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秋桜  作者: 七地
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生徒会のツトメ (2)

「紫苑学院高等部 1年2組の東堂梨桜です」


教室での挨拶…女子中学生にすっごく見られていて恥ずかしい。


「私は4月に札幌から転校してこの学校に来ました。女子生徒が少なくて驚きましたが、授業内容も充実していて―――」


安達先生が作った原稿をそのまま述べてみる。

女子生徒の前でどんな話をするんだ?と聞かれて率直に語ろうとしたら『ダメだ、それだけはやめてくれ!』と泣きつかれた。


「来年は、女子生徒が多く入学して来てくれることを希望しています」


ニッコリ笑って締めくくった。

教室の後ろで腕を組んだままこちらを見ている安達先生は頷いていた。

良くできた。っていう事だろうか


「質問していいですか?」


一人の女子生徒が手を上げたので、先生をチラリと見ると頷いていたので「どうぞ」と言うと目をキラキラさせながら話し始めた。


「あの、東青学院の生徒会と定期的な交流会があるって聞いたんですけど本当ですか?」


私が出席することに意味があるのか無いのか良くわからないあの“定例会”。


「本当です」


「藤島会長はもちろんですけど、宮野さんとか三浦さんも出席するんですよね?生徒会役員だと会う機会も多いですか?」


あぁ、もしかして青龍と朱雀の幹部がお目当て?


「生徒会に入っていると会う機会はあると思いますよ」


そう言うと、キャー!と小さな歓喜の声が挙がっていた。

『そんなに期待する程いいものじゃないんだよ』そう言っても伝わらないだろうけど、彼等と会う機会が多いっていうのも大変なんだよ!!


「普段の宮野さんと藤島会長ってどんな感じなんですか?」


心の中で拳を握りしめて力説していると突然聞かれた質問に、思わず素で答えそうになった。

普段の葵と寛貴?そんなの答えは『オレ様で横暴だよ』に決まってるじゃない。


「え?葵も寛貴もオ…「東堂さん」


安達先生が笑顔を浮かべながら私を呼んだ。

目が笑っていなくて“奴等の印象が悪くなるようなことは言うな”と訴えているように見えた。

先生は女子生徒が増えて欲しいんだもんね。女子が増える事には私も賛成だから今回は黙っていてあげよう。


「二人とも優しいですよ」


オレ様だけど優しいのは本当だから、この答えでいいよね。


「女子生徒が少なくて困ったことはありますか?」


「…特に困ったことは無いですけど、華やかさに欠けるというか、淋しいと思います」


私の意見とは違う事を話していることに、少しだけ良心が痛むけれど、女子生徒が多く受験してくれるなら良しとしよう。




「終わったぁ!」


「明日も宜しく頼むぞ」


中学生を見送って、生徒会室で先生に買ってもらったアイスに噛り付いていると先生がプリントを差し出した。それには明日のスケジュールが書いてある。


「生徒会が顔を出してくれたおかげで好評だったぞ」


「女子生徒は朱雀の幹部目当てだろ」


悠君が言い2つ目のアイスに手を伸ばした。冷たいのばっかり食べてたらお腹壊しちゃうよ?


「東堂も目立ってたな!」


先生の言葉にステージでの事を思い出して顔が熱くなった。

恥ずかしいから思い出させないで!!


「野郎達が釘付けになってたな!」


明日はあんなことにならないように気を付けよう!明日への決意をして食べ終えたアイスを片付けていると廊下から人の話し声が聞こえてきた。


「思ったより綺麗だね」


「有得ないだろ、元男子校だぞ」


暑いから、と開け放たれた扉のせいで廊下で話している声が良く聞こえる。

男の人と女の人の声?


「まぁね~よりによってあの子がねぇ…パパさんも思い切った事するよね。親子揃って無頓着?」


ん?


「少し考えれば、どんな騒動になるか分かりそうなんだけどな」


「無頓着だから可愛いんだけどさ、もう少し自覚してくれると周りも楽なんだけどね~」


あれ…?これって、もしかして?

椅子から立ち上がり扉の方に歩いて行くと、さらに会話は続けられた。


「「でも、仕方ないか。あの親子だし」」


なんか、貶されてるっていうか、呆れられてる?

この声は間違いなくあの二人。

だけど、今日来るなんて聞いてないよ?


扉の前で待ち伏せをすることにして、後ろを振り返って唇に指を当てて、静かにしてね、とお願いした。


「ねぇ、ここじゃない?」


「ああ」


生徒会室の前に着いたところで、腕を組んでお出迎え。


「「うわっ!」」


うわ、じゃないから。


「ここで何してるのかな?敬彦君と円香さん?」


目を真ん丸にして驚いていた円香ちゃんは、私をぎゅうっと抱き締めた。


「梨桜~会いたかった!!」


「苦し…ちょっと待って円香ちゃん」


会えて嬉しいけど、これはキツイ…苦しい!!


「離れろ」


頭の上で凄みを持った声が響いて、円香ちゃんから引き剥がされた。

助かった…


「梨桜、胸は痛まないか」


呼吸を整えていると、寛貴が私の顔を覗き込んだ。


「大丈夫みたい」


円香ちゃんは女の子だから大丈夫だよ。でも、苦しかったぁ…

寛貴が私を椅子に座らせていると、怖い顔をした円香ちゃんが寛貴を睨んでいた。


「邪魔しないでくれる?」


「加減しろよ」


寛貴も円香ちゃんを見返している。

円香ちゃんてば、怖いもの知らずなんだから…


睨みあっているこの二人…円香ちゃんは寛貴に会わせろって言ってたけど、会う早々これじゃどうしたらいいの?



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