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秋桜  作者: 七地
123/258

空木 (4)

締め付けているわけではないけれど、存在だけで息苦しく感じるコレが好きじゃなかったから、愁くんから許可をもらって、バストバンドを外すついでにシャワーを浴びてすっきりしたかった。


「あれ?」


葵の部屋に置いていた私の着替えってこれだけ?

クロゼットの中を見ると、デニムのスカートとタンクトップだけしかなかった。また制服を着るのが嫌だったから、スカートとタンクトップを手に取って着替えた。


「葵じゃなくても怒られるかも」


首の後ろでリボンを結ぶタンクトップは可愛いけれど、露出の多いこの格好で皆の前に行くのはマズイよね?

幹部室の扉を少しだけ開いて中を覗くと皆がこっちを見た。


「葵、上に羽織るの貸して?」


そう言うと、葵が眉を顰めて立ち上がり怖い顔をした。


「あ?…そっちに行くからそこにいろ!」


私を廊下に出すと扉を閉めてしまった。


「違う服無いのか?」


「葵の所には見当たらなかったよ」


自分でこれがいいって言っていたくせにチッと舌打ちをして、パーカーを私に投げた。


「着てろ」


これ、今の季節に着るには生地が厚くない?

袖を通すとやっぱり、暑いよ…


「暑い」




髪の毛を乾かしてもらいながら、円香ちゃんに電話をしなければいけなかったのを思い出した。


「円香ちゃんに電話しなきゃ…ね、携帯取ってくれる?」


「ありがと。私、葵の部屋にいるね」


葵から携帯を受け取ると皆に手を振り、幹部室を出て円香ちゃんに電話をかけた。

彼女を怒らせると大変なのは、タカちゃんを見て良く知っている。


約束は守らないとね…

電話をかけ、コール音を聞くこと数秒…接続音がして、少々ご立腹な親友は私を問い質した。


『梨桜、早く教えて。このイケメンは誰?』


円香ちゃん、実はね…今私の周りはイケメンだらけなんだよ。見たらびっくりするよ?

こんな言葉で誤魔化されてくれないかな…って、彼女に限って誤魔化されてはくれないよね。

ベッドに仰向けになりながら覚悟を決めた。


「えーと…同じ学校の人で、藤島 寛貴先輩?」


結果は見えているんだよね、呆れるか怒るかどちらかだ。

毒舌な円香ちゃんに怒られるかもしれないけれど、ちゃんと説明しよう。


『なんで疑問系?』


鋭く突っ込まれて、“アハハ”と笑うと円香ちゃんは溜め息をついた。


『梨桜、誤魔化さないで転校してからの事、全部話しなさい』


「誤魔化してなんかないよ」


「早く」と急かされて、腹を決めた。


「えーと…あのね」



・・―――

   ――――・・


『呆れた…梨桜と不良って全然結びつかない。しかも、あの葵君が総長?信じられない』


一通り話をすると、案の定円香ちゃんは呆れていた。

私だって最初は信じられなかったよ…


『しかも、そんな理由でキスされたなんて…ねぇ、抵抗しなかったの?今までの梨桜なら暴れてもおかしくないよね?』


円香ちゃんの言葉に頷きながら、改めて首を捻った。


「自分でも分からないけど、嫌じゃなかったんだよね。円香ちゃん、どうしてだと思う?」


電話の向こうで「へぇ」とか「なるほどね」と一人で納得してばかりで私には何も教えてくれなかった。


『…東京には梨桜の“50センチの壁”を突破する男がいたわけだ。いいんじゃない?前に進んでるようだし、安心した』


円香ちゃんは納得しているようだけど、私は納得できない。

50センチの壁って何?私にはそんなモノは無いよ!


「円香ちゃん教えて、50センチの壁ってなに?」


『いずれ分かるんじゃない?…ま、無理だと思うけど』


円香ちゃん、酷いよ。


「いいよ、タカちゃんに聞くから」


私が言うと、彼女に鼻で笑われた。



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