或る夏の日 (2) side:コジ
愁さんと藤島達は幹部室に入ってしまい、オレと海堂が残った。
「可愛いよな」
ボソリと呟いた海堂。オレもその意見に同感だ。
「あの二人が双子だって事忘れそうになる」
切なそうに二人が出て行った門扉の方を見ていた。おまえも辛いよな
「なぁ、梨桜ちゃんておまえには甘いよな」
オレ?
突然話をフラれて、チームでの日常を思い出してみる。
優しくしてもらってるのは分かるけど甘いのか?
「甘いっつーか、優しいな。梨桜さんは皆に優しいぞ、おまえに葵さんとの事を隠してることに対して申し訳ないって悩んでたしな」
あの時の梨桜さんは悲しそうだったな。
「…んだよそれ」
一瞬、顔を歪めた海堂は何かを堪えているように見えた。
「だから、優しいんだよ。梨桜さんは」
「小嶋、おまえは梨桜ちゃんと一緒にいて何とも思わないのか」
梨桜さんは大好きだ。
でもお前の聞きたいのは、恋愛感情が起こらないのかってことか?
だとしたら、答えは「ノー」だ。
憧れているし大好きだけど、オレが手に負えるような人じゃない。
葵さんと同等、もしくはそれ以上の男にならないと梨桜さんには釣り合わないと思ってる。
「おまえ、なんつー顔してんだよ。梨桜さんのことは大好きだ。きっとチームの皆も同じ気持ちだと思う。でも、恋愛がどうこうっていう感情はねぇな。大体、そんな感情を持ったらこのチームではやっていけねぇよ」
梨桜さんはオレ達が尊敬する総長が大切にしている人。
それに、そんな感情を持ったら命がいくつあっても足りない。
そう言えば、コイツに言いたいことがあったんだ。
「オレ、これだけは言っておきたいんだけど」
「なんだよ」
少しだけ海堂が構えた。
いいか?良く聞けよ!
「梨桜さんが朱雀に出入りするのは不本意だ」
片眉が上がって不機嫌そうにオレを見た。お前の事だから『梨桜ちゃんは青龍の姫だけじゃねぇぞ』そんな事を言いたいんだろ
「…んだよ」
ムカついてる目をオレに向けるけれど、それに怯むつもりはない。初代が決めた事だから仕方がないけど、梨桜さんはオレ達だけの姫でいて欲しいんだ。
「出入りする以上、前のような事があったら許さない」
「あ?」
“前のような事”その言葉に怪訝な顔をしている。
ふざけんなよ?“覚えてねぇ”とかは言わせねぇぞ!
「手紙が入っていて怪我をした事があっただろ。あんなことがあったら許さないからな」
視線を彷徨わせていたけれど、思い出したのかオレに視線を向けた。
「当たり前だろ、あんなのは二度とねぇよ。ふざけたマネをする奴は潰す」
「その言葉、忘れんなよ」
念を押すと、目を伏せて呟いた。
「…寛貴さんがそんな事させねぇよ」
海堂にとってあの総長は憧れであって、越えられない壁。それは分かるけど、そんなに切ない顔すんなよ…
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