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秋桜  作者: 七地
128/258

空木 (9)

見られてる。凄く視線を感じる。


今、私は穴が開くんじゃないかって心配になる位に周囲からジロジロと見られている。


今まで見向きもされなかったのに、食堂にお昼を食べに来ただけでどうしてこんなに注目されるの?


――お願いだから、こっちを見ないで?――


「梨桜?」


隣に立っていた寛貴に声をかけられて顔を上げると「どうした?」と聞かれた。


「私、何かした?」


「心当たりでもあるのか?」


「無いから聞いてるの」


私は寛貴に呼び出されて学食に連れて来られただけなんだよ!?心当たりなんかあるわけないじゃない!


「ねぇ、すっごく居心地が悪いの。どうしてこんなに注目されるのかが分からない」


「考えなくても分かるだろ。鈍い奴だな」


呆れた口調で言う寛貴に文句を言ってやろうと思って見上げるとまた視線を感じた。寛貴とのやり取りも皆が見ていて怖い。

思わず、寛貴を盾にして視線から逃れた。


「違う場所でご飯食べる」


生徒会室か屋上に行こう。そう思って食堂を出ようとすると腕を掴まれた。


「ダメだ。目の届くところにいろ」


無理だよ、こんなに注目されながらお弁当なんか食べられないよ!


「私は静かなところでお昼ご飯が食べたいのっ!離して」


「ダメだって言ってんだろ、今日は我慢しろ」


「さっきからお前達すげー目立ってるぞ?」


拓弥君に言われて周囲を見回すと、さっき以上に見られていることに気が付いて恥ずかしくなった。


「学食のど真ん中でイチャつくな」


イチャついてなんかない!寛貴が悪いんだよ!!

ムッとしながら寛貴を見ると、掴まれたままの腕を引かれて強引に窓際の席に座らせられた。


「…メガネを外したいって言ったのは自分だろ?早く慣れろ」


「こんな事になるなんて考えてなかったもん」


「考えれば分かるだろ?」


呆れ顔で溜息をつく寛貴を軽く睨んだ。

素顔に戻るだけでこんなにジロジロ見られるなんて思う訳ないじゃない?皆がおかしいんだよ!


「見たってどうしようもない顔なのに。皆、モノ好きだね」


「梨桜ちゃん、無自覚もそこまで行くと面白いな」


私は面白くないんですけど…

笑いながら言う拓弥君と横暴な寛貴を横目で見て溜め息をついた。


「梨桜、今日だけ我慢しろ」


今日だけ、だからね?明日は絶対に静かなところでお弁当を食べるんだから。




「東堂!」


消化に悪いお昼休みを過ごして、教室に戻ろうとすると担任の安達先生に呼び止められた。


私の隣を歩いていた寛貴も立ち止まって振り返ると、先生が私に向かって“ひらひら”と手を振りながら近づいて来た。


「先生、どうしたんですか?」


教師らしくないその仕草に少し笑いながら聞くと、先生は急に真顔になった。


「宮野先輩は京都に帰ったんだよな?」


「日曜日に帰りました」


そう答えると、あからさまにホッとしている先生に心の中でゴメンナサイと謝った。

きっと慧君が後輩でもある安達先生に無理なことを言って困らせたんだ…


「…そうか、助かった。イヤ、それよりも東堂、午後の授業は体育だから自習だったよな?」


予定を聞かれて「ハイ」と頷くと、先生は腕を組みながら私をじーっと見ていた。


「先生?」


「午後の授業は家庭科室に来てくれ。手伝って欲しい事があるんだ」


先生のお手伝い…もうすぐ夏休みだから課題の準備かな?

課題が多いと大変だから嫌だな。


「東堂、頼んだぞ?」


良く分からないけど頷いた。

でも、どうして家庭科室?安達先生の担当教科じゃないよね。


「ところで、東堂は洋服のサイズは何号を着るんだ?」


立ち去ろうとした先生が急に振り返りざまに聞いて来た。


「先生?」


洋服のサイズ?…突然どうしたの?

寛貴も怪訝な顔をして先生を見ている。


「7号が多いですけど…先生?」


「そうか、忘れないで来いよ」


先生はまた“ひらひら”と手を振りながら帰って行った。



.


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