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秋桜  作者: 七地
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空木 (7) side:コジ

今日はいつもの休日よりも数倍は騒がしい。理由は初代と5代目が青龍のチームハウスに来るから。

系列のチームの幹部も来ることになっていて、朱雀の幹部も呼ばれている。

“紫垣”それを強調したいからだと思うが、とにかく人数が多くて騒がしい。


「愁さん、小嶋さん、朱雀が来ました」


そう言われて門を見ると車が2台入って来た。


「朱雀と系列の幹部ッス」


愁さんが煙草を咥えたまま頷いていた。

ヤンキーなんだけど、葵さんから幹部室と総長室は禁煙と言われているから外で煙草を吸っている。

まぁ、葵さんに言われなくても、梨桜さんが居る場所で煙草を吸う事はない。


愁さんだけじゃなく、系列チームの幹部も黙ってここで煙草を吸っている。


「朱雀の大橋と海堂だ」


系列のチームにいる奴等が車から降りて来た大橋と海堂を見て眉を顰めた。


「愁さん、どうして姫を朱雀と共有しなきゃいけないんですか!?」


不満そうに言う男に愁さんは


「仕方ねぇだろ?梨桜ちゃんは紫苑の生徒で生徒会役員だ。それに、例の事件のせいで今まで以上に狙われる存在になったんだ」


オレは最初から知っていたけど、紫苑の生徒は衝撃的だったと思う。散々陰口を言っていた地味な生徒が、実は超絶美少女だった。


『どうして朱雀と青龍のトップがあんな地味女に執着するのか?』

今までは皆が首を捻っていたけれど梨桜さんの素顔を見て考えを変えた奴等は多いだろう。


青龍と朱雀の弱みとしてだけじゃなく『東堂梨桜が欲しい』そう思っているチームだって出てくる筈だ。

今まで以上に梨桜さんは狙われる。


今日、初代がオレ達を集めたのは梨桜さんが二つのチームから守られる存在だという事を周囲のチームに見せつける為だろう。


「愁さん、初代がいらっしゃいました」


その報告でチーム中に緊張が走った。


初代、というよりも双子の叔父さんはすげぇイイ男で、梨桜さんを守りきれなかった情けないオレに『梨桜を守ってくれてありがとう』と頭を下げた。


母親から聞いた話だとわざわざウチに来て頭を下げて、オレの治療費も入院費も全部払ったらしい。



「よぉ、調子はどうだ?」


車から降りてきた初代はオレを見ると声をかけてくれた。

カッコいいよな。

梨桜さんの真っ直ぐな性格は叔父さん譲りなのかな…葵さんのオレ様なところは間違いなく叔父さん譲りだよな?


「はい、順調です」


そう答えると初代は笑いながらオレの頭をポンポンと叩いた。

その後ろで五代目と藤島が同じ車から降りてきていた。


「そうか。愁、梨桜はどうした?」


梨桜さんの姿が見えない事に少し不機嫌になっている初代。本当に梨桜さんの事が可愛いんだな…


「さっきまで夏休みの課題をしていました」


そうだ。一生懸命に何かを作っていて、何を作っているか聞いたら『テディベアだよ』と言っていた。

家庭科の自由課題だって言ってたけど、大変そうだよな。


「梨桜ちゃん、課題やってんの!?」


海堂が嫌そうな顔をしていた。

オレも勉強は苦手だけど、こいつもダメそうだよな?



皆で幹部室に移動したけれど、そこには梨桜さんも葵さんもいなかった。


「いないぞ」


「隣かも」


オレが言うと、愁さんから鋭い視線を向けられた。

まずいこと言ったか?


「隣?」


初代が部屋を出ようとしたとき、珍しく焦りを感じさせながら愁さんが止めた。


「呼んで来ますから、慧さんはここで待ってて下さい」


「愁、オレ達が入ったらまずいことでもあるのか?」


兄である五代目が冷たい笑みを浮かべて愁さんを見ると、初代は部屋を出ていった。


「小嶋、隣になんかあるのかよ」


「梨桜さんと葵さんが…「コジ…」


海堂から聞かれて答えそうになると、愁さんから睨まれて口をつぐんだ。


「え…と…」


きっと二人は昼寝をしてるんだけど、見慣れないと驚くかもしれない…

オレも慣れないうちは凄く驚いた。でも、慣れると微笑ましくて頬が緩んでしまう。

ソファに腰かけた葵さんに梨桜さんが凭れるようにして寝ているところなんか見ていると幸せな気分になってしまう。


「勿体つけんなよ、隣に何があるんだ?」


朱雀も部屋を出て行ってしまい、愁さんに頭を叩かれた。


「他の奴等に見せるのは勿体無いだろ!」


愁さん…そういう基準?


.


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