって梨桜の“特別”になるのは難しい。


「相変わらずだね」


ニコニコと笑いながら、隣の彼に話しかけている梨桜を見て意外だった。


敬彦が気付いた梨桜にとっての50センチの壁。正確に測ったわけじゃないけど、多分その位。


アイツが50センチ以内の至近距離に近寄ると、一瞬困った顔をして笑っていた。

最初は男が嫌いなのかと思ったけれど、梨桜を見ていて分かったことがある。


自分に対して、ストレートに好意を伝えようとする人に対して引いてしまっている。きっと梨桜本人は距離を取っている事も、困った顔をする事にも気づいていないと思う。

でも、私と敬彦は梨桜から戸惑いと僅かな拒絶を感じていた。


「あ、慧君から電話だ。ごめんね」


席を立った梨桜に手を振って見送った。

さっきから見ていると、梨桜が車を乗り降りする時、椅子に座る時、立ち上がる時に手を差し伸べて支えていて、梨桜も躊躇う事なく彼の手を取っている。


「なんだよ」


二人のやり取りを見ていたら藤島君に聞かれた。

彼は梨桜の事が好きなのよね?敬彦にあの写メを送りつけてきた理由を考えたら聞かなくても分かる。

いつものあの子なら気付いていないだろうけど、梨桜は彼の気持ちを知っている。


それなのに…


「…梨桜が引かないなんて信じられない」


こんなのって有得ないでしょ。今までの梨桜なら、速攻で安全な距離に逃げていた。


「どういう意味だ?」


「梨桜の…いい、悔しいから教えない」


50センチの距離に堂々と入り込んで梨桜に躊躇させないこの男…梨桜が取られたようで面白くない。


「訳分かんねぇ」


梨桜は前に電話で“良く分からないけど嫌じゃない”って言っていた。

本当にあの子は…もう少し考えなさい、気付きなさいよ!


あぁ…何だかイライラしてきた。


「そういえば、東堂宛ての手紙ってどうなったんだよ」


敬彦がイラつき始めた私を見て会話を変えてくれた。彼のこういうところには感謝してる。


敬彦に渡せば、梨桜の手元に渡るんじゃないか?そんな期待を持って梨桜宛てのラブレターが彼の所に集まってくる。

この前も溜りに溜まった手紙を梨桜の所に送ったと言っていた。


「捨てた」


「は?」


持っていたフォークを落としそうになった。

今、何て言った?


「オレが捨てろって言って宮野が捨てた」


「捨てたって梨桜はなんて言ったの?」


あの子が『捨ていい』なんて言う筈が無い。


「何も。まだ見ていないうちに捨てた」


その言葉に敬彦が驚いていた。

私だって吃驚だよ!


「そんな事をして、いいと思ってるの!?」


「梨桜が対応に困るモノを先に処理しただけだろ」


対応に困るって、そりゃそうだけど、それってかなり横暴じゃない!?


「呆れた…」


彼を見ると平然として私達を見ていた。この男、オレ様過ぎる。総長ってこんなモノなの?


「何の話?」


梨桜が戻ってきて、ふわりと笑っていた。

私も敬彦もこの笑顔が好きなのよね、可愛いい


「ああ…梨桜は危なっかしいから、ちゃんと見ていてってお願いしてたの」


はぐらかして答えると、梨桜は頬を膨らませて抗議をしてきた。


「円香ちゃん!」


藤島君は今も椅子に座ろうとしている梨桜の肘を支えていて、梨桜は「ありがと」と笑顔を向けていた。


「「…」」


気付かないあたり、ホントに梨桜だわ……どうしてこの子はこんなにニブイの?



.


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